第348話下ごしらえ
「クケェェェェ!」
蛇の尾を持つ怪鳥のけたたましい叫び声が鼓膜を叩き、桃山君が動いた。
浮かぶシールドに守られた彼は、蛇の尾を華麗にかいくぐって、二本の刀を抜き放つ。
刃が翻るとコカトリスは石化ガスを吐く暇もなく、その首を両断された。
「討伐完了でござる!」
「よし! じゃあ急いで捌いていこう!」
僕は倒れ伏す怪鳥を確認して大急ぎでロープとナイフを取り出し、素早く解体。
食べる部位を完璧に取り出して、食用に加工したそれを、片っ端から塩漬けにしていった。
「ふぅ。お疲れ」
「お疲れでござる。……しかし、これどうなんでござるかね? 食べたら石化したりしないでござるか?」
「そんなへまはしないよ。うまいらしいよ? コカトリスベーコン?」
「ベーコンでござるか……。いいでござるなぁ」
出来上がったつややかなベーコンを想像してしまったのか、桃山君は唾液を呑み込んでいたようだけど、きっと期待には応えられるはずだった。
「特製ソミュール液に漬けこんで、オリジナルチップでじっくりと燻製だ。石化要素は綺麗に抜いて、安心安全な燻製を提供しようじゃないか」
「いいでござるね! じゃあ、できあがったらベーコンパーティーでござるか!」
「ふっふっふっ……ベーコンパーティー? いやいや。桃山氏ぃ。今回はベーコンパーティーじゃないよ」
僕は意味ありげに笑い、肩をすくめる。
それはそれで楽しそうだけど、つまみだけで終わってしまっては、龍宮院先生を喜ばせるだけで終わる。
成長期の胃袋を満足させるにはもうひとひねり必要ではないだろうか?
「そうなんでござるか?」
「そうとも。牧場には自家製のチーズがある。そして他の具材も準備中とくれば……」
「ま、まさか……!」
桃山君は、材料のラインナップにハッとした。
そのまさかである。世界最強のカロリー爆弾の準備は着々と進行中だった。
「今週末は……ダンジョンの海でピザパーティーだよ!」
宣言して、僕は任せておけと胸を叩いた。
ここは一つ、本格的な男のクッキングを見せてあげよう。もちろん僕らも食べるんだけど、今回は他にも振る舞いたい奴らがいるので、気合いを入れて沢山用意するつもりだった。
「桃山君、ピザの具で何かリクエストある?」
「そうでござるね……パイナップルとか挑戦してみるでござる?」
「初手それ? ……レイナさんと喧嘩にならない? 大丈夫?」
「どうなんでござろう? ああ! デザートにキノコとタケノコを用意したらイーブンじゃないでござるか?」
「……戦争がしたいのかな?」
スイーツ系のピザもまぁ美味しいけれども、これまた意見が割れそうなチョイスだった。
「冗談でござるよ。でも予想外の物を乗せるのも話のネタになるかなと。あ、拙者、ホイップクリームとメープルシロップ持ってきていいでござるか?」
「……なかなかニッチなチョイスなんじゃない?」
ひょっとして……こいつは荒れるか?
桃山君の思わぬ攻めの姿勢に胸がざわついたが、まぁだとしても楽しい催しになるだろうという確信はあった。




