第385話家族総出のプレゼント
「動いてます! 動いてますよ!」
「おおおおお! 巨大ロボットやん!」
興奮して声を上げる東雲さん達に僕は手を振って応えた。
炎は僕の頭と同様に見た目が変わるエフェクトだが、こういうロマンはいくらあってもいい。
全体的に背の低い曲線を多用したフォルムの鎧は、聖騎士専用を銘打つだけあって、白と金色のカラーリングが映えていた。
右手を持ち上げて確認。 左手を持ち上げて確認。
自分の手足の延長のように動く東雲式機動甲冑は、体感するとものすごく不思議な感覚だった。
「じゃあ次、歩きます」
「はい! お願いします!」
東雲さんの指示に従って、右足を出す。
ちょっと短足気味だから変な感じだが、安定感はあった。
交互に足を出すと、歩くことに成功。
足が一歩踏み出されるたびに工場から歓声が上がり、どうやらギャラリーも更に増えてきているようだった。
「OK! 撮影も完了です! いいですね!」
「思ったよりもロボットやないですかこれ!」
東雲社長さんも楽しんでくれたところで、実験はこれくらいにしておくとしよう。
僕は元の位置に機動甲冑を戻し、空間転移で機体の外に出た。
そして改めて外から全体を眺めると、自分で動かしたという実感が遅れて湧いてきた。
最高である。
「これは……思っていた以上にアガるな」
これならもう、いつでも使える段階だと確信した僕は、続いてついでに相談しないとと思っていたことを思い出して、東雲さんに訊ねた。
「そう言えば、東雲さん達が作った試作品の銃型杖、他にも見せてもらっていい?」
「ええ、いいですよ。必要なら持ってっちゃってください」
「! え? いいの?」
「はい。構いませんよ。ああでも、使用はダンジョンの中だけにしてくださいね」
あまりにあっさり言うので驚くと、東雲さんは割と真剣な表情で付け加えた。
「真面目な話、ダンジョンでの使用データは現状いくらあってもいいです。出来ればどの辺りまで使えそうか、どの種類でも同じ威力が出るのか、そこのところ本当に大事ですから、是非ともデータが欲しいです」
「ああ、そういうのなら……協力できるかも」
「ホントですか!?」
「もちろん」
というか至れり尽くせりでこっちこそ申し訳ないくらいだ。
東雲さん達がなにかする時は応援しなきゃなと考えていると。さらにサプライズは続いた。
東雲さんがタマを一瞥すると、布に包まれた物を持って彼はこちらにやって来た。
「ああそれと……起動のための鍵を渡しておかないと」
「鍵?」
「はい。まさに鍵ですね」
差し出された布の中から出てきたのは、ぞっとするほどに美しい青い片刃の剣だった。
「祖父、東雲 シンベェ作 鍵剣 シノノメです!」
「おお……」
そうか……ついに祖父まで出て来たか……。
素材はオリハルコン合金だろう。新しい製法を組み合わせ、高い技量で鍛えられた剣は染みもゆがみもない。
そして素人目にも、息を呑むほどの迫力を感じる一振りだった。
「……至れり尽くせりすぎない?」
こんないいものを貰っていいの?とそう思ったが、東雲さんはもちろんだと気前が良すぎた。
「必要な装備ですよ。それにです。これは起動キーではありますが、オリハルコン製のよく出来た剣でしかありません。今の装備では強すぎる時にサブウエポンとして使ってもらえばいいと思います。ではお納めください。随分と先生自身に負担をかけてしまいましたが、私と桃山さんからのプレゼントってことなので」
力強く差し出されるそれを僕は受けとって振り返り、改めて機動甲冑を見上げた。
「うん。ありがとう。ありがたくもらっておくよ」
こりゃあ、お披露目はかなり頑張んなきゃ、どうにも格好がつきそうになかった。




