第378話なんか盛り上がっているのを横目で見る
ミアさんが草薙君達を協力者として選んだ意図を僕が予想することは可能だった。
なるほど、ミアさんは草薙君の精霊に目を付けたかな?
精霊の重要性に注目するとは、さすがというか魔法使いの嗅覚故なのかもしれない。
草薙君パーティは結局スカウトを承諾したようだ。
ダンジョンの入り口で見かけたハバキリ君は、少しだけ困り顔をしていた。
そして彼がパーティメンバーと話している不安そうな声は、僕の耳にも届いた。
「マキはクラン加入に反対するかと思ったが、よかったのか?」
「は? なんで反対? あのミア=ローズと組めるのに? そんなわけないじゃん」
「……そうか、レイナさんだけじゃなかったか」
「そりゃそうでしょ! 人気どころは押さえてるって。ミア様めっちゃ可愛いから! 一回グラビア見て欲しいよね!」
「……じゃあカノンは?」
「私は別に。自分より高レベルの探索者と潜るのは単純に勉強になりそうかなって」
「それはそうだな……」
ちょっと聞き耳なんて立ててしまったけど、うーん。そんな感じか。
僕としては、天音さんの幅の広い知識には特に驚きである。
僕は彼女の好きなジャンルにあまりアンテナは伸ばしていないが、そういうこだわりは嫌いじゃない。
この分じゃ、世界各国の有名探索者をチェックしてそうな感じだった。
そしてそのチェック済みのカリスマ探索者がやって来る時はいつも人のどよめきを引き連れていた。
一際視線を集めているクラスメイトのミアさんは、大きな帽子に杖というバッチリ決めた魔法使いスタイルで、目標階層を高らかに宣言した。
「さぁ行こう! 目指すは22階層!」
だがそれを聞いた草薙君達はギョッと目を剥いていた。
「い、いや。俺達はまだ最近15階層に到達したばかりで……」
「そうなの? もうちょっといけそうだって感じがしたけど……。じゃあ、私達メインでついてきなさい。まだルートは変わっていないはずだから、一気に行くわ」
「いや、それはあまりに危険だ! 舞闘祭だってあるんだし、もっと慎重に……」
「なんで? その舞闘祭っていうの、要は力比べでしょ? なら深く潜ってレベル上げた方がいいでしょ?」
「それはそうだけど……いきなり10階近くも階層を更新するなんてあまりにも無謀だ。俺達は足手纏いにしかならない」
「ふーん……私はそうじゃないと思ったから誘ったんだけど? 実力に見合わない階層でもたもたしている方が無責任でしょ。それとも自信ない?」
「……」
口ごもる草薙君に暫く視線を向けていたミアさんは、軽く笑って肩をすくめる。
そして彼らに背を向けて、そのままダンジョンへ歩き出した。
「……そう。買いかぶりだったかな? じゃあ私達は別の方法を考えるわ」
草薙君は悔しげに表情をゆがめて、そしてミアさんを呼び止めた。
「……っ! いや、待ってくれ。」
「なに?」
「俺達にも……挑戦させてほしい」
そう草薙君が口にすると、パーティメンバーはギョッとしていたが、ミアさんはすぐに振り返る。
「そう来なくっちゃ! さぁ行くよ!」
そして彼女は草薙君にいたずらっぽく笑顔を向けていた。
僕はそんな彼らを見て思った。
「……えー何アレ? 青春か?」
実にスポ根っぽい導入だと思う僕はきっと心がエンタメ一色である。
そして頭の中の攻略君は、他よりもさらに踏み込んだスタイルのミアさんを気に入ったらしい。
『彼女、いいね。入って早々20階層を突破しているペースといい、踏破に躊躇いがない』
「プロって話だもんね。大したもんだよ」
エルフに勝てていなかったけど、また挑戦するのかな?
草薙君達なら、精霊をうまく使えば、レベルで言えば十分エルフ達にも対抗できるかもしれない。
実際彼らがテイムしてる精霊はめっちゃ強い。なにせ50階層のより下のモンスターだし。
草薙君たち自身のレベルが追い付いていないから不安だろうけど、今の階層では敵が弱すぎて精霊達にしてみたら、まともに経験値にもならないはずだった。
僕は受付で入ダン手続きを済ませて、受付さんに提出する。
受付さんも盛り上がる彼らを見て、ニンマリ笑って感想をこぼしていた。
「いやー……なんかドラマみたいだなぁ」
「そうですよねー。あの熱意は見習いたいもんです」
「君も同い年だよね? 混ざらなくていいの?」
「無理ですねー。なんか……ジャンルが違う感じがします」
「……ジャンルとかある?」
「なんか、ある気がしますよね」
まぁ趣味嗜好の問題な気がするけど。ちょっと僕には向いてない。
いや、僕だって青春はしていると思うんだよ? でももう少しソフトタッチの方が好みだった。
「私としては……あんまり無茶はしないで欲しいんだけどね」
「本当にそうですねぇ」
受付さんは、心配そうに草薙君達を見ていたけど、確かに安全なのは大切である。
じゃあ僕は先輩達にモンスターの料理の仕方を教えにいこうかな?
見た感じ本格的な襲撃には準備をするだろうから、もうちょっとだけ時間はありそうだった。




