第384話起動実験
「あ! お父さん! 機動甲冑の作業中にブザーはやめてって! メッチャビックリするやんか!」
「あ、お父様、お疲れ様です」
まだ中で作業中だったらしい東雲さんと、刀の精霊タマが顔を出した。
「機動甲冑の安全面に最大限配慮しただけですー! あとお父様と呼ぶんやない! 社長さんや、タマ!」
「申し訳ありません……」
「タマきゅん! 謝らんでええって! お父さんも細かいわ! 私が生み出した最高傑作やで!? 孫同然やんか!」
「いーや、お前の接し方は子どもに対するそれやない! こんなイケメンにしといて!」
「そりゃぁ……まぁ? 愛している以外の感情が思い浮かばんけど?」
「言うやん蘭ちゃん……だが忘れんな? タマには俺も手を貸した……つまり! 俺の子供でもある!」
「……っ! ほとんど私が作りましたぁ! アドバイスチョットしたくらいやんか!」
なんか東雲さんファミリーの中で、タマをめぐる複雑な関係性が見え隠れしているな。
がんばれタマきゅん。
思わずヒュンってしちゃうけど、陰ながら応援している。
とりあえず軽い助け舟として、ここにいますよと手を振ってみると、東雲さんも、ようやくこっちの存在に気が付いたようだった。
「あ、先生! お疲れ様です!」
「お疲れさまー」
「どうです! 見てくださいよ! いい仕上がりでしょう!」
東雲さんの作品を紹介する態度からも自信のほどがうかがい知れる。
実際その鎧が胸を張るに値するだけの出来栄えなのは一目瞭然だった。
「いや、すごいよ。感心した。……地下で一度組んでいた時点で良く出来ているつもりだったけど、全然違うじゃない。さすがプロの仕事だわ」
「「いやぁ、それほどでもぉ~」」
うーんよく似た親子。仲がよさそうだ。
そして、東雲社長は僕の肩をがっちり掴んで、少々荒い息で僕の顔を覗きこんだ。
「な、なんです?」
「じゃあ……さっそく始めましょうか? 昨日から楽しみで寝られんかったんですよ。私らじゃ、こいつをまともに動かせんのです」
「ああ。ちょっと、初動がキツいかもしれませんね」
搭乗型にするとどうしても引き出される魔力がある。
まぁこいつに限っては無理やり動かす方法がないわけではないのだが、それでも一定水準以上の魔力がないとキツいことになるだろう。
「……まぁ小難しいことはいいですね。僕も正直動かしたくてたまらないですし」
「うんうん。無理もないですね……ああ、でもその前に、こいつの呼び方決めませんか?」
「さっきの機動甲冑っていうのは?」
「ああ、すんません。便宜上そう呼んでたんです」
「かっこいいじゃないですか。じゃあ正式名称は「東雲式機動甲冑」ってところですか」
「それはさすがに……まずくないですか?」
「いいじゃないですか。それに、これから商売するなら、分かりやすいのは大事でしょう?……じゃあ、始めましょうか」
僕らはニヤリと笑う。
待ちきれないのはお互いさまで、こちらは家からコスプレしてきて、興奮具合が頭の炎に現れていた。
「今回の起動テストはハッチを開けて搭乗する形で乗り込んでもらいます。脱出ポットも一応ついてます。スイッチはそれですね。でもこれを使うと使用不能になっちゃうんで、本当に必要な時以外は使わないように注意してください」
東雲さんから軽いレクチャーを受けて僕は頷く。
「わかった」
「では閉めますね。実験の成功、期待しています!」
「期待に応えられるように頑張るよ」
ガチャンとハッチが締められると、内部のライトが点灯して、コックピットを照らし出す。
薄暗い内部は操縦室という感じではないが、もちろん動かす仕組みが存在した。
僕は深呼吸して目を瞑り、意識を集中して専用の魔法を行使した。
「……ゴーレムとリンクを接続。視界共有を開始」
その瞬間、ゴーレムの視界と僕の視界が連動して外の世界がクリアに見えた。
眼球カメラの動きもスムーズだ。
同時に自分の身体がゴーレムそのものになったかのような感覚が生まれて、機動甲冑は僕の感覚に従って起動する。
オオオオオ……と低く響く音は、この鎧の産声だった。
「「「おおおお!」」」
外から歓声が上がっているのがバッチリ聞こえる。
うーん僕も動くところを見たいなー、なんて思ったけどこればかりは仕方がない。
「……東雲式機動甲冑2号機 聖騎士型。起動実験開始します」
ちなみに1号機はパイルバンカーの方。
僕の頭の炎が燃え上がると、それに呼応するかのように激しく機動甲冑の眼球を燃え上がらせた。




