第383話注文の品は扉の奥に立っている
「……っ!」
友人の店長さんから送られてきた膨大な天使用衣装デザイン案を吟味して返信。
僕はファイアーボールヘッドの衣装に着替えて、外出の準備を整えた。
本日はちょっと遠出である。
空間転移を駆使して馴染みのある工場へやってくると、今日は強烈な金属音が、とても賑やかに響き渡り、僕を迎え入れた。
僕は今、ファイアーボールヘッドとしてここに居る。
待ち合わせの場所に向かうとメラメラ燃える頭は一発で発見され、目を輝かせた男性がこちらに駆けてくるのが見えた。
その男性、東雲社長は僕の手を取って握手した。
「おー! 来てくれたんやね! ワタ……いや、ファイアーボールヘッド氏。ようこそいらっしゃいました!」
「どうもです。今回は鎧の調整ありがとうございます」
「いやいや、ボクらも面白い仕事させてもらって。正直めっちゃありがたいです。娘はご迷惑かけていませんか?」
「いや、お世話になるばかりで……色々作ってもらっちゃって申し訳ないです」
そう言って頭を下げると、東雲社長はとんでもないと僕に詰め寄った。
「何言ってるんです! ガンガン投げてくださいよ! 最優先で承りますって! ……それに今回のやつもいい出来です、ビビらんといてくださいね?」
東雲社長は不敵に笑って、キラリと白い歯を光らせていた。
おお! いつもながら仕事が早い!
東雲社長はしかし好奇心が抑えられないようで、すでに話をしながら僕をそのスペースに誘導していく。
やや急ぎ足で案内されたのは、随分迫力のある見覚えのないぶ厚い引き戸の前だった。
「ちょっと待っててな! すぐ準備するから!」
「?」
東雲社長は、ものすごく楽しそうに言って、手元のリモコンを操作する。
すると暫くしてけたたましいブザーが鳴り響き、赤いランプがクルクル回り始めた。
「!!」
数秒後、扉がゴウンッと重い音を立てて左右に開き――僕はその姿を見た。
思わず目を見張り、体が震える。
巨大な純白の鎧は、地下で作っていた時とは見違えるほどの完成度で僕の前にその姿を現した。
しばらく言葉が出てこなかったが、感嘆のため息とともに、感想は自然とこぼれ出た。
「お、おおぅ……演出いいなぁ」
「わかる!? ロボット作るならやっぱ演出も大事かなって扉も作ってみたんよ……すごくない?」
「すごいです……って! これ扉ごと作ったんですか!」
道理で見覚えがないと思った!
そのすさまじい行動力に感心すると同時に、色んな意味でちょっと心配になってくる。
だが東雲社長は、当然だと胸を張った。
「そりゃ作るでしょ!? この後同じ型のゴーレム作るなり整備するなりするならスペース必要やないですか!」
「……沢山、作ります?」
「……え? 作らないんですか?」
そりゃないやん? という顔だけど、恐ろしいことを考えるよね。
そういうのもアリなのかーとある意味目から鱗というか、遠慮の壁が一つ壊れた気分である。
素材のグレードを落とした内部フレームを数揃えることはすでに可能だ。
外装をこっちで分業してもらえば、クオリティを保った上で、量産はすぐにでも可能かも?
なんてすぐさま想像した僕も間違いなく社長と同類だった。




