第368話頭も使いよう
ゴウンゴウンと重低音を響かせて、ゴーレム系製作設備が稼働中。
現在開発中の搭乗型ゴーレムの頭部が新たに造られていた。
当初の予定とは違うアイテムが内蔵されたそれは、綺麗に収まっていて無事纏まってはいる。
僕はしかし”壊れた錬金釜”というアイテムを加工して鎧の頭部として埋め込むことに困惑したことは間違いなかった。
そして僕がそうなのだから、それを初めて見せた時、桃山君と東雲さんが困惑するのも当然だった。
「なんでこの変な釜? つけたんでござるか?」
「打ち合わせの時はなかったですよね?」
「ゴメンゴメン。でも必要だと思って追加したんだ。実はこの間、奥の手を使ってみたんだけど、自分の魔力が枯渇しちゃって」
僕は自分で作った武装の欠陥に溜息を吐いた。
大技を使ったら意識を失ったなんて大失敗もいいところである。
これは桃山君も知るところで、ああアレかと納得した様子だった。
そして話を聞いた東雲さんはすぐに問題を察したようだった。
「あー。自分の魔力と連動しちゃうんですね。そっか……いろんな魔法をただでさえ併用してますもんね」
「確かに気絶はまずいでござるよ。できれば補っておきたいでござる」
戦闘の最中に意識が飛ぶなんていうのはどう考えてもまずい。
そして初めて味わった魔力切れは、ちょっともう一度味わいたいとは思えなかった。
そこで攻略君が提案したのがこのアイテムなのだ。
「そうなんだよ。そこでこの釜なんだ。まぁ壊れた錬金釜なんだけどさ、通常はゴミ箱程度にしか使えない危ないアイテムなんだ」
「危ないんでござるか?」
「そう、ホラ。錬金釜って入れたものを分解して、再構築するでしょう?」
「……そんな高度なことしてたんでござるか?」
こっちも攻略君の受け売りだから、あまり突っ込んだことは聞かないで欲しいけど、そういうことのようである。
「そうだよ? 一度魔力に分解してるから素材の入れ替えなんてことまでできるんだけど――今回頭にくっつけたやつは、肝心の再構成の部分が壊れていて、分解しかできないんだ。だからどんなものでも純粋な魔力に変えて霧散させてしまう」
それを聞いた二人は、ぎょっとして新型の頭を見た。
「うわ。こわ! え? じゃあ、まさか……その魔力を?」
「そういうこと。このボディに溜めるように改造してあるわけだね」
オリハルコン合金と各種宝石をうまく使えば、それそのものが巨大な魔力のバッテリーとして無類の性能を発揮する。
目論見通りにいけばあの武装を最後まで成立させられる程度は持たせられるはずだった。
「それで、飾りだった頭に組み込んでみることにしたって訳ですな」
そう僕が解説を締めくくると、東雲さんはゴクリと生唾を呑み込んで、汗を手の甲で拭っていた。
「なるほど……つまり。こう……口から何でもかんでも取り込んで、魔力に還元できると。なんか食べてるみたいになりますね。顎作りたいです」
「そうだろうと思って強靭なのつけといた」
ぐっと東雲さんと僕は親指を立てた。
予定外ではあったが、新たな改造も終え、僕としてはおおよそ満足だ。
だが突然の仕様変更で割を食うのが、この後仕上げに掛かる東雲さんだとわかっているだけに、心中は少し複雑だった。
「中身はこれで完成でいいと思うんだけど、そっちはどう?」
続いてそう東雲さんに振ってみると、東雲さんは図面と注意事項を確認しながら言った。
「そうですね……最後の仕様変更で頭部作りなおしと最終調整ですかね? 一旦これ地上の工場に運び込んでもいいですか?」
「……なんかゴメン。それくらいなら全然やるよ。東雲さんの家なら行ったことあるから、すぐだ」
「すごいですね……了解です。じゃあ、父さんに場所開けとくように伝えときます」
「了解。じゃあ、よろしく~」
「はい! 任されましたよ! では! 私、タマきゅん連れてきますんであとでお願いします!」
「ホイホイ心得た」
「お疲れでござるよー」
テキパキと片づけを終えて、走り去って行く東雲さんは今にもスキップしそうなほどにご機嫌だった。
ここから東雲さん家に任せれば、間違いなくこの作品を完成してくれるはずである。
最初の構想から思ったより大変だったこれまでの道のりを思い返して、僕は天井を見上げていた。
「うーむ……気合入れて作ったら、案外やってやれるもんだね」
「そうでござるなぁ……っていうか普通はできないんでござるけどな!」
「だねぇ……で舞闘祭、間に合っちゃいそうだねぇ……」
「そうでござるねぇ」
そしてまぁこうして一段落ついて、ふと気が抜けると、無駄な力も一緒に抜けて、一瞬冷静になった。
さっきまでの興奮が嘘のように静まり返った城内で、僕はポツリと呟いた。
「……完全に、やりすぎてない?」
「……どうで……ござろうなぁ」
一応プレゼントの体……でしたよね?
お互い視線が合わないあたり、冷静になるのはまだ早かったか……。
……いや、良い物が完成しそうなことは間違いないんだ。
ただ、思い直したとしても、いろんな人を巻き込んでいるんだし、ここはもうひたすら派手にお披露目はしなきゃがっかりさせてしまいそうなのがまずいだけで。
日和るにしてもそこが一番のネックだなということで、僕はもう少し正気を失ったまま進むことを決めた。




