第375話副会長の狙い
僕は蹂躙の一部始終を最前列で目撃した。
叩きのめされ、正座させられた粛清対象を馬上から見下ろして、副会長、如月静流は静かに口を開いた。
「さて……生徒会としてのお話はこれでおしまい」
どこにお話の要素があったんだ……っ!
と正座している全員が思ったのかどうかは知らないが、不満を口に出した人間は誰もいなかった。
「で……ここからは個人的な話をしたい」
だが続く言葉で流れが変わり、ビクリと全員の体が震えた。
「な、なんでしょうか?」
代表して班長と呼ばれていた生徒が口を開くと、如月副会長は先ほどまでの苛烈さを感じさせない軽さで頷いて、言った。
「私も仲間に入れて」
は?
全員の目が点になっていたことだろう。
実際仲間に入るも何も、今しがた壊滅的ダメージを与えられたばかりなのでは――そう思ったが、よくよく見てみると、集落自体へのダメージは驚くほど少ない。
(意図的に建物は避けて攻撃していた?)
そう言えば生徒会員にも重症者はいないし、手加減はしていたのかもしれない。
「ええっと……副会長は俺達を解散させるために来たんじゃないんですか?」
恐々と手を上げながら聞く生徒会員に如月副会長はコテンと首を傾げた。
「そんなこと言った? 今日の用事は真実の確認。さぼりとエルフの集落を秘匿するために一般生徒へ攻撃したと確認したからきつめに叱った。理解して」
「す、すみませんでした……」
「うん。それで、混ぜて欲しいのはエルフの集落の改造の方」
そしてエルフの里を見回す如月副会長は、眼が輝いているように見えた。
「ふ、副会長も住みたい……ということでしょうか?」
困惑交じりの班長さんの質問だが、別にそう言うわけではないらしい。
「住みたくはない。だけど……ここにレストランを出して欲しい」
だが彼女がそう口にした瞬間、僕は合点がいって表情を強張らせた。
この人、最初から企んでいたなと。
モンスター食レストランを諦めていなかった如月副会長は、売店グルメでは全然満足していなかったみたいだった。
「レストラン……ですか?」
「そう。この里の大きな木の天辺にレストランを建てて、そこでモンスター料理を出して欲しい。そうすれば、私もあなた達の企みに協力してもいい」
「し、しかし、モンスターは毒なのでは?」
「解毒の方法が発見されている。ダンジョン内の売店には、毒のない食材も売っているし、謎の売店にモンスター資材を持ち込んで解毒も可能。実験済み」
すでに試されていた情報に他の生徒会員達はどよめいた。
だが隣の僕を見て、その知識がどこから来たのか察したようだった。
「な、なるほど……やはりあの方の……」
「それでどう?」
「ちょっと待ってください……」
勇敢にも、一旦話し合いの中断を要求した班長さんは、他のメンバーと集まってコソコソと話し合う。
「どうします? モンスター料理なんてできますかね?」
「……やらなきゃ収まらんでしょう?」
「あ。私、実家が飲食店です。手伝いもしてました。モンスターはさすがに料理したことはないですが……」
「じゃあ、シェフで決定だ。売店が情報の出所だというのなら、問題はないはず……」
何やら僕をチラ見していたが、話はまとまったらしく、彼らはうなずき合った後、班長さんが全員の総意として伝えた。
「……分かりました。やってみます」
「素晴らしい。期待している。ああでも、生徒会の集会をあまりさぼりすぎないこと。それは今まで通りでお願い。手が回らないと思うのならきちんとやめることも視野に入れて引継ぎを済ませること」
「は、はい!」
「よし。では今日のところは一度地上に戻って。無力化した生徒も送り届けなさい」
「はい!!」
「では。解散」
如月副会長はコンコンと軽くユニコーンゴーレムのボディを叩いて合図すると、颯爽と去る。
僕はその背中を慌てて追いかけた。
ふと振り返ると一行が背後で胸に手を当てるポーズをとる姿がチラリと見えた。




