第432話テンガロンハットのおじさん
集団の中心にいる、テンガロンハットのおじさんはテンション高めで何かをまくしたてている。
「ここにはエルフがいるんだろう? テイムできると聞いて来たんだ!」
あれ? 友達かな?
僕のテンガロンハットのおじさんへの好感度が上がった。
明らかに海を越えてやって来ているらしい彼らには並々ならぬ熱意を感じる。
どうやらどこからかエルフの噂を聞きつけた探索者の一団らしい。
いや、ただの探索者にしてはやけに物々しいが、ダンジョンへと足を踏み入れたところを見ると、探索者関係の人達なのは間違いなかった。
謎の一団はテンガロンハットのおじさんが率いているようで、周囲にいる黒服の面々は彼の護衛なのだろう。
そして今回、ガイド役を務めるコール君、ブロック君、ミアさんの三人は、さっそく手に入れた機動甲冑を使ってこのダンジョンを案内する手はずらしい。
「離れないでください。可能な限り慎重に進みますので」
「変に気遣いすぎないでくれ。これでもほんの数年前まで探索者だったんだ」
「は、はぁ……」
相手は偉い人なのか、心底戸惑っていつもとは別人のようなミアさんは中々面白い。
そして銃型杖を構え、外部スピーカーで喋る機動甲冑は大好評のようで、歓声が上がっていた。
テンガロンハットのおじさんもツボに入ったようで、少年のように目を輝かせていた。
「おお! しかしすごいな! 報告は聞いていたが、こんなものまで存在しているとは……国にも一台買って帰るか?」
「……どうでしょうね? 二足歩行のロボットが、実用に足るかどうかが分かりませんが」
「そうか? カッコイイがなぁ……カッコイイよな?」
「正直それは否定できませんね。うちのガレージに一台欲しいくらいです」
「だよなぁ」
護衛の人にしきりに「これはいいものだ」とか、「ロボットと一緒に悪と戦うのが夢だった」などと語るテンガロンハットのおじさんは、この時点でだいぶ好きになっていた。
しかし遠目から見る機動甲冑はとても好調に動いていて、僕としても実に鼻が高かった。
さらに彼らがミアさんの転移宝玉を使って20階層に飛び、生徒会の製作したマップを使えば、エルフの生息域を目指すのもそう時間もかからないはずだ。
しかもテンガロンハットのおじさんの護衛さんは相当な手練れらしく、留学組の3人に全然劣っていないのだから、安定感は抜群のようだ。
うんうん、これならある程度の安全性は保証されたようなものか。
僕は透明マントを改良した透明雨合羽とマスクで追跡を続けていたが、ふと我に返った。
「……僕ってどんだけ暇なんだ?」
ダンジョンに長居するのは悪くないんだけど、ストーカーまがいの追跡というのはどうなんだろう?
いや、ステルス雨合羽が手元にあるとなれば、これはもはや試してみろと神様が言っているようなもんだ。
僕とてそういうムーブに心惹かれる時もあったりした。




