第404話大会を観戦しよう
色んな意味で落ち着きがなくなった観客席は良くも悪くもにぎわっていた。
とはいえ舞闘祭は順調に進み、完全に参加しそびれた僕らは生徒の方ではなく、一般向けの観客席に座っていた。
でっかいポップコーンとコーラを片手に、僕と浦島先輩は完全に観戦気分だった。
「いーですね。新しいスタジアムサイコー」
「そうだねぇワタヌキ後輩、学校の設備とは思えないよ。スポーツの誘致でもするのかなぁ?」
「どうですかねぇ。格闘技なんてもってこいでしょうけどねぇ」
しかしスタジアムはすごく綺麗で、思っていた10倍広い。
もともと山の中に作られた学園なのだが、何もない広大な敷地を存分に生かし過ぎたスタジアムだ。一体なんでこれを作ろうと思ったのか、是非とも発案者に聞いてみたいものだ。
そして、主に僕のせいなんだけど、これだけ広いスタジアムでも十分見栄えがする派手なバトルが展開されていて、イベントとしても純粋に面白かった。
予想外のトラブルで予定を早めに切り上げてしまったが、会場の雰囲気はおおよそ堪能できた。あの後予定通りにイベントが進行したかも怪しかったし、早期撤退は賢明な判断だったと言える。
僕は隣で楽しそうに試合を眺めながら、バケツサイズのコーラを啜る浦島先輩にお詫びだけ入れておいた。
「なんかバタバタ帰って来ちゃいましたね。すみません先輩」
「いいよいいよ? 会いたい人には会えたしさ! あずにゃんと私も連絡先交換しちゃった♡」
「……あずにゃん。そう言えばそんな風に呼んでいましたよね」
僕は首を傾げると、浦島先輩はうんと頷く。
「店長さんのニックネームだよ。東音子で通称あずにゃん。テストに出るよ?」
なるほど改めてそのニックネームを聞いて、僕は味のある響きを噛みしめていた。
「あずにゃん……どこか心が温かくなるような響きですね。今後は心の中であずにゃん店長と呼ばせてもらいましょう」
「あっはっはっ。御本人恥ずかしがってるみたいだからほどほどにね?」
僕はわかっていますよと頷いた。
そこはわきまえていますとも。
僕としてもリスペクトしたいと思っているので、あずにゃん店長とは今後も仲良くしていきたいところだった。
しかし今日は、刺激の強いイベント目白押しで、ボリューム満点だ。
桃山君の活躍は見逃してしまったけれど、本戦は始まったばかり。
予選を終えて、本選に進んだ実力派たちが熱い戦いを繰り広げていた。
僕が何となく目を向けた試合は、クラスメイトの草薙君の試合で、彼もまた上位精霊と共に舞台へ上がっていた。
対して相手は先輩らしく、どうやら生徒会のメンバーのようだった。
「いけ! ティファニア! キュルケ!」
名前を高らかに叫び、呼び出したのはエルフと真っ赤に燃える炎の精霊だから確定である。
しかしやはりモンスターを呼び出して戦わせている姿を見ると、僕なんかはこう思わずにはいられなかった。
「……ポ〇モンバトルだ」
「いや方向性としてはモンス〇ーズじゃないかな?」
テイムはそれなりに広まっているはずだが、まさかこの舞闘祭で出して来るとはみんな思い切ったことをするものだ。
審判の判定は――あ、凄い微妙そうだ。
きっとどうすればいいのかわかんないうちに前例が出来ちゃって止め時を失ってしまっているに違いない。
しかし止めない方が、きっと面白い。
事実、二体のモンスターの力は学園の生徒とは一線を画していた。
スタイル抜群の美しいエルフから迸る魔力も、グラマラスな女性型精霊から吹き上がるような派手な炎も、舞台映えする絢爛さで見ごたえ抜群だった。
「……というか生徒会の先輩。モンスターがスタイル抜群ですね」
「彼の想像力がそうさせたんだよ。うん。……ネーミングセンスがいい。スカウトしたいくらいの逸材ね」
「確かに……撮影しておきます?」
「もうしてるけど?」
当たり前じゃん?と首を傾げる浦島先輩に、なるほどと僕は頷いた。
そんな他愛ない会話をしている間にも、生徒会の先輩はエルフと精霊を淀みなく同時制御し、草薙君へと猛然と襲い掛かった。




