第349話探しに来た
僕は、ホームセンターの商品棚を見ると勝利を確信してしまう体になってしまったみたいだ。
特に勝ち負けとか関係ないのに不思議である。
やってきたホームセンターで、僕は興奮を隠しきれずに狙いの物を口にした。
「……ピザ窯は……どこだ?」
『そこのアウトドアコーナーにあるよ』
「……攻略君。店内の案内もしてくれんだね」
『そのくらいならいくらでも。しかしわざわざ窯を買う必要あるかな? ピザなら電子レンジのオーブンで作れるのでは?』
「はぁ? ないない」
だがナビゲートは優秀なのに、あまりにも情緒のない発言には、相棒として一言言わねばならなかった。
「簡易ピザ窯でも妥協してるんだよこっちは? 耐火煉瓦とモルタルで自作したいくらいなんだからね?」
『えぇ? 何がそこまで君を駆り立てるんだ?』
「そりゃあ……ピザの魔力だよね……」
『ピザの魔力っ……!』
そうとも。あのトロトロに溶けたチーズが視覚に訴えかけ、立ち上る匂いが嗅覚に直撃するピザは魔力を秘めている。
ここに焼きたてともなれば、各種具材から滴る油の音まで加わる。
窯の高温で瞬時に仕上がるメイラード反応とか、もはやある種の幻術だと思う。
結局チーズは、焼きたてが一番おいしいのだから、窯はあまりにも強力すぎる「ピザ特化のバフアイテム」と言えるのではないだろうか?
焼きたての窯焼きピザに揚げたてポテト。そこにキンッキンに冷えたコーラを一杯添えて豪快にいただきたい。
その誘惑は僕の心をまるで魔法のようにつかんで離さないのだ。
そういうことである。
そして案内にしたがってピザ窯を購入した僕は快適ピザライフの一歩を踏み出した。
さて目的は達成した。
後はトイレにでも寄って帰ろうかと考えていると、何やらカプセルトイコーナーで真剣に悩む女子を見つけて僕は足を止めた。
「……かわいいわ。でもダメよ。これ以上、全く知らない子を増やすのは……ハァハァ……」
「……」
なんだガチャガチャの妖怪か。――うん。目が合っちゃったね。
結局葛藤も一瞬で、ガチャガチャと熱心にハンドルを回す月読さんはコロンと出てきたカプセルを確保していた。
「こんにちは。ワタヌキ君……予想外のところで出会うわね?」
「……そうですね。会わなかったことにした方が?」
「なんでかしら? 堂々としてくれて構わないわ」
そうなんだ。まぁそうかも?
この子本当に大丈夫かな? なんて心配にはなったけれど、元気そうで何よりだった。




