第416話東雲式機動甲冑
ゴウンゴウンと重苦しい音を立てて、フル稼働する魔王城。
僕は地下にて流れるラインに目を光らせる。
とはいえ、僕のやるべきことはすでに終わっていた。
材料を補充し、完成してゆくそれを観察しながら、僕は邪悪に微笑んだ。
「クックック……。いい出来だ。これならばお喜びいただけるであろう」
その時、工房の扉が開き、僕は振り返る。
「……そこまでだ!」
――っ!
突入してきた人影は、我らサブカル研究部の面々だった。
僕はフッと笑い、彼らを整備用の足場から見下ろしながら、歓迎した。
「ようこそ……よくここが分かりましたね」
「……わかるとも。フル稼働させすぎだ。城中に音が響き渡っていたよ」
「あらら」
そりゃあバレるかぁ。
しかし考えてみれば当然だった。
今回の規模は過去最高ということもあっていつまでも隠し通せるものではないだろう。
僕はすんなり観念して、黒幕ごっこは終了である。
「仕方ない……では見ていただきましょうか」
「な、なにを?」
さっきから叫んでいる人影――龍宮院先生は、踏み込んできたくせに心の準備はまだできていない様子だ。
だからこそここで畳みかけるべく、僕は全貌を素早く明らかにした。
「それはもちろん――僕がここで行っている成果のすべてですよ!」
僕が叫べば強烈な照明が一斉に輝き、作品たちが照らし出される。
出来立てほやほやでズラリと並ぶ起動前のゴーレム素体は、かなりの威圧感を放っていた。
ここぞとばかりにどやーっと満面の笑みを浮かべる僕。
そして仲間たちの反応が真っ二つに割れるのは予想の範囲内だった。
「ななな……なんだこれは!」
龍宮院先生のいい反応をいただけたので、僕は出来上がったかわいい作品たちを堂々と紹介した。
「これが! 今売り出し中の量産型東雲式機動甲冑の素体です!」
「「「「りょうさんがた……」」」」
「いえす!」
「これって――拙者達が作ったアレを量産したんでござるか……!?」
桃山君が感嘆の声を漏らしていたが、僕の持つ鎧そのものを完全に複製したというわけではなかった。
「そうなんだけど少し違うかな? 素材は鋼だしね。ゴーレムとしてのレベルはそんなに高くないよ」
だがゴーレムとしてのポテンシャルならそれでも十分強力だった。
この学園の生徒なら、ゴーレムがレベル以上の働きをするのは鉄巨人で学んだことだろう。
すでに先行して内部フレームだけ生産して、東雲さんの家にも卸している。
とりあえずは50体ほど生産してみるのは、お披露目の時から決まっていたことだった。
「はい! ワタシも買います!」
手を挙げるレイナさんだけど、それは少し気が早いというものだった。
「まぁまぁ……レイナ氏。そう焦っちゃだめだ。この子らじゃ、もう僕らについてこられない。だが開発も、実験も終えているから。ワンオフの専用機すら、開発可能だとも」
「専用機ですか!?」
「そだよー」
なんせ専用機は誰もが憧れるステータスだ。
すでにこのカスタマイズ性はテイマーでも無理だと理解している浦島先輩は、素体を前に何か考え込んでいた。
「やっぱ応用利くなぁゴーレムって。いい感じだわぁ」
「地球の文明にまったく沿っていない辺り、ロボットと呼ぶのはいささか抵抗がありますけどね」
「ちなみに……アンドロイドのロボ娘は生産可能なのかね?」
「……可能ですが。しかし造形力が試されますよ?」
「愚問だね。錬金スキルは常に磨いているよ」
「……え? いつの間に?」
「そりゃあ……うちの子達に丸投げしている間にですよ。可愛い装備を用意してあげたいでしょう?」
なるほど、流石浦島先輩。自分磨きに余念がない。
先輩なら、そのうち想像を超えたアンドロイドゴーレムにだって辿り着くに違いなかった。
思ったよりも肯定的な意見の多い空気に、龍宮院先生が待ったをかけた。
「……いや待とう? 自然に受け入れているけど、量産はまずいでしょう?」
「そうですか? ピラミッドのやつの方がよっぽどヤバくありません?」
「どっちもやばいんだよ……。その辺りの認識は大事だから。徹底しなさい」
「……確かに」
最近ちょっと気を抜きすぎかも?
胸に手を当てて聞いてみると、確かにどちらも十分すぎるほどやばい。
胸の奥ではかつて攻略君に出会う前の倫理観が、蚊の鳴くような警鐘を鳴らしていた。




