第408話3分間の絆
「「「「……」」」」
奇妙だと、自然にそう思える顔ぶれだった。
同じクラスメイトであるにも関わらず、並んでいるだけでそう思えるのもすごい話だが、奇妙だ。
そんな僕らは、ダンジョンの床に座りこんで、一緒に人数分のカップ麺の前にいた。
こんな状況になった理由は大したものじゃない。
ちょうど何か食べたくて、松林君とお湯を温めていたからである。
「それはカップ麺じゃないか! 売っているのか?」
そう異様な食いつきで尋ねられ、松林君は売り物ではないと答えた。今から自分達が食べるんだとも。
するとブロック君は実にさみしそうな表情でシュンとするので、まだあるから一緒にどうだ?と僕が勧めた。
そして3分のタイマーをセットして、床に座り、お湯を入れたカップ麺を見つめているというわけだ。
僕らは、タイマーが鳴るかならないかというタイミングで素早く蓋を開けて、麺を啜った。
ズッ! ズズ~……!
……染みわたる。言葉はいらないこのうまさである。
コール君とブロック君の留学生二人は、かなりオーバーなリアクションで目を見開き、感動を体全体で表現していた。
「……! マジか! 味が違うぞ!」
「おお……うまいな。確かに違うぞこいつは」
「だよな! お前は違いが判る男だと思っていたぜ!」
大はしゃぎの海外勢に、松林君は物申した。
「いやいや、そんな変わる?」
彼が勇猛果敢にそう口にすると、もちろんだ!と力強い返事が返って来た。
「変わるって! このヌードルは最高だ!」
「持って来て喰わせてやりたいところだ!」
そんなにかと呟く松林君に僕も同感である。
だがブロック君とコール君は再び確信をもって頷いて、さすがにちょっと気になって来た。
「へー、そんなに違うんだ。ちょっと食べ比べてみたいかも」
ずるずるとカップ麺を啜りながら、僕は二人の話に耳を澄ましていた。
不思議なものでこうして同じカップ麺を食べながら、大絶賛されただけで「この人達いい人かも?」とキュンと来ている僕はきっと恐ろしくちょろい奴に違いない。
そして食べ物は偉大である。
おいしいものを食べながら楽しく話していると自然と口は軽くなり、コール君とブロック君の話題は、いつの間にか自然と自らの身の上話になっていた。
「いや、本当にヤバかった。日本のエキスポで戦った奴らが特別おかしかったのがここに来たきっかけなんだぞ? 信じられるか? 実際戦った俺たちがまとめて、即日本留学ってありえねぇ」
「まったくだ。命令してる方もありゃあ半信半疑だぜ? まぁ旅費をタダでくれると思えば気前のいい話なんだが」
ただ、思っていたよりもペラペラと内情を世間話のノリで話されたのは意外だった。
「なんか……大変そうだねぇ」
思っていた以上に雑な話に、思わずそう呟いた僕だったが、当の本人たちは口で言うほどひどい目に合っているとは思っていないようだった。
「まぁ? 実は俺もブロックも、日本にゃ一回来て見たかったんだよ。なぁ、二人とも、ロボット詳しいか? アレ、たまにテレビで放映される立像のプラモデルが欲しいんだよ。日本のフィギュアはすごいんだろ? 作ってみたいんだ」
「え? ああ、うん。わかるわかる。じゃあブロック君も?」
何とプラモデルを嗜まれますか。コール君の意外な趣味に驚く。
じゃあブロック君もかと彼を見ると、コール氏が代わりに答えた。
「いや、こいつはゲームの方だな。格闘ゲーム。最近はもっぱらヒーローもののやつに熱を上げてるんだぜ?」
「まぁそうだ……いやアレはアメイジングだ。やってないならぜひやるべきだ」
「おお……そんなんだ。僕も部室でやってるよ。メッチャ燃えるよね、アレ。声優さんも豪華でアニメーションも綺麗だ」
「そうなんだよ! 実はダンジョンで技の参考にしてる……ってか! 学校の部室で出来るのか! 最高だな!」
「実はねー……うちの部活はゲームする部活だからね」
「「マジでか!? ジャパン半端ないな!」」
でしょう? でもたぶん僕らの部室は他に類を見ない設備の充実具合だと思いますぜ?
前々から、そこはかとなく同類の匂いをかぎ取っていたが、なるほど、コール君は興味津々でブロック君の方は、すでにある種の沼に片足を突っ込んでいる状態だと見た。
やっぱりこの人達、いい人そうだ。
しかし複雑なのは、自分はエキスポの怪人を調べるためにやって来たと、公言してしまっていることだろう。
そして僕は心の中で謝った。
彼らのここまでの経緯が本当の話なら、流石にちょっと気の毒だ。
ミアさんも人気の探索者さんだと伝え聞いているし、真面目にプロ探索者していた彼らにしてみれば、遊びで参加したイベントが原因で国外へ行く羽目になるなんて、とばっちりもいい話である。
そして日本に送り込まれた理由が「現地で実物を見たことがある」その一点でしかないのだとしたら、僕としては多少なりとも融通を利かせたくもなった。
同志だというのならなおさら、優しくするのが当然である。
「ミアの奴は、どうもエルフの集落に夢中らしいが、俺達は妙にカノンって娘が言ってた謎の売店が気になってな。こっそり探してみることにしたんだよ。もちろんミアには黙ってな」
「アホらしいって、決めてかかってたからなぁミアのヤツ。でも、見つけちまったからには、俺達は気になる。本当にあるのか? そのガチャってやつ?」
「ああ、あるよ。でも今品切れ中で……」
そう言いかけた松林君だったが、僕をチラリと見る。
視線に気が付いた僕が軽く頷くと、松林君は不敵に笑って、苦労人のクラスメイトにこんな質問を投げかけた。
「ああ……でもお客さんたち運がいいね。これから仕入れに行くところなんだ。どうだい? お客さんたちも一緒に?」
松林君の問いに、コール君とブロック君は何事だと顔を見合わせていた。




