第390話イベントを楽しむ
激しいシャッター音が巻き起こる。
様々な趣向を凝らした装備に身を包んだ先輩探索者の方々は今回はイベント参加者でもある。
そんな彼らはダンジョンの入り口前、撮影会場で天使を囲んでいた。
囲みの中心では、空中にふわりと浮遊しながら、天使がキメキメにポーズを披露していた。
キラキラエフェクトが目に見えるようだ。
そしてその動きの全てが計算されている節があるのはきっと気のせいではないはずだ。
「……ポーズが様になりすぎている、あまりにも」
僕は自分のテイムモンスターの努力の賜物なのか、意外な才能なのかわからない光景に呆然として呟いた。
今回はカメラマンもやっている浦島先輩は、すでに会場を廻って、目についたレイヤーさんの撮影に成功し、ホクホクした顔で戻って来た。
「彼、才能があるね。動きの端々に華がある。あの子も広報部に入れない?」
「……広報部初耳なんですけど?」
「あれー? 言ってなかったっけ?」
「ひょっとして……テイムモンスターを部署で管理してます?」
「……数が多くなってくると、どうしてもね?」
「流石です先輩」
いつもながら、効率的な先輩だ。
そして浦島先輩の言う通り、確かに天使君は大変な大盛況で、会場の皆様方も喜んでくれているらしい。
今回のコーディネートは、実は東雲さんちの宣伝もかねていた。
様々な形の東雲式魔法杖はきっと目を引く。
天使のこの人間離れしたかわいらしさと、店長さん特製衣装で注目が集まってくれれば思惑は大成功だった。
「なんか浮いてる……そんなアイテムが発掘されてたのか? 超欲しい」
「衣装もクオリティえぐくない? 銃も本物みたいだし…… 写真! 撮らずにはいられない!」
「目が離せない……これが――恋?」
はい。違いますね。
今回会場にはイベントということもあって、実用性とデザインを兼ね備えている装備を付けた探索者の方々が沢山いて、その完成度は驚くほどに高い。
そんな方々の想定以上の熱のこもった様子に、僕はやはりこの場所を選んだのは正解だったと確信を深めていた。
いい感じに僕ら周辺が熱を帯びてきた頃、アナウンスが響き渡った。
カメラから顔を上げると、特設のステージの壇上に登る店長さんの姿が目に入った。
「さて、ではお集まりいただいた、紳士淑女の皆様。ダンジョンゲートを解放いたします。こちらでは武器の使用、モンスターの討伐が可能です。発掘されたアイテム、新開発の武器など、お試しも可能ですので、周囲には十分にお気を付けください。それではルールを守って、楽しんでいきましょう!」
店長さんの宣言で、パチパチと拍手が巻き起こり、腕に覚えがあるオーラの違う方々が動き出す。
中には企業のロゴを装備に張り付けているようなプロの探索者も混じっていて、僕らはこのイベントがただのコスプレイベントではないことを、肌で感じ取ることができた。
僕はなるほどと、そんな最新の探索者さん達を眺めて思わず呟いた。
「ここからが本番みたいですね。これ絶対桃山君喜ぶやつですよ……」
「……だよねぇ。彼の無念のぶん、沢山写真を撮って帰ろうじゃないか」
「そうですね! いい写真をたくさん撮りましょう!」
僕は頭の炎を燃え上がらせて、カメラを持つ手に力を込めた。
今頃、桃山氏は舞闘祭がんばってるだろうか。
彼も今までの探索で武術家として目覚めてから熱心に訓練を続けている。
そもそも初期からして、鬼相手に延々斬り合うとかいう戦国乱世も真っ青な修行に片足を突っ込んでいた男だ。
今も修行は継続中だろうし、だとするとかなり仕上がっていることだろう。
彼がどうしたいのかはわからないが、どのような道を選ぶにせよ、桃山君の思う通りになるだろう――僕はぼんやりと、そんなことを考えた。
でもそれはともかくだ……。
「あ、すみません撮影いいですか?」
「「はーい」」
イベントは楽しまねばね。
僕らも自慢の装備を、ここぞとばかりに披露することに余念がなかった。




