第392話予選はバトルロイヤル
探索者専門学校の生徒数はかなり多い。
舞闘祭は魔法使いの部と戦士の部とに分かれ、更に希望者のエントリー制を採用していた。
それでもほとんどの生徒が参加するため、予選に採用されたのは、巨大な舞台を使った、複数人によるバトルロイヤル形式で行われることになった。
まだ出番が先の、月読 カノンは戦士の部に出場する二人の様子を見にやって来ていた。
「勝ち残ったら、エキシビジョンマッチと同じ形式の1対1ね。まずは乱戦で生き残らなきゃいけないけど、運も絡んできそう」
誰もが本選を目指し、必死に腕を磨いてきた面々ばかりに違いなかった。
そんな中で勝ち進むのは簡単なことではない。
カノンの言葉に、草薙君は「そうだな」と頷き、しかしどこか余裕を持った態度を崩さない。
「でもここで勝ち残らなきゃ、今まで頑張ってきたかいがない」
「……けっこう余裕がありそうね」
「余裕なんてないさ。ただベストを尽くすだけだよ」
「……そう。応援してるわ」
「そういう君もかなり落ち着いているように見えるが? そう言えばマキはどうした?」
そして草薙君の傍らに控えていたハバキリ君がそう問いかけ、カノンは軽く肩をすくめた。
「自分の戦いに集中したいんですって」
「そうか……」
とはいえ、天音さんの気持ちはカノンにもよくわかった。
実際、舞闘祭は探索者としての未来を決める重要な場所で、必死なのは彼女だけではないだろう。
「草薙君、自信のほどはどう?」
あえて気楽に振ってみたカノンにニコリと爽やかに微笑む草薙君は大きな自信をにじませていた。
「もちろんあるさ。……頼りになる相棒もいるしな」
「……」
彼の周囲を不可視の気配がグルリと回るのを、カノンは感じる。
それは彼の相棒である精霊、オロチの気配で間違いない。
闇の精霊オロチは、確かにパーティの中で最も力のある精霊であることに疑う余地はない。
その力は、おそらくあのガチャから排出される精霊の中でもトップクラスだろう。
龍をかたどったこの精霊が、たとえ格上の先輩探索者を相手にしようとも、そう簡単に負ける光景はカノンには想像できなかった。
「よし、そろそろだ。じゃあ行ってくる」
「ああ。じゃあ、運が良ければ本選で会おう」
「もちろんだ。負けるなよ?」
「当然だって」
「じゃあ私は、観客席で見てる。怪我しないようにね」
カノンはチームのリーダーとパーティメンバーを見送って手を振る。
ただ声が聞こえないほど距離が開いたところで、ポツリと心配が顔を出した。
「……負けるはずないのよね」
言葉通り、カノンも生半可な相手には負けるわけがないと思っていた。
仮に、売店で精霊の事に気が付いた生徒がいたとしても、あのオロチに匹敵する精霊が沢山いるとも思えない。
だが、頼もしいはずの二人を見送っても、カノンの脳裏には言い知れぬ不安が消えることはなかった。




