第377話トップ探索者の誘い
「はっきり言う!……この学校はおかしいわ!」
そんなセリフを聞いたのは、いつも通りの喧騒に包まれた教室でのことだった。
ダンッ! と机を力強く叩き、演説するのはミアさんだ。
昨日の今日ですさまじい元気だが、これが有名な探索者のバイタリティというものか。
彼女はポカンと自分を眺めるクラスメイトに向けて、いらだちを募らせているようだった。
「おかしいと思う人間はいなかったの!? 変なモンスター! 謎のショップ! そして極めつけはイカレた生徒会! どれ一つ取ってもおかしいでしょ! ナンセンスだわ!」
ダン、ダンッ!
まるで裁判所の木槌のようにテンポよく響く打撃音。机が可哀想なくらいに跳ねているのは見ている分にはちょっと面白い。
しかし対する周囲の生徒達の反応はとても鈍い。
そして主に彼女に語りかけられている草薙君パーティの反応も実にぼんやりしていた。
草薙君は曖昧な表情を浮かべ、歯切れの悪い返事を返した。
「おかしいと言われても……他を見る機会がないからなぁ。うちのダンジョンがこうというだけなんじゃないか?」
そんな言葉を皮切りに他の生徒も考えを口にしていた。
「ダンジョンは変化するっていうもんね……特に実害もないというか、入学の時よりすごく潜りやすくなって助かってるし」
「ああ、それは感じる。なんか最近便利になったよな。ダンジョン。生徒会の人も親切だよ?」
おお、おおむね好評だ。
生徒会の人達がその後も誠実に活動を続けている成果が出ているようで僕も嬉しい限りである。
そんな感慨にふけっていると、戸惑いを隠せていないハバキリ君が果敢にもミアさんへと話しかけた。
「便利になったのはいいことじゃないか。たまたまボクらに都合よくダンジョンが変化しただけかもしれないし」
「そんなわけないでしょ。私が見たどのダンジョンより変よこのダンジョン」
「……変じゃないダンジョンなんてあるのか?」
「ないわ! ないけど……それでも法則性はあんの!」
もどかしそうに震えるミアさんだが、生徒の多くはこの学校のダンジョンしか知らない。
その路線で共感を求めるのは少々無茶というものだろう。
まぁでも? ここより快適なダンジョンはないでしょうね。
なんせがんばりましたので。
僕は端っこで内心深く頷く。
効果的な前口上をあきらめたミアさんは草薙君一人に狙いを定めるとその顔を覗き込んだ。
「……なに?」
「まぁいいか……めんどくさい前置きはナシ。とにかく。あなた達に頼みたいことがあるの」
「俺達に?」
草薙君の鼻先に人差し指をくっつけたミアさんは、その通りと頷く。
そして彼のパーティメンバー全員の顔を―――特にハバキリ君と月読さんの顔を見回した彼女は、予想外のことを言い出した。
「そう。私達のパーティとクランを組まない? あなた達、このクラスで一番やるんでしょう?」
だがいきなりの提案にクラスは大いにざわつく。
メディアでしか見たこともないトップ探索者からのスカウトは、一般学生の中ではロマンの塊で、とてつもない爆弾発言に他ならなかった。




