第434話テンガロンハットおじさんとひのたま小僧の冒険
「ふぅ……」
巨大ゴリラのモンスターをどうにか叩きのめし、僕はテンガロンハットのおじさんの救出に成功した。
そして今、ジャングル階層の奥地で、僕は当然警戒した彼と真っすぐ見つめ合っている。
さてどうしたものか?
僕はまず友好の証として、手持ちのポーションを差し出した。
「どうぞ使ってください」
「……君は?」
そんな質問に答えるとしたら、もちろんこの名前だろう。
「ファイアーボールヘッドです」
「……見たままだな」
「僕もそう思いますね」
メラメラ燃える頭を揺らし、その通りだと肩をすくめると、ツボだったのかテンガロンハットのおじさんは爆笑していた。
「ハッハッハッ! 面白い奴だな君は!」
「はっはっはっ! ありがとう! でも僕なんてつまらない男ですよ」
「……謙遜というよりも意外過ぎる自己評価だな!」
まぁインパクトは抜群だと思うよ。頭燃えてる人間なんてそうそういないからね。かっこいいけど。
だがそんなやり取りだけで、手渡したポーションを一気に飲み干したテンガロンハットおじさんは、瞬時に回復した自分の怪我に驚いていた。
「おお! いいポーションだな!」
「特別製ですよ? 大サービスです」
よし。これでおじさんの命の危険はひとまず去った。
これで少しは落ち着いて話ができるというものだった。
「良かったら出口まで連れていきましょうか?」
一息ついた僕は、ついでにとそんな提案を口にしてみた。
するとテンガロンハットおじさんは僕の顔をじっと見ながら、しばし考え込む。
そして――彼は子供のようにいたずらっぽく笑うと、遊び心溢れる提案をしてきた。
「いや……こうなったからにはどうせ護衛には怒られるんだ。だったらもう少し遊んでやろう」
「マジですか……」
「もちろんだ! 実はわしはエルフをテイムしに、このダンジョンにやって来たんだ。ただ……どうも情報が足りなかったようでね。さっきはうまくいかなかったんだよ。そこでどうだろう? 君は見たところ凄腕の探索者だ。ひょっとすると、エルフのテイムについても何か知っているんじゃないか?」
僕は、この核心を突いた提案に戦慄した。
そしてなんというアグレッシブなおじさんだろうか。
この期に及んでまだエルフのテイムをあきらめていないとは――正直、そういうの嫌いじゃない。
僕はうーんと唸り、一応迷ったそぶりを見せたが、だったらとこちらも大胆な質問を返した。
「……ちなみに、エルフとハイエルフなら――どっちがいいです?」
「ハイエルフでお願いする!」
テンガロンハットおじさんはあまりにも即答だった。
僕らはニカリと笑い、がっちり握手を交わした。
大いに気に入った。
その勇気に敬意を表して、彼のリクエストに応えることにしよう。
僕は一旦叩きのめしたゴリラを魔法で回収しつつ、ウニョンと空間を曲げて通路を作った。
そしてポッカリ空いた空間のゆがみの前で、テンガロンハットのおじさんに向き直る。
「じゃあ――なるべく急いでいきますか」
「ほほう……こいつは期待できそうだ」
我ながら怪しげな移動手段だと自覚はしている。
だというのに僕が用意した空間のゆがみへと躊躇うことなく飛び込むテンガロンハットのおじさんは、やはりただものではなかった。




