第411話その時ミアはこう考える
コールとブロックが1階層で国境を越えた友情をはぐくんでいた頃、ミアは独自に行動を起こしていた。
「いい?……ここに居る連中は規格外よ。本当にヤバい連中ばかりなの。でも必ず何かあると確信しているわ」
ミアは力強く宣言して、急遽引き入れた現地の学生たち、草薙率いるパーティの面々にそう説明した。
独自の調査から、この階層に学園の秘密が関係していると結論付けていた彼女は、「セントエルモの灯」を名乗る一団の存在が明るみに出たことで、確信を深めていた。
そして経験と、魔法による索敵をフルで使い、ここまで強行軍で進んできた現在、ミア達は攻略前に安全地帯で最後の準備を整えた。
そんなミア達は安全地帯であるはずのセーフルームで、出会った金髪碧眼の男の子にセールストークを仕掛けられていた。
彼の持つケースいっぱいに入ったお弁当は、どれもおいしそうである。
「……ジャングルは過酷でち! アイテムの補充は十分でち? おすすめお弁当を買って欲しいでち!」
そんなあからさまに怪しい店員に対し、ミアはとうとう我慢しきれず何を言ったものかと悩みながらも声をかけた。
「……あなた、なんでこんなところにいるの?」
「売店の店員だからでち?」
「……また売店」
男性陣が消えたきっかけをもう一度耳にして、額に青筋が浮かんだミアに、お手製サンドイッチを持ったちびっ子は一生懸命その出来をアピールしていた。
「おひとついかがでち? おいしいでち!」
「…………もらうわ」
「ありがとでち! 力が漲るでち!」
「……かわいい」
「ミアさん?」
「! なんでもないわ!」
ハッと正気を取り戻し、気恥ずかしさを感じたミアはごまかすように叫ぶと、尋ねた相手に顔を向けた。
なんとも言えない顔でミアを見ていたのは、黒髪の東洋人らしい女の子、月読 カノンだ。
ミアは彼女に向かって言い訳するように説明を続けた。
「ウオッホン!……とにかく、この階層で私が負けるわけがない。でもその謎はあの大会で理解した。結局精霊なのよ。あの連中が独占しているなにかを把握しないと始まらないわ」
だがそこまで言うと、おずおずとカノンが口をはさんでくる。
「だから売店でガチャを引けば……」
「そんなジョークは聞き飽きたわ! あんな強力な化け物がカプセルトイみたいに売ってたら苦労はないでしょう。仮にそれがあったとしても、それはあの『セントエルモの灯』とかいう連中の仕込みよ! 私が求めているのは納得できる精霊の取得ルート! そこを押さえなきゃ、いつまでも誰かの手のひらの上でしょうが!」
「「「「……」」」」
「な、なによ?」
しかし、四人は何を言うでもなく、揃って押し黙る。
この時この場にいる4人は「だって本当にあるんだし……考え過ぎでは?」と言葉にしかけた。
だが500円で最強の戦力を手に入れた自分達だからこそ、ミアさんの懸念はあながち的外れでもないと思える。
この後に何かしっぺ返しがあるんじゃないかと不安なのがまず一つ。
そして何より馬鹿な話だとはここに居る全員が思っているため、次の言葉が出てこなかった。
しかし、他に精霊を手に入れる方法を知らない以上、話がここで終わってしまう。
その結果の沈黙であるのだが、ミアが察することはなかった。
それはミアの活動方針故の考えだったが、その深読みのせいで完全に最短どころか、空回りして答えからは遠ざかっていた。




