第389話控室にて
「うっひょー! 写真以上にかわいらしい! まるで天使のようなかわいさです!」
そりゃあ。天使みたいなもんですもん。
いや、しかし「うっひょー!」って言ったな、この店長さん。
だがまぁうちの天使はかわいいからね、仕方がないか。
天使をひとしきり褒めたり撫でたりしながら、僕らは控え室に案内された。
「はぁ……はぁ……で、ではここで準備してください。また後でー♪」
手を振りながら去って行くテンション高めの店長さんを見送って、僕らは一旦ホッと一息ついた。
「なんか……思ったより大イベントっぽいですね」
「そうしたのはたぶんワタヌキ後輩なんじゃないかなぁ」
「ハッハッハッ! そんなわけないじゃないですか、浦島先輩。じゃあ、準備しましょうかね?」
「……そだね。あの、伝説の『あずにゃん』に会えてもう来て正解だった感じあるし、まったり楽しもうかな?」
……あずにゃん? ああ、東 音子だからか。
「でもさ、今回はいつものフルフェイスのヘルメットとジャケットで行こうかなと思うんだよね」
「あ、そうなんですか?」
あずにゃん……いやなんでもない。
浦島先輩にしては思い切りに欠ける気がしたが、考えてみればそれほど準備時間がなかったから仕方がないか。
「うん。探索者のコスプレっていうなら、あれも画期的なところが多いと思うんだよね。それにワタヌキくんは、いつものやつで行くよね?」
「あ、はい。手始めにファイアーボールヘッドですよ?」
最早これしかないと思っているが、本日は当然もう一段階変身を残しているので、後で頃合いを見計らって披露する予定だった。
しかし、僕らのコスプレよりも優先すべきことが今回はあった。
「でもひとまず……先に主役の準備をしましょうか」
「無論……メイクはまかせてもらおうかしら?」
あずにゃん……ではなく東音子氏の最重要リクエストだ、無下にもできまい。
今回のコスイベントの主役は僕でも先輩でもなく、ここにいるキューピッツの激しい選抜を潜り抜けた、精鋭天使である。
「な、なんかコワイでち?」
「大丈夫! 怖くないよ?」
「動かないで? そうすればすぐに終わるからね?」
「やっぱなんかコワイでち!」
そうかな? いやいや怖いことなんて一つもないよ?
僕はせっせとアイテムボックスに用意しておいた衣裳を天使に渡す。
軍服を意識した青い衣装に天使ウイング。そして頭にはワンポイントのベレー帽を一つ。
「そして……マスケット銃を一本……完成だ」
ここにバトルスタイルのキューピッツ制服は完成した。
そして浦島先輩にヘアセットと軽いメイクを施された天使は、まるで美しさを倍増させるオーラでも纏ったかのようだった。
「「おおー」」
「カッコイイでち?」
「「カッコイイ!!」」
マスケット銃を構えてどうだとポージングする天使は、めちゃくちゃ可愛かった。




