第427話売ったり買ったりは正直専門外
「いやー何してんだろうなって思ってさ! それはそうと友情って尊いよね! ねーショウタロー?」
「クァア~♡!」
浦島先輩はオホホと笑いながら、よしよしと子竜の頭を撫でる。
僕はどうしてここがわかったんですか? と言いかけて、当たり前かと押し黙った。
いまや、浦島先輩の目と耳は、僕よりも遥かに広い。
その気になれば、探し出せないことはないだろう。
苦々しい表情を浮かべる僕と、ドラゴンが嬉しそうなのでニコニコ笑っているハバキリ君は、実に対照的だった。
「……どうしたんです? 浦島先輩? 偶然会ったわけじゃありませんよね?」
「そうそう。探してたんだよ」
「僕をですか?」
「うん。聞きたいことがあってさ。あの新装備、この後メッチャ流通させるつもりなんだよね?」
ショウタローから視線を外し、ようやく目的を思い出したらしい浦島先輩は、唐突に妙なことを口にした。
新装備、そして量産しているものと言ったら連想する一押しのロボはあった。
「機動甲冑のことですよね? まぁそれなりです。しばらくは注文された分だけは作って、後は東雲さんの家にお任せしてますよ?」
「結構ざっくりしてるなぁ……。じゃあもう売り出してるんだ?」
「はい。動いてるやつもありますよ? 量産型は今2タイプあります」
「2タイプ?」
「はい。僕の機体をベースにした奴と、機動力を重視した奴ですね」
その二つを僕は密かに、男性型、女性型と呼んでいた。
ただ浦島先輩は妙に難しい顔をしていた。
「ふーむ……しかしよりにもよって、彼らに最初に売っちゃったんだね……ちょっと心配なわけさ」
浦島先輩は気軽な口調だったが、真面目に言ってくれているのが分かった。
そして僕も、先輩がなぜこんな話を振ってきたのか、おおよそ見当がついてきた。
「……まぁ、どうせレイナさんは知ってるわけですし。下手に隠すよりも、興味を持ってもらいたくて」
「……なるほど。どう興味を持ってもらうかが重要だって、ワタヌキ後輩は思ってるんだ。仲良くなれそ?」
「どうでしょうね? そうなってくれればいいなって思いますけど」
相手がどう感じて、行動してくれるかはわからないが、機動甲冑と銃型の魔法杖は彼らの興味を大いに刺激してくれるだろうと思う。
一方で話についてこられず置き去りになっていたハバキリ君だったが、内容には強い興味を惹かれたらしい。
「なんの話をしているのかわからないが……またすごいものを作ったのか?」
「その通り。販売もしているけど。まぁ……一般的な値段じゃないかなぁ」
そう言って僕はハバキリ君にコソコソと耳打ちすると、彼は肩を落とした。
「……それは高いのか、安いのか」
「留学組はもうプロだし、何とかなったみたいだけど……安くはないね」
「ヒントちょうだい?」
もったいぶった僕に今度は浦島先輩が興味を示してきたが、当事者である僕にしたところで、少々現実感の薄い話だった。
「まぁ……型落ちの戦車を普通に買えるくらい?」
「そりゃあ、一般向けじゃないわ」
「でしょう? 東雲さんに値段設定聞いた時、ぶったまげましたよね」
僕の金銭感覚は、まだまだ庶民だ。
きっと、この学校を卒業するまではそうだと思う。
僕の取り分は卒業後の後払いとする形にしているが、果たしてどうなるやら。
その結果は――たぶんミアさん達の感想に掛かっていた。
「でも、どうして急にそんなことを? ひょっとして……暴れてます?」
そして一応、その辺りの予測も口に出して聞いてみると、浦島先輩は軽く頷いた。
「そういうことだね……絶賛攻略中だよ?」
「へぇ……行動が早すぎません?」
なるほど、やっぱりもう使ってくれてるのか。そりゃあ先輩も心配してくれるわけだ。
プレゼントの感想が返って来る時は、案外すぐに訪れることになりそうだった。




