第373話如月 静流の制圧
正直に白状すれば、僕は副会長 如月静流という先輩をちょっと変わった先輩だと認識していた。
初対面でモンスター食をねだってくる食いしん坊なのだから、仕方がないと僕は思う。
しかし今やそれは、ただ単に好奇心が強いだけでは済まされない、度胸と思い切りの良さを証明するエピソードではないかと認識がアップデートされていた。
「さて……やろうか」
「え? やるって何を?」
「制圧」
まず僕は最初に冗談かと疑った。
だが如月副会長のあまりにもフラットな感情のない視線を目の当たりにした瞬間、不思議と冗談ではないと理解させられた。
「……なぜ?」
「一つ、生徒会の業務のさぼり。二つ、生徒会役員への勧誘と煽動。三つ、私的な理由による一般生徒への攻撃。――アウト」
「……」
如月副会長は言葉通り、自らのテイムモンスターを呼び出した。
空間を割って飛び出してきた鋼の馬は嘶きの代わりに、全身のライトを明滅させることで、戦意を表現する。
如月副会長は、愛おしそうに白い金属質なボディを撫で、その背にひらりと飛び乗ると、馬の背から優雅に微笑んだ。
「……それは建前で。この子を試してみたい。付き合ってもらえる?」
「建前とか言わなくていいので。お、お手やわらかに頼みます。彼らもまた自らの想像力に脳を焼かれた哀れな被害者に過ぎないのです……」
しかし僕はエルフを紹介した手前、せめて減刑をと嘆願した。
そうだよ、だって理想のエルフだよ? テンションがおかしくなるのもある程度は仕方がないじゃない?
だけど僕のささやかな主張への返答は、ちょっとよくわからないといった風の困り顔だった。
「残念だけど、考慮に値しない」
「そうですか……」
ごめんね、みんな。僕じゃかばえないよ。
僕はこの後に起こる惨劇を覚悟した。
「じゃあ行こう」
短い指示に従ってユニコーンゴーレムはライトを赤く変化させ、動き出す。
ちなみに赤は――戦闘色である。
「ぐお……あれは!」
そして呻く僕の目の前でユニコーンゴーレムの周囲に無数の魔法陣が生成され、展開したのは僕自身が設定したマジック・ミサイルだった。
「ファイア」
掛け声とともに情け容赦なく放たれたそれは、アッハッハッと談笑する生徒会員達に雨のように振り注ぐ。
効果は一つ。
着弾、即爆砕である。
「ギャアアアアアア!」
楽しげな語らいの場だったエルフの里は一瞬にして阿鼻叫喚の地獄へ変わる。
派手にマジック・ミサイルで耕された道を、カッポ、カッポとあえてゆっくり進む如月副会長。
彼女は、地面に這いつくばる彼らを見下ろし、凍てつくような視線を浴びせかけた。
「……こんにちは。君達。いったいこんな所で何をしているんだろう?」
生徒会員たちは一斉に顔を蒼白にして、ヒュッと空気を呑んだ。
淡々と問う声は、そう大きくもないのに彼らの耳に届いていた。




