第367話ちょっとした探し物
トラブルを脱し、退散した僕はひとまずダンジョンの奥へと進んでいた。
転移も交えて人目を避けるように移動すれば、見つかることはそうそうない。
普段よく探索しているエリアなら、おそらく僕をまともに追える者はほとんどいないという自信があった。
『ばらすんじゃなかったのかい?』
攻略君は茶化し気味にそう言うが、僕は苦々しげな表情しか出てこなかった。
「……あの空間で? 冗談じゃありませんよ?」
攻略君も冗談言うんだ。いや……普通に言うなこの攻略君は。
ぶつくさ文句を言いながら進む今回の僕らは、目的があってダンジョンアタックに挑んでいた。
というのも本日は、ちょっとした問題を解決するために、探し物があったのだ。
『今日は運がいいよ。かなり浅い階層に目的のアイテムがある』
「ほぅ。いいじゃない」
『では案内しよう。ただ、用途には適しているが……ちょっとがっかりさせてしまうかもしれない』
「なんで? 珍しいね」
妙に弱気? な攻略君を僕は意外に思った。
だが攻略君が「がっかりする」と言うのなら、きっと僕がこれから抱く感想の方に問題があるのだろう。
ただ出てきた攻略君の答えはあまりにも単純だった。
『うーん、今回おすすめする最適のアイテムは……いわゆるハズレアイテムなんだよ』
「ハズレアイテム? なんか妙なこと言い出したね。目的が達成できるなら、当たりじゃないの?」
『そうかな? イメージって割と大切では?』
「大事じゃないとは言わないけどさ? 何か問題が?」
『まぁ……あるね』
あるのか。
だが重要なのは数ある選択の中から、攻略君がこれを推したという事実だった。
「じゃあ他のにする?」
『いやそれは……君の要望に応えるにはこれしかないと思う』
「なら、どうにかしてみよう。今回はロマン重視にもほどがあるからなぁ。変に妥協したらずっと後を引く奴だ」
『……うん! それもそうだな! ならば期待に応えようじゃないか!』
「それに、みんながハズレだと思っているものが実はすごく価値があるなんて展開、実は僕、大好物なんだよ……」
『君ってやつは……』
呆れ気味の攻略君だが、そういうの憧れると思う。
不穏な前振りから、攻略君の案内でやって来たのは、ジャングル階層の湖だった。
攻略君は一センチ先も見えない濁った湖の水底を指定して、こう言った。
『では潜ってくれ。目的のモノは湖の底にある』
「……めっちゃ濁ってるんだけど?」
『オーラで覆えば快適水中ウォークだろ? まぁ躊躇っていても仕方がない。ワニ系のモンスターの噛みつき攻撃は強力だが。たぶん大丈夫だろう』
「……超大雑把なこと言うよね」
なるほど? 問題ってこういうことか?
こいつはレベルがあろうがなかろうが、心が折れそうな労働だった。
『それだけ君が強くなったってことだろう? では行こう。ジャングルレイクツアーの始まりだ』
「……ヨーシ。ヤルゾー」
『……先ほどの大胆不敵さが見る影もないね』
「心構えの空振りかな? 攻略君はたまにそういうことしてくる」
とはいえ、自分の言葉に責任は持たねばなるまい。
僕は改めて気合いを入れ、水中用オーラを展開すると、スコップ片手に水の中に飛び込んだ。
水底を歩けるとしたって濁った水の底から目的の物を探すのが大変じゃない訳がない。
攻略君にこの辺と言われたところを重点的にスコップで漁り、泥をかき分けること数時間。
頭をデカいワニに齧られながら、ようやく見つけたのは、ちょっとだけ見覚えのある形をした小型の釜だった。
「……コレ?」
『そうだ! これが君のリクエストに合致する品――壊れた錬金釜(欠陥品)だよ!』
「なんだか―――ちょっとぼろっちいな」
『ホラ! やっぱりがっかりしたじゃないか。欠陥品だから仕方ないんだ』
ただ、僕は手を伸ばして、持ち上げようとすると、なぜかゾクリと寒気がする。
「……!」
徹底してダメな烙印を押されているアイテムなわけだが、攻略君が言うのならこれが僕の理想の品なのだろう。
僕は壊れた釜を水底から抱え上げ、慎重に持って帰ってみることにした。




