第440話お試しレベルアップ法
ダンジョン内でまず浮遊島を一つ確保した僕は、スコップ片手にホウオウのフロアにやって来ていた。
『ほどよく深く、広い。なにより空があるのが好都合だね』
攻略君が頭の中で満足そうなので、間違いないはずだった。
「……では」
手始めに僕は邪魔者に狙いを付けた。
「狙撃!」
命中!
レールガンでホウオウの頭を見事撃ち抜けば、本日の食材ゲットである。
倒したホウオウから丁寧に羽根をむしり、「ホウオウチキン」として大切に封印、保存する。
フライドチキンの材料は貴重なので、いざという時のために在庫確保は怠れない。
ホウオウがいることもまた、この階層を選んだ理由で、重要アイテムなので作業のたびに回収する。
そして僕はさっそく工事の肝とも言える部分を用意することにした。
「えーっと位置はこの辺で……転送」
僕は別の階層から見繕って来た浮く島を、そのまま空へと設置し、これをベースとする。
やはり島の移動は何度やっても迫力があっていい。
出した瞬間、その場の大気を押しのける衝撃は癖になりそうだ。
「よし――では工事を始めよう」
続いて呼び出したのは現実の建機を参考に自作した建機ゴーレム達だ。
彼らと共にガンガン浮島を掘り進め、三層構造の部屋を作っていった。
ここで重要なところは、階層の内側をオリハルコンのブロックで覆うことだ。
今回の試みは、生半可な素材では容易く壊される可能性が高い。そこで目を付けたのが、仲間のオリハルコンゴーレム君ボディの有効活用だった。
「へ……へへへ。必殺技がどんどん弱くなっていく。この背徳感、やばいな」
『再生成には時間がかかりそうだね。ゴーレムのやつは砂金砂漠でしばらくお休みだ』
より強固に、そして頑丈に部屋の強度を固めるのは今回のテーマ的に必須だった。
幾重にも魔法文字で結界を施して、どんなモンスターでも絶対に壊れないように気を使いながら、必要な魔法も組み込まなければならない。
「始めると早いもんだね」
『そうだが。問題はここからだ……覚悟はいいかな?』
「いいともー……」
そして最も重要な最後の仕上げである。
ホームセンターで買って来た釜を改造した特製錬金窯を四方に4つ、僕は一番上の層に設置した。
「ゴーレムを錬金し続けて、ようやくたどり着いたなぁ……大変すぎない? 錬金工房の下位互換のくせに」
『一年未満で完成したのなら十分ハイペースだよ。普通は人生を捧げるほどの職人技なんだから』
「そんななんだ錬金釜」
通りでなかなか作れるようにならないはずだ。
そして設置した錬金釜に入れる素材のラインナップは、いつかやったレベル上げ用のスライムと同じものだった。
守護者のスライムに洗濯ノリ、ホウ砂、そしてオリハルコンインゴット一本と最後にキング化の王冠――。
かつて錬金術で生み出された、誰が呼んだか『師匠』とでもいうべき特別なスライムには、今回も大活躍してもらう予定だった。
僕が錬金釜に次々に材料を放りこんでいくと、狙い通り釜からメタリックなスライムが次々にあふれ出し始めた。
「きたきたきたぁ!」
あっという間に水銀のような液体金属の海が出来上がるが、こいつらはあくまで個別のスライムの集合体である。
つまり彼らがギチギチに詰まった中でこれから始まるのは、壮絶な食らい合いだった。
『この時点でかなり強い。ふれないように気を付けろ?』
「わかってるよ……僕だって死にたくはないって」
『さて、急いで逃げて完全に封印してしまおう……これでどれだけうまくいくかだ』
「熟成期間が必要だね」
『熟成か、まさにそうだ……』
続いて、僕はスライムたちが詰まっている階層の下へ移動した。
真下の階層には特殊な薬液を満たしてプールを作り、 そこに先ほど大量にゲットしたホウオウの羽根を突っ込む。そうやって完成するのは蘇生薬のプールだった。
この2階層目こそが肝とも言える大事なところなのだ。
1階層目で敗北したスライムの核は、ろ過されるように沈んで下層へと落ちていく。
落ちた先で蘇生薬のプールに浸かって、瞬く間に復活を遂げる。
そして、そのスライムの蘇生に反応して、再び1階層へと自動転移される仕組みだ。
これを繰り返してレベルを上げ続け、モンスターの質そのものを無理やり引き上げる――それが、この大規模なトラップの全容だった。
『うーん。えげつない。君らは自分でモンスターを強化することにためらいがないなぁ』
攻略君は感心したようにそう言うが、確かにアイデアの元は仲間達のモンスター強化法に影響されたことは間違いなかった。
「蟲毒島の完成である。『師匠』を超強化してレベルアップに挑戦しようってところだね」
ひとまず整った準備にホッと一息つきながら僕が言うと、攻略君は満足げながらも自らの行いに恐怖していた。
『さて、どうなるかは……正直恐ろしいな』
「そんなに?」
『そりゃそうだろう? 意図的に格上を作り出そうという計画だ。生み出されるのはいまだかつてない化け物だよ?』
「……そう言われるとおっかないなぁ」
攻略君がハッキリ口にするとなると、恐ろしさもひとしおだった。
だがダンジョンの性質上、レベルを上げるなら格上と戦うしかないというのは僕と攻略君で意見が一致していた。




