第410話目と目が合ったら
「俺は猛烈に感動している……。ファンタスティックだとは聞いていたがここまでとは!」
「……胸が熱くなるな。俺は昔カードを集めていたんだよ」
感動を噛みしめている留学生達は無事に二人とも精霊をゲットした。
体験としては中々スリリングで、取り仕切っている松林君も満足そうに彼らを賞賛していた。
「楽しんでもらえてよかったよ。やっぱ、肝が据わってるなぁ。今日捕まえた奴は記念に持ってっていいよ? 気に入られたら仲間になってくれるからさ」
「「本当か!?」」
「ホントだよー。消えることも多いからそこは覚えておいてな。オレもどんぐり君と出会うまでそりゃあ苦労したもんだよ。ああ、ダメならまたガチャを引きに来りゃいいから、その時には商品補充きちんとしておくからさ」
何事もないように、そう言う松林君だ。
しかし出している情報は、世界的にも類を見ない画期的な情報で、それを聞いたコール君とブロック君は、いよいよ困惑して松林君に訊ねていた。
「いや……お前は何者なんだ? なんでこんなことを知っているんだ? まさかお前がファイアーボールヘッドなのか?」
「オレ? 違う違う。オレはただの売店の店員だよ。店長からいろいろ教えてもらったんだ」
「「店長?」」
声をそろえる二人に松林君は頷いた。
「そう。今日、オレらの護衛をしてた、あの天使っぽいのも店長のテイムモンスターなんだ」
「あの天使、そういうことなのか!?」
「天使までテイムが可能なのか……何者だ? そいつがファイアーボールヘッド?」
正解――。
ほぼ空気と化していた僕は、松林君に合わせてしたり顔でうんうん頷くのみだ。
案の定、二人は首を傾げる。
まぁダンジョンに住む謎の存在と僕らがコンタクトを取ったことがあるとでも思ってもらえれば僕としては十分だった。
「だけど……店長ってなんだ?」
「さぁな? だがあの天使を従えているんだろう? じゃあ神様でも住んでるのかもな」
「そんなこと……あるのか?」
「どうだかね? 昔はそんな風に騒いでる奴がいたらしいが……正直ダンジョンに潜っていたら、そんなのが出てきてもおかしくないって思わなくもないぜ」
「それはそうなんだよなぁ……」
松林君まで共感し始めて、謎の存在「店長」が神様になってしまった。
まぁ、言ってしまえば僕なんですけど、それは何とか自分で辿りついてみてね?
密かに彼らのやり取りを楽しんでいると、コール君は今度は僕に目を付けた。
「なぁ。じゃあ、ワタヌキも店員なのか?」
「いや? 僕は店員じゃないよ」
「そうなのか? じゃあお前も何かすごいことを知っているのか? ミアの話じゃ、例のファイアーボールヘッドの関係者なんだよな?」
ズバリと正面から聞くブロック君はいっそすがすがしかった。
なるほど。そこは情報共有されているか。
あの時いちおう顔を合わせたが、レイナさんの取り巻きその一みたいな感じだったし、覚えてもらえているのは驚きである。
さてどうするかと思ったが、彼らはすでに僕の中の情報提供におけるガイドラインを突破していた。
「うーんそうだね。関係者といえば関係者かも。松林君とも仲がいいしね。彼も大サービスしているし、じゃあ僕は――君達にいいお店を紹介しちゃおうかな? 今すごく忙しくなってきてるはずだけど、僕の紹介だって言えば、優先的に仕事を引き受けてくれるかもしれない」
そういうわけなので、最新情報を一つ。
おすすめのお店の紹介という彼らの意表を突いた提案に、コール君は困惑していた。
「店って、なんの店だ?」
「ダンジョン探索者の武器を作ってる工場だよ。最近変わったものを作ったみたいで、試してみるのも面白いんじゃないかなって」
そう説明して僕が財布から取り出したのは、もちろん東雲鉄工の名刺だった。
「この学校に通ってる生徒さんの実家なんだ。よかったら一度見てみて」
だが名刺を受け取ったコール君は、困り顔で頭を掻いた。
「あー。そういうのはなぁ……。俺達は契約してるところがあるから……」
「……すげぇ。プロって探索者もそういうのあんの?」
松林君がプロ野球の選手に出会ったように目を輝かせると、まぁなとコール君は笑った。
「そんなに縛りがあるわけでもないんだが。地上で使って欲しいだとか、そういうの関係なしでいいなら見てみたくはあるな」
「それで構わないと思うよ。まぁでも……契約がまずいと思うかもしれないのはコール君とブロック君の方かもしれないけどね」
「……ほぉ? 俺達のメイン装備よりもすごいって?」
「期待していいと思うよ。戦いのスタイルに合うかどうかはわからないけどね」
「いいね。期待を煽る言い回しをするじゃないか」
意外と和気あいあいと語り、僕らの中でいつしか最初の強烈な違和感はもうなくなっていた。
ついつい探索者としての話が弾んでしまったが、そう言えば、僕には彼らにどうしても聞いてみたいことが一つあった。
せっかくなので僕は頃合いを見計らうと、その質問をぶち込んでみた。
「ところで――二人とも、ひょっとしてだけど、某育成系RPG……対戦出来たりしない?」
するとコール君とブロック君……そして松林君まで、不敵に微笑んでおいおいと肩をすくめる。
「その気になればいつでもやれるさ……俺の最強をパーティ見せてやるよ」
「最近はご無沙汰だったが……いっちょ再開といくか?」
「何を隠そうオレは……かつてはクラスでフルアタのタイヨウと呼ばれた男だぞ?」
おやおや。こいつは血気盛んなことで。
どうやら今回の精霊狩りは、かつてのチャンピオン達を目覚めさせてしまったようだ。
こうして目と目が合ったのなら、戦わねば不作法というもの。
レッツ、バトルである。




