第420話ミア、探索に行こうと急かされる
「……本当に私達だけで行くのね?」
ダンジョンに呼び出されたミアが訊ねると、パーティメンバーのコールとブロックはいつになくテンション高めに頷いた。
「当然だ! すぐ試さないでどうするんだ!」
「……自信あるぜミア。アレはいいもんだ」
「……でも、情報の出所は売店のアルバイトなんでしょう?」
だがミアには経緯を聞いても全く納得できなかった。
うさん臭さ100パーセントの解説で手に入れたという新たな力を、コールもブロックもかなり信頼しているみたいである。
ミアから見ても、彼ら二人の探索者としての実力は相当に高い。
そんな彼らの意見なら、もちろん考慮には値するが……しかし納得できるかは別の話だった。
「おいおい間違えるなよミア。ダンジョン内で店を出してるイカれたアルバイトだ」
「そうだ。そしてあいつは、何かすげぇものがバックについてる可能性がある」
「……それは興味深いわね。あなた達が探し当てたのはどこの誰なのかしら」
その質問にコールとブロックは声を合わせて言った。
「「マツバヤシ タイヨウ」」
「……だれ?」
「クラスメイトだろ!? それにあの売店で店員やってる奴が普通なわけない!」
そうコールに言われても、ミアの頭にその顔は浮かばなかった。
「…………まぁ、今度顔を見ておくわ」
「ワタヌキとも仲がよさそうだったぞ? あいつがワタヌキの情報元の可能性もあると思うぜ!」
ブロックも怪しいと見ていて、今後もコミュニケーションをとるつもりのようだ。
その価値の根拠は、彼らが手に入れたという力によるところが大きいようだった。
「わかった。……じゃあその自信の根拠、見せてもらいましょうか?」
どこでお披露目してくれるのかと尋ねると、コールとブロックはすでに試す場所に目星をつけていた。
「おすすめは10階の守護者だって話だ! まずはそこで慣らしといこう!」
「そうだな。使い慣れない武器だ、悪くない」
「そうね」
確か大きなゴーレムがいたはずの階層は、手慣らしとしては悪くない。
ミアは頷き、そのまま10階へ向かうと、そこからさっそく非常識は始まった。
「行くぞブロック! 呼ぶぞ!」
「おうとも!」
「?」
そう叫んだ瞬間、二人の魔力が弾けた。
二人の魔力を呼び水に現れたゲートから2体の機動甲冑が現れると、ズンと重々しい音を立てて大地に降り立った。
「……なんなのこれ?」
驚いて口が開きっぱなしのミアにかまわず二人は現れた巨大な鎧に乗り込む。
するとそれはまるで生物のように滑らかに動き出す。
「じゃあ行くぜ、ミア。見ててくれよ」
「ああ……こいつらの初陣だ。かっこよく決めないとな」
聞きなれた声に呼びかけられて正気に返ったミアは、慌てて強気な態度を取り繕って頷いた。
「ま、まぁ……驚いたけど、ロボットでしょ? そんなに期待できるのか疑問ね」
「……ほう?」
「言ったなミア?」
だがコールとブロックの態度は、妙に自信に満ち溢れていた。
10階層の守護者である「鉄巨人」は、階層の割には強力なゴーレムで、一対一ならミア達でも手こずるような強さのはずだった。
特に正面から戦えばパワーが圧倒的で、へたをすると負けかねない。
しかし――。
「うおおおおお!」
その鉄巨人を、ブロックが操る機動甲冑は、正面から拳で圧倒していた。
一撃でその顔面を正確にとらえた拳は、鉄巨人をねじ伏せる。
衝撃はすさまじく、同サイズの二体の巨人が殴り合う戦いは、もはや大型のモンスター同士が戦っているようにしか見えない。
そして地面に倒れ伏した鉄巨人を、すかさずコールが迎え撃ち、巨大な斧で止めを刺した。
魔力で強化された鉄の塊のようなモンスターをまるでバターの様に切り裂いたコールは、上機嫌で歓声を上げ、ガキンとブロックとグータッチする。
「確かに慣らしとしちゃ最高だなブロック! なんだこの未来感! ロボットバトルってやつだ!」
「全くだなコール! こんなデカブツと正面から殴り合えるなんて最高だぜ!」
初陣は大成功どころか、よほど気持ちがよかったらしい。
二人ともテンションがおかしかった。
ミアにしてみても、これだけ重量級の敵と正面から渡り合うなんて初めてお目にかかる光景だ。
そして重要なのはこのゴーレムがダンジョンの守護者クラスを圧倒する力を秘めていることが証明された点だった。
「ま、まぁ……中々やるじゃない。思ったよりはね……」
動揺で表情をヒクつかせるミアを二人は見つめて、なるほどと頷くと、すぐさま次の提案をした。
「OK……じゃあ、慣らしはこんなもんにして探索を続けよう。ブロック、この後どうする?」
「そうだな……このダンジョンの20階層台はトラップの少ない密林だ。……いっちまうか? 30階層まで」
「はぁ?」
何を馬鹿なとミアは声を上げる。
冗談だと思ったが二人は完全にやる気だった。
「……いいと思うぜ。ディナーまでには終わらせちまおう」
「……ああ。俺達の相棒なら楽勝だ」
「ちょっと! 本気?」
「「ああ、もちろんだ!」」
コールとブロックは自信に満ち溢れた態度で頷き、躊躇うことなく歩き始めた。




