第387話舞闘祭
初めて間近で見た、完成したばかりの地上スタジアムは、学校の設備というにはちょっと規模が大きすぎた。
【この中では戦闘行為によって死傷することが無くなります。探索者のみなさんはよりダンジョンに近い環境での模擬戦が可能となります】
担任AIから、簡単なスタジアムの説明を受けてはいたものの、スタジアムの中に入った生徒達は皆、驚きの表情を浮かべていた。
そんなサプライズから、本年度の「舞闘祭」は幕を開けた。
従来の舞闘祭は自分の愛用武器を模したゴム製の武器を使い、先に致命打を3本先取した方が勝ちのルールだった。
しかしこのスタジアムが完成したことで、状況は大きく変化する。
本物の武器を使った、本当の戦闘。
スキルも魔法も使い放題の戦いは、意識を失うことで終了する。
それだけでも革新的な変化である――はずだった。
しかし今年の舞闘祭は、本当に何もかも違っていた。
「こぉい! 炎の精霊『じっぽー』!」
激しい炎の中から、蜥蜴のモンスターが飛び出す。
「こっちもいきなさい! 草の精霊『ふっしー』!」
更に呼び声に答えて、めきめきとツタが伸び、巨大な花型のモンスターが召喚者を包み込んで守りを固めた。
お披露目のための生徒会による最初の試合。
エキシビジョンマッチに突如現れたモンスターに会場はざわめき、生徒達は熱狂した。
「な、なんだあれは! なぜモンスターが!」
「操ってる? そんな話聞いたことが……」
「というかいいのか? モンスターの持ち込みなんて!」
若干混乱が見て取れるが、モンスター達は術者の指示に完全に従っていて、試合としてはきちんと成立していた。
そして初お披露目の中、いきなり中止にするのは、前例がないゆえに止めることに迷いが生じた。
最初の二人は、してやったりという風にニヤついているのが目についた。
「結構……売れてたのね。あの売店」
月読 カノンはさびれているとばかり思っていた売店に対して、ちょっと嬉しいような、しかしかなり悔しいような複雑な感情を湧き上がらせていた。
そして彼女の傍らで驚愕しているのは、カノン達よりもはるかに場数を踏んでいる探索者である、海外勢だった。
ミア達は精霊が売店に売っているという、とっておきの情報を開示したというのに、いまだに信じていなかったが、精霊同士の戦いに強烈な違和感をいまだに拭いきれてはいなかった。
「ひ、非常識……! こんなのどう考えても異常でしょ……」
「モンスターバトルだぞ! なんてこった! てっきりゲームの中だけかと思っていたが。流石はジャパンだ! 未来に生きてんな!」
「全くだ! だが俺は断然エルフが気になる! そもそも階層を探しても美女のモンスターなんて出てこねーぞ! こんちくしょう!」
「よし……私には味方はいないと認識したわ、くそったれ」
今回試合には参加しない方針らしい留学組は、どうやら男性陣の方が頭が柔らかいらしかった。
カノンも時間をかけて慣れていなければ、ミアと同じような反応をしていただろう。
そしてカノン達も、知らず知らずのうちに気が付けば非常識な側に回っていたという事なのだろう。
溜息をつき、おそらく今回の異変に無関係ではないはずの人物を探す。
しかしいくら探しても、会場の中に探しているその姿は見つからなかった。
「いやいやよく来てくれましたねぇ。歓迎しますよぉ!」
その頃、その探していた人物はといえば―――。
「「よろしくお願いしまぁす!」」
彼らはコスプレ会場で、どこかニチャっとした笑みに迎えられていた。




