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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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第438話とある留学生の雑談

「……」


 その日レイナがコーラを飲もうとしていると、学校の自販機の傍で偶然見知った顔を発見した。


 嫌がるかなと思ったが、その場に座る疲れた様子のミアに、レイナは思わず話しかけていた。


「……ミア、なんか顔色悪いですね?」


 てっきりそっけない返事が返って来るかと思ったら、ぬるりと緩慢に頭を上げたミアは妙に素直に頷いていた。


「……実は来客があって。正直生きた心地がしなかった」


「……めちゃくちゃ珍しいですね。ミアが緊張するなんて」


 ダンジョンの中でならどんな修羅場でだって涼しい顔をしていたはずだ。


 彼女のそんな緊張した姿など、レイナは一度も見たことがなかった。


 素で驚いたが、ミアは当たり前だと苦々しい表情を浮かべていた。


「……そりゃそうでしょ? プレジデントの護衛よ? しかもダンジョンの中で! っていうか何で私? あんたやりなさいよ……」


「ワタシは現在留学中デース。勉学に勤しむ義務がありマース!」


 厄介ごとを全力で回避すべく大義名分を掲げるレイナに、ミアはちょっとファンには見せられない領域に突入するほど苦渋の表情を浮かべた。


「どいつもこいつも適当な……あいつらもエルフ、エルフとうるさかったし……世界には馬鹿しかいないのかしら?」


「あー……有識者の方でしたか。それは仕方がありませんね」


「……やっぱりあんたに頼んだ方が正解だったんじゃない?」


「後の祭りデース。お疲れさまでしたー」


「くっ……覚えてなさいよ」


 レイナはアハハと明るく笑う。


 実際ミアの生真面目な仕事ぶりは定評がある。だからこそ、レイナには疑問があった。


「まぁまぁ。でも大統領の護衛なんて、探索者としていいステータスになるじゃないですか。無事終わったのに、なんでそんなにご機嫌斜めですか?」


 無事仕事を終えられたなら、疲れたかどうかはともかくミアはむしろ喜ぶはずだ。


 しかしミアは、ハァーと特大の溜息を吐いて、顔を伏せた。


「……それが、ダンジョンの中で一時、護衛対象を見失っちゃったのよ……」


「……アチャー」


「馬鹿にしているニュアンス!」


「護衛が護衛対象を見失うのは確かに致命的ですね」


「ぐぅ……」


 減点も減点。大失態と言っていいレベルだ。


 それはミアもわかっていて、だからこそこの顔色なのだろう。


「……そうなのー。せっかく恥も外聞もなく準備を整えたのに、結局大失敗」


「恥も外聞もなくって……何かしたんですか?」


 一体何をしたんだとレイナが問うと、ミアはそうなんだと事のあらましを説明した。


「今回わざわざ彼が自分で来たのはね? エルフがテイム可能だって情報を私が送ったからなの」


「オゥ……始まってますね、我が国」


 つい「おいおい大統領エルフフリークかよ、最高かな?」とレイナが非常に感心して唸ると、ミアはなぜか深く頷いた。


「……世の中って真面目な人達がキチンと動かしてると思っていたけど、そうでもないのかもしれない」


「それは違いますよ? 真面目と、不真面目は共存するのです。人間、常にどちらかということはないのでしょう。エルフをテイムしたい……方法を知ればその日にチケットを買って飛行機に飛び乗る人間もいるはずです。仕事の合間にやって来るなんて、合理的で理性的なのではないでしょうか?」


 レイナが無理もないとしみじみと持論を展開すると、こいつも馬鹿の一味だとミアは眉をハの字に曲げた。


「……何かが致命的に間違っている気がするけど、実際それをやる人間はいるみたいね」


「そうでしょう? わかります」


「あんたも同類なんでしょう? 理解したわ」


「もちろんです! でもそういえば……ミアはエルフのテイム方法を知ってましたっけ?」


 確か、まだ正確なところは届いていなかったと思ったが、レイナが尋ねるとミアは今日一番の嫌な顔をして、白状した。


「……例の『セントエルモの灯』って奴らにジャパニーズ土下座して教えてもらった」


「……意外過ぎます! 自分を大事にしてください!」


「だって! 絶対あいつらなら知ってるでしょ!? 必要だったの!」


 そんなことしなくても教えてくれたと思うよ? とは今は言わない方がよさそうだとレイナは言葉を呑み込む。


 まぁやってしまったものは仕方がない。今回はスピード感が大切だった、そういうことなのだろう。


 難しいもんだなってレイナは肩をすくめた。


 でもすぐにジャパニーズ土下座って本当に効果あるんだと、そんなどうでもいいことを考えた。


「……なんというか、コーラを買ってスルーしようと思ったけど、話しかけて正解でした。こんなに面白い話が聞けるとは……」


「あんたね! それはないんじゃない!?」


「あはは。冗談です! まぁまぁ。今のミアも素敵ですよ?」


 予測不能の現実の面白さに感動しつつ、レイナはカシャリと開けたコーラの缶を飲もうとして手を止める。


 そしてそのままコーラの缶をミアに差し出した。


「……なに?」


「お疲れ様のおごりです。買ったばかりだからまだ冷たいですよ?」


「……ありがと」


 そして意外な発見だが、素直なミアはかなりかわいい。


 レイナはご機嫌で身を翻すと、愛すべき真面目なライバルに向けて背中越しに手を振った。


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― 新着の感想 ―
しかし、変身大統領ミア氏より強いんかねー。
エルフが欲しいという気持ちは真面目だろうけどそれが為に他国のダンジョンに国のトップが潜り込むのはとっても不真面目だと思います(蟀谷抑えながら
更新ありがとうございます∠(`・ω・´) 尊い(*´艸`*)………とっ、そういえばあのチャンピオンベルト、テンガロンハットおじさん気に入って着けてるけど、大統領と言う職業上、腕力アップより防護力アップ…
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