第352話ピザパーティー(side:ワタヌキ)
「ひゃっほー! ピザパーティーですね!」
最初からテンションマックスのレイナさんはカフェの厨房で調理中だった。
大量のピザ生地に、好みの具材を乗せ、程よく焼いてから一旦アイテムボックスに詰め込む計画だったわけだが「ちょっと待った!」とレイナさんが名乗り出た。
「ワタシ! ポテト揚げます! チップスもサワークリームもありますよ! コ〇コで買ってきました!」
「ありゃホント? 遠くなかった?」
「何の問題もありません! これは必要な物なのです!」
「なるほど! じゃあ、本場のパーティースタイル、見せてもらおうかな!」
「お任せです!」
強く拳を握り締め、熱く語るレイナさんの目が本気だった。
なくてはならないというその言葉に嘘偽りはないに違いない。
「なら、僕はピザだね。桃山君は材料カットよろしく!」
「心得たでござる!」
「浦島先輩はトッピング手伝ってください」
「よし来た! あ! 窯もあるんでしょ? 私が火を起こそうか? 火おこしは練習した……え? それはもっと後? 精霊突っ込んだから簡単?……ああ、そう……」
「先生は飲み物担当で……大丈夫ですか?」
「なにを心配することがあるのかな? 氷に入れて冷やしておくさ。料理が終わるまでビールは残しておくとも。ところでベーコンを少し貰っていいかな?」
先生だけ全然大丈夫じゃなさそうだけど、全部飲み切ってしまっても問題ない。
ストックはおそらく十分で、学生とは別々である。
それよりも僕は自分の仕事に集中しよう。
生地を平たく伸ばして、特製モンスタートマトソースを塗り、チーズを筆頭にトッピングを乗せてゆく。
うーんこうしてみると、ピザってなかなか加工品が多いよね。
それでもどうにか、具を乗せ終わるとオーブンに投入だ。
特製のヘラで滑らせるように入れ、しばし待てば思っていたよりずっと早く焼き上がるのだが……僕は思わずこんな提案をしてしまった。
「この一枚だけ……きちんと焼き上げてつまみ食いしません?」
匂いが美味そうすぎる。流石に我慢の限界である。
「賛成!」
「ぜひお願いするでござる!」
「いいですね!」
「いいじゃないか。え? 1枚だけ? 止まらなくなるやつじゃない?」
僕は頷き、しばし待つ。
焼き上がった一枚を取り出す瞬間は、さすがに手が震えた。
「おお……これがドラゴンベーコンピザ……溢れ出る魔力で溺れそうな一品だなぁ」
「おお! うまく出来てるでござる! ほぼほぼ食材ダンジョン産でござるか?」
「マジだよ。やべぇー……いや、一から作ってみるとジャンクフードほど手が入ってる軽食もないのでは? なんて思っちゃうよね」
生地作って、ソース作って、ベーコン作って……そしてすべてを集約してのこの一枚。
飽食万歳である。
では料理人の最初の義務として、小難しい理屈はすべて忘れて、細胞の一つ一つまでこの罪深い味を堪能しつくすとしよう。
「じゃあ……食べてみます」
ゴクリと口の中に溜まったつばを飲み込んでまずは一口。
口の中一杯に飛び込んできたチーズは、問答無用でガツンと極上の味を僕の胃袋に叩き込んできた。
「~~!」
チーズの濁流に言葉を失い、手元に用意していたキンキンに冷えたコーラを流し込む。
完全に満たされた僕は、真理に至った。
「油は――うめぇんだよ……」
「拙者も食べていいでござるか!?」
「いただきます!」
「持ってきて! 口に入れてください! ワタシ調理中なので!」
「……もう一本開けていいかな?」
感想を皮切りに、次々に手が伸ばされて、味見用ピザが一枚あっという間に消えた。
ドラゴンピザ、瞬殺である。
「うーん、ドラゴンキラーも真っ青だ……さて」
そしてあまりのうまさにやられている面々を見て、いける!と確信した僕は、改めてエプロンの紐を締めなおした。
「……スパートかけますか」
「「「「おお~」」」」
仲間達は手を叩き、僕は期待に応えるべく手の関節を鳴らす。
材料はこの日のために存分に用意してある。
僕のピザパーティーはまだ始まってすらいなかった。




