第406話舞闘祭の
舞闘祭は滞りなく終了した。
その結果は、意外というわけでもなく、ひどく順当だった。
僕は浦島先輩と桃山君の三人で観客席から表彰式を観戦していた。
観客席からも見えるよう、巨大ディスプレイに映し出された顔には正直ほとんど見覚えがあった。
「うーん……生徒会がやっぱり上位みたいだ」
「それはそうでしょ。レベルが違いすぎるもん」
そして魔法使いの部で1位を取ったのは――
「いやっほー! アイアムナンバーワーン!」
太陽のような笑顔で腕を突き上げて、優勝のコメントを残しているレイナさんはあまりにも順当に優勝をかっさらっていた。
こりゃあミアさんが荒れそうな話だが、他を寄せ付けない圧倒的な実力を見せつけても、レイナさんなら一切不審に思われることはなく、素直な賞賛の拍手が彼女に注がれていた。
「レイナさん容赦ないなぁ」
僕としては、バトルロイヤル中にクラスの有望株である月読さんと天音さんが、エールを送り合った直後に、荷電粒子砲の光に消えた姿が一番の衝撃だった。
激しい戦いだったとしみじみ頷きながら拍手を贈っていると、浦島先輩は当然だと肩をすくめた。
「そりゃそうでしょ。せっかく鍛えたのに、ここぞという時に使わないと」
「あのぅ……拙者の立つ瀬がないので勘弁してほしいんでござるけど?」
そしてリタイアした桃山君がなんとも言えない表情でポップコーンを齧っていたけど、僕と浦島先輩はすまんと生暖かい視線を向けて桃山君をねぎらった。
勝っちゃってもよかったとは思うんだけど、直前に最大火力をぶっ放してきた僕としては、こんなもの人類にぶっ放していいものなのかという葛藤はわからないではなかった。
ただ、だからこそきっちり勝てる力で、当然に勝ってみせるレイナさんを流石だと思うのも本当である。
チャンスを逃さない嗅覚とでもいうんだろうか? そういうところやっぱり頭一つ抜けてるなとそこは尊敬したい。
ただ魔法使いの方は納得だったが、戦士の優勝者は本当に意外な人物だった。
「やぁやぁ、ありがとう! 大変光栄です!」
フラッシュの中で、皆の注目を一身に浴びている人物がいる。
なんと優勝したのは、生徒会会計長 烽火賢治氏その人だった。
そんな彼を画面越しに眺めながら、僕はナルホドナーと呟いた。
「生徒会なら仕方がない。でも……生徒会って運営に回っているんじゃないんです?」
そう言えば生徒会長や副会長はいなかったなと疑問に思って尋ねると、浦島先輩はうーんと唸った。
「基本は運営側のはず。だけど強く希望したら参加できるみたいだよー? まぁ学内イベントだからねー。融通は効くでしょ」
「そりゃそうですね」
「でも生徒会に入るような生徒は運営の方で評価されたがる人が多いはず……なんだけど、正直今年は目立って選手が多いよね」
「そういえばそうですね」
「そうでござるな。エルフの使用率がめちゃくちゃ高くて驚いたでござる」
「でしょ? でも生徒会長がそんなことするって話も聞いてないんだよねー」
桃山君も頷き、浦島先輩は困惑して唸る。
どうやら例年は少ない生徒会参加者が、今年に限っては大活躍だったみたいである。
指導した身としては、素直に嬉しい。
彼らは教えたことを存分に生かして、大会を盛り上げてくれたのは間違いなかった。
「去年はもっと生徒の実力を測るイベントって感じだったんだよ……でも今回は……」
「もっと別の目的がある?」
「……そんな感じあるよねぇー」
もちろん、疑わしい筆頭である僕が何か仕掛けたわけじゃないので念のために言っておく。
生徒会の人達が手に入れたテイムモンスターという力を試してみたかったというのがありそうな話なんだけど、その代表格の烽火先輩が今、マイクを持って何か話そうとしているんだからネタばらしも近そうだった。
巨大ディスプレイに映し出された烽火先輩は、ちょっとビックリするような人当たりのよさそうな笑顔を浮かべていた。
「あー……今回の舞闘祭。未だかつていない大会になったと、誰もが感じていることだろうと思います。しかしこれらすべては、我々が運営している同好会、『セントエルモの灯』の独自の研究によって新たに発見されたスキル、技術を基にしたものであります。そしてこれらを駆使すれば、ダンジョン探索は一段階上のステージに進む――本日はそれを証明する結果を示すことができたと確信しております」
そんな宣言におおーっと、会場が湧いた。
そして上位に名を連ねている生徒達が美しいエルフ達を伴って彼の前に並んだ。
「彼らも、同じ同好会に所属しているメンバーです。我々が用いているのはテイムというスキルで、ダンジョンのモンスターを使役しています。このエルフ達もダンジョンの中にいるモンスターです……そしてもちろん彼らのテイム条件もすでに解明されているのです」
そして更にざわつきが大きくなる。
動揺と言っていい右往左往をしばし眺めていた烽火先輩はそれが収まるのを待ってから、ゆっくりと続きを語り出した。
「そして我々には、希望者にこの情報を開示し共有する用意があります。条件はただ一つです。『セントエルモの灯』に加入すること。それだけです。皆様もぜひ一緒にダンジョンの謎を解き明かそうではありませんか!」
キーンとマイクはハウリングして、逆に観客は静まり返った。
ただ声よりも、確実に熱のこもった視線は彼らに一身に向けられている。
烽火先輩は視線を受け止めた上で、高らかに宣言した。
「すべては――ファイアーボールヘッド氏のご協力の賜物です! セントエルモの灯は皆様を祝福します! ご清聴感謝します!」
だがそう締めくくられた瞬間、さすがに僕の背筋に寒いものが走った。
――いやいやあの会計先輩、本当に何言ってるんです?
そして知識の独占というよりは、ファイアーボールヘッドを妙に持ち上げるスタイルに、僕の頭の中の混乱は深まった。




