第433話これじゃないと叫びたい
エルフが彼らの前に現れた。
ただし野生のエルフが出てきた時の彼らの反応は、意外にも完全に同類だった。
「詐欺だ!」
「報告と違いすぎる! くそったれ!」
「ガッデム!」
めちゃくちゃ……キレるね。
護衛まで冷静さを欠く状況に、ミアさん達は大慌てで彼らを宥めた。
「い、いえ! 特殊な専用アイテムを食べさせることで、姿が変化するんだと聞いています!」
一旦それで収まって、キシャー!っと威嚇音を発するエルフ風ミュータントと再び対峙。
ミアさんはエルフ専用テイムアイテムである「エルフ団子」の存在を強調した。
「じゃあ、行くよ! 無力化する!」
「「了解!」」
そしてすかさずミアさん達が機動甲冑でエルフの動きを止め、黒服の一人が、エルフ団子をエルフの口にねじ込むことに成功した――のだが。
別段姿が変わることもなく、ただ普通にテイムされたエルフに皆様方は盛大に打ちひしがれていた。
「……っ! なんか違うじゃないか!」
「ホーリーシット!」
「ジーザス!」
「NOOOOOOOOOO!!!」
めっちゃくちゃ……嘆くね。
僕はちょっとかわいそうになってきた。
どうやら彼らの想像力は、いま一歩足りなかったようだ。
「やはり補助は必要か……さぞ無念だろう」
内心で同情的になっていた僕に、攻略君は「どうするんだ?」と話しかけてきた。
『助けるのかな?』
だがその問いに対して僕は首を横に振った。
「いや、秘蔵のエルフフォルダを披露したいところだけど……ちょっとあの集団に突っ込んでいって『僕のエルフフォルダ見てみ?』とは言えないなぁ」
『……どんな不審者かな?』
「だろう? ……ストーキング中だしねぇ」
『まぁ、出ていけるわけがないなぁ』
お互い納得……したくはなかったが納得である。
……じゃあ、そろそろお暇しようかな?
そう思っていた矢先に、突然怒声が上がって僕は振り返った。
「一度で諦めるな! 何かが足らんのだ! わしがやる!」
まずは自分たちがやるから、お願いだからここで待っていてくれと言われていたテンガロンハットのおじさんがキレたらしい。
「ぬおおおおお!」
「ま、待ってください!」
制止の言葉も聞かずに団子を奪い取り、雄叫びを上げて駆け出すテンガロンハットのおじさんは護衛を凌駕する健脚だった。
「いや……すごいなぁ、あのおじさん」
恐らく本当に探索者の経験があるのは間違いない。
それも結構深くまで潜ったことがあるのか、レベルもかなり高いことがわかる。
ただ護衛されていたということは現役ではないのだろう。ジャングルの中に飛び込んだとたん、おじさんはひょいっと伸びて来たでっかい腕に掴まれ、あっという間に視界から姿が消えた。
「!」
「何だ~!!!」
悲鳴が響き、突如現れた恐ろしくでっかいゴリラ型のモンスターが、テンガロンハットのおじさんを鷲掴みにしていた。
護衛はまだ追いついておらず、密林のフィールドは最悪のタイミングで彼の姿を完全に覆い隠している。
そしてゴリラは、その巨体からは想像もつかない身の軽さで、森の奥へと消えていった。
「……っ! テンガロンハットのおじさんがゴリラに攫われた」
『うーむ、強烈な絵面だね』
緩いことを言っているが、どう見ても緊急事態である。
そして状況を把握しているのは現状、僕だけだ。
「……はぁ」
僕はため息をついて、駆け出していた。
まったくダンジョンてやつは次から次に何か起こさないと気がすまないようだった。




