第363話海外から来た
マッチョのイケメンが二人。
そして鋭い目つきで教室を見回すミアさん。
そんな彼女達がもたらす混乱は衝撃と呼ぶにふさわしかった。
恐らく顔を知っている人間もクラスにいるんだろう。
息を呑む声はそこら中から聞こえて、感激の悲鳴まで上がっていた。
「あ、あの方は……まさか、ミア=ローズ様! そのかわいらしい容姿と、圧倒的な魔法力でレイナさんと双璧をなす、若手で最も注目される実力派探索者!?」
全部説明してくれるやん?
この声は天音さんですな。
僕が聞いた話では、ミアさんはレイナさんのライバル探索者という話だが、詳細はあまり知らなかった。
いや、調べるチャンスはあったんだけど……ちょっとおっかなくて無理だった。
だが、一時期目を逸らしたところで、自分の過去は僕の背中を追ってくるらしい。
じっと、身じろぎすらせず僕は自分を漬物石か何かだと思い込む。
しかし努力もむなしく、ミアさんの青い瞳は僕を捉えた。
そしてピタリとロックオンした彼女は、そのまま真っすぐこっちにやって来た。
【席についてください】
担任AIの無機質なアナウンスが響くけど、彼女はまるで気にしてはいない。
でも僕の方は、主に背後からチラ見えした、天音さんの人を殺せそうな視線に戦々恐々だった。
「……見つけたわ。ちょっといい?」
「は、はぁ……何でしょう?」
相変わらず圧の強い女子だけど、なんか違和感がある。
「お久しぶり。レイナは元気?」
「ええ、とっても」
「そう。それは最高にハッピーだわ」
そして僕はふと思い出した。
前まで彼女、日本語できなかったんじゃなかっただろうか?
「……日本語うまいですね」
我慢できずに尋ねてみると、ミアさんは金髪をかき上げ、何でもない風を装っていたが、どこか嬉し気に口角を上げた。
「学習したのよ。ハイレベル探索者なら楽勝だわ」
「そ、そうなの?」
そういえば思い当たることもなくはないが……全然気にしていなかった。
まぁいいか。それは後で考えよう。
それよりも今はクラスの視線が深刻である。
「な、なぜアイツばかり……」
「ぐぅ! ミ……ミア様まで毒牙に……」
「な、なにか悪魔と契約とかしたんじゃないかアイツ……」
契約した悪魔はインプ君くらいだけどダメですかね?
殺気入り混じる呟きは、なんど聞いても心臓に悪い。
そして刺すような好奇心丸出しの視線は、今留学生美少女に詰め寄られている僕に集中していた。
正直こういうの凄く苦手なのに、最近はよくさらされている気がするのは遺憾である。
「おいおいミア。いきなりそいつは積極的すぎないか?」
「そうだぞ? 彼、驚いてるじゃないか」
「そんなことはどうでもいいわ。それよりも……貴方、私のアシスタントにしてあげるわ。光栄に思いなさい」
「え? ……お断りします」
「はぁ!?」
「HAHAHA! こいつは傑作だ! ミアがいきなりフラれたぞ!」
「ヤレヤレ……そりゃそうだぜ。日本人は奥ゆかしいのさ」
「……あんたら覚えてなさいよ?」
【席についてください】
もっと頑張って担任AI! この地獄のような時間からの解放は君に掛かっているんだ!
はっきり言って、僕のSAN値がピンチである。




