第426話新アイテムとペットの名前
レーダーは問題なく起動していた。
画面で規則正しくピッコンピッコンと点滅している光はトラップの位置を示していた。
今のところ、罠発見の精度はかなりいい。
僕は「これは行けるのでは?」と新発明を評価していた。
ハバキリ君の依頼と同時にトラップレーダーの試験もかねてダンジョンの中へ潜る。
結果は攻略君の助けを借りずとも、問題もなくダンジョンを進むことができた。
そして緊急事態ということもあって、とにかくスムーズに攻略君のおすすめ宝石スポットにたどり着いたわけだが――傍らでははっきりとハバキリ君の息を呑む声が聞こえた。
「はい。到着です。たぶんこの場所の宝石なら気に入ってくれると思う」
「……っ!」
ハバキリ君は目の前の光景に圧倒されていたが、無理もなかった。
宝石がそこら中に輝く洞窟の中は、それだけのインパクトがある。
本当ならダンジョン内の鉱脈なんて、本気で人生変わるほどの大事件だ。
しかし、いかんせんそこは情報源が「攻略君」である。
こちらの価値観はあまり関係なく、ゲームの金策並みに非常識な大金脈をポンとお出ししてくる。
大切なのは目的が達成できるかどうかということで、今回は目論見通りに、ドラゴンの方も目を輝かせお気に入りの拳大の原石に飛びついていた。
「! これがいいのか?」
「きゅい!」
「そうか! よかったなぁ。ショウタロー!」
しかしおそらくはドラゴンのものと思われるその名前を聞いた時、僕の眉間はピクリと痙攣した。
「ん? 名前つけた?」
「ああ。必要だろう? 実は君の名前をもらったんだよ」
一件落着しそうで気が緩んだのか、屈託のない笑顔でそう言ったハバキリ君に対して、僕は一切朗らかな笑顔を崩さないまま、気恥ずかしさでライフを削られていた。
「……そ、そうなんだ。気を遣わなくてもよかったんだよ?」
僕は何とか踏みとどまり、声が震えないよう最大の注意を払いつつ聞いてみると、いいやといたって真面目にハバキリ君は首を横に振る。
「そんなわけにもいかない。君の協力なしに、この子には出会えなかっただろうから、そこは忘れないようにしないと」
キリリと表情を引き締めて、ハバキリ君は妙に義理堅いことを言うけれど、僕は思ったより戸惑った。
……これはなんか照れるな? いや……これはすごく照れるぞ。
ショウの部分は自分の名前なんだろうけど……ハバキリ君は大丈夫なのだろうか?
動揺する僕に、ハバキリ君は首を傾げた。
「どうした?」
「……いや? なんでもないですよ?」
そう、なんでもない。
ただ名前を合わせるという響きがね? こう……カップルっぽさがあって。
いや! この照れに問題があるとすればそれは僕の頭の中の問題だ。
宝石にしがみつくショウタロー君は、すでに体の中の魔力を宝石に注ぎ込んでスッキリしているようだった。
宝石自体もすっかり気に入ったようだ。
それが解っているのかハバキリ君も上機嫌で、ドラゴンを抱え上げた。
「ショウタローも礼を言ってる。ありがとう、大切にするよ」
ハバキリ君は大粒のダイヤモンドとドラゴンをセットで見せて微笑みながら、礼を口にする。
……いやまぁ、ショウタロー君も元気になったようでよかったね。
でもこんなところ絶対誰にも見せられないなと、なんとなく出口の方に視線をずらした僕は――こちらを見ている視線にようやく気が付いた。。
「―――すぅ」
「……っ!!」
思わず息を呑み、僕はサーっと血の気が引いた。
そしてじっとこちらを観察していた浦島先輩と目が合って、嫌な汗がじっとりと滲んだ。
なにせ浦島先輩の瞳は、同人誌即売会で運命の一冊を見つけたかのように輝いていたからだ。
「……違うんです先輩!」
「……ええんやで? ワタヌキ後輩? 愛の形は人それぞれ……人それぞれだから」
「なんで二回言ったんです!?」
「?」
ハバキリ君だけが、僕らの騒ぎにきょとんと首を傾げていたが、たぶん騒いでいる僕らの理由が極めて特殊なので本当に何とも言えなかった。




