第361話忍者の修行先
突然、何かの拍子に人との繋がりが思わぬ効果を及ぼすこともある。
今回の試みはそんな人との繋がりがあってこそ、生まれた発想だった。
「というわけでハットリさん……二足歩行の亀をテイムしたんだけど、修行先に実家を紹介してくれない?」
「はぁ? 意味が分からないですけど?」
ハットリさんに掛けあったら、ものすごく嫌そうな顔をされた。
だが僕にしてみればこれでも一推しの頼みごとだった。
「いや、店はもうやってもらってるし、別に何かを要求っていうと、これがいいかなって……ハットリさんって忍者なんでしょ?」
かつて聞いた話を確認の意味も含めて尋ねる。
正直眉唾だとは思っていたのだが、ハットリさんはしぶしぶ頷いて肯定した。
「忍者かどうかは分かりませんが……ルーツは伊賀です」
「伊賀! 完ぺきじゃん! ……それで面倒を見てほしいのはこの4体なんだけど」
そして改めて亀達を紹介すると、ハットリさんはぎょっとして亀を眺め、そして正気か?と確かめるような視線を僕に向けて来た。
「……わぁ。本当に亀だよ…… え? どうしろっていうんです?」
「だから、こいつらに忍術を仕込んで欲しいなって。なんちゃってでいいから」
僕がぶっちゃけると、ハットリさんは掌で顔を覆い、しばし溜めてから「ダメで元々でいいなら」と交渉を承諾した。
「……い、言っておきますけど、マンガみたいなことにはならないですよ?」
「もちろん。伊賀に弟子入りってステータスが大事だと思うんだよ。是非とも、前回の埋め合わせをしてくれるというのなら、骨を折って? 力を貸してくれたならハバキリ君にも、お世話になったと伝えるからさ」
「うっ……分かっています」
「ホント? いやー助かるよ!」
「……十中八九、断られますからね?」
「それならそれで諦めるよ……」
それでも連絡だけはしてくれるんだから、持つべきものは忍者のクラスメイトだ。素晴らしい。
ハットリさんはしかしものすごく望み薄そうな反応で、困り顔なのには変わりなかった。
「……うぅ。実家に連絡を取れというのは中々鬼畜な要求では?」
「自業自得でしょうそれは?」
ハットリさんは、苦々しげに番号を検索していたけれど、むしろ連絡を取るきっかけになったと思って欲しいものだった。
「……それは。そうなんですけど」
というわけで、埋め合わせという意味ではかなり楽しくなってきた。
亀達はそのままだとレベルが高すぎるから、一時的なレベルダウンの方法でも攻略君と考えてみようかな?
それ以前に、モンスターが受け入れられるかはかなり賭けなんだけど、 実現すればあまりにも熱すぎる。
本当に誕生してしまうのだろうか? 伊賀タートル。
まぁ内心、絶対断られるだろうとそう思っていたんだけど……
「……え? いいんですか?……だいじょうぶだそうです」
まさかの電話で頼んで二つ返事だった。
世の中何もかもおかしいみたいな表情のハットリさんだけど、僕も驚いたのは同じだった。
「……マジで言ってる!? おお……伊賀式忍術を完全再現するモンスター亀が誕生してしまう?」
意外と頼めばどうにかなるものなのかもしれない。
世界って面白いなって、僕は久しぶりにリアルを見直していた。




