第405話戦う草薙君
「……お前のことは聞いているぞ? あの御方に敬意を払わない愚か者……」
「何の話だ?」
「ブラックリストの話だ! さぁ行っておいで! ティファニア、キュルケ! 合体魔法! イフリータ!」
草薙君と生徒会の先輩の試合が動いた。
エルフが精霊に魔力を与えると、精霊は美しく大きく燃え上がり、そこからさらにエルフ自身へ憑りつくように融合し、その肉体を激しく燃え上がらせていた。
「おお! すご!」
やり方は、自分で編み出したのだろう。やっていることは憑依に近く、爆発的なパワーアップを実現している。
モンスター同士の合体とは、また面白いことを考えたものだった。
攻略君も感心して、そんなモンスターにコメントを残していた。
『いいね。精霊の扱いに親和性が高いエルフと、精霊モンスターの相乗効果というやつだ』
へーそういうのもあるのか。
モンスターを複数使役することでのシナジーか……こいつは中々面白い試合になりそうだ。
対する草薙君は剣を構えて真っすぐ走り出し、彼の精霊もまた姿を現した。
日本画に出てくるような龍の姿をした闇属性の精霊は体をうねらせ、草薙君と並んで飛んで行く。
だが、エルフと精霊のコンビの相乗効果は、火力面で上位精霊を凌駕しそうだと、僕は目を細めた。
「アレは……大丈夫かな? 草薙君?」
『ピンチの原因が、君の干渉の結果なのが、いい味を出している質問だ』
ごもっとも。
『だけど負けるとは限らないけどね』
「へぇ?」
嫌なところを突きつつも、攻略君の意味ありげな言葉に、僕は黙ってその勝負の行方を見守った。
「行くぞ! 存分にこの力を振るわせてもらう!」
先輩の叫びで、解き放たれたエルフの炎はステージを丸ごと包み込む津波となる。
まともに喰らえば意識は刈り取られて、それで終わりだろう。
勝負は一瞬だった。
「!」
僕らの目の前で襲い掛かる炎は闇に阻まれ、綺麗に受け流される。
炎にぶつける様に解き放たれた闇はドーム状に一気に広がって猛火を一瞬だけ押しとどめ、拡散させた。
そして僅かな動揺の隙を見逃さずに、草薙君の斬撃が見事テイマーを捉える。
直前まで燃え盛っていた炎は、閃光に両断されていた。
「……っ!」
切り裂いたのは草薙君の斬撃に光の魔法を乗せた一撃だ。
闇の精霊が展開したフィールドの中で、彼の光が一層力を引き出され、最後のその一瞬まで研ぎ澄まされた一閃は、まさしく閃光のようだった。
テイマーの先輩は、驚愕の表情のまま崩れ落ちる。
それは今の一撃が致命傷だったという確かな証拠だった。
「グフッ……無念。セントエルモの灯に祝福……を」
「はぁ……はぁ……はぁ……セントエルモの灯? ……いったいなんなんだ……」
ホントになんなんだろうね?
しかし今の一撃はすごかった。
精霊に頼るだけじゃなくて、ともに強くなろうとしたからこその一撃だったのだろう。
生徒会の先輩はもちろんだが、クラスメイトの努力の成果を確かに見た戦いだった。
「草薙君も頑張っているなぁ」
皆工夫しているんだなと改めて見せつけられた思いだ。
そう言う意味で言うと、鵜呑みにすることが多い僕はあまり胸を張れないだろう。
「うーむ……僕も頑張んないとなぁ」
「え? そういう感想? ワタヌキ後輩、向上心高すぎやしない?」
浦島先輩がポップコーン片手に驚いていてちょっと恥ずかしかった。
「いや、大したことしようってわけじゃないですよ?」
つい口に出してしまったか。
だが、目立つことをしてしまったのも事実だし、頑張ってみようかななんて。
目下最大のイベントがまとめて終わってしまうのだし、かねてより考えていたネタをもっとやってみるのも悪くない。
まぁ、新作のゲームもいくつかチェックしているから、その発売も待ちつつだが、楽しい時間が僕のモチベーションを底上げしてくれるのならやってやれないことはないはずだった。




