第345話☆を砕く鉄槌
「な、なにそれ、でっかい……十字架?」
戸惑う龍宮院先生に、僕は自慢の新武器を披露した。
「いいでしょう? トール・ブレイカーっていうんです。近距離攻撃と遠距離攻撃が得意ですが……実は、どっちも龍宮院先生と戦うには、ちょっと相性が悪いですね」
「そ、そうなんだ……」
しかし残念ながらトール・ブレイカーは、今この瞬間有効な武装だとは言いがたい。
おそらくこの大型武装の大振りでは、先生の速さは捕らえられまい。
レールガンも同様で、先生なら見てから躱される可能性すらある。
というか直撃させるわけにはいかない武装を振り回したところで、この肝の座った先生は本気で驚いてもくれないわけだ。
「ですが……せっかくの機会と場所です。この武器を作る時に考えた「とっておき」を使ってみようと思います」
だから――僕は最後の切り札を試すことにした。
「……なんか上がおかしいんだけど?」
すでに、僕の攻撃は始まっている。
龍宮院先生はすぐに異変に気がついて頭上を見上げていた。
そこではもう何度かやったことがある巨大質量の転送が始まっていて、空間が気持ち悪く歪んでいた。
「……知ってるでしょう? あいつはでかくて召喚も手間なんです」
「……あいつ?」
だが僕の言うアイツは、みんなの知るいつも通りのピラミッド型ではない。
空間のゆがみから次々飛び出してくる、無数の金属ブロックはそのまま頭上を高速で旋回しながら何かを形作ってゆく。
僕はトールブレイカーを高く掲げて、召喚されたゴーレムとリンクした。
トール・ブレイカーを介して、僕とピラミッドゴーレムコアを接続。
ブレイカーは僕の魔力をすさまじい勢いで吸い上げて、最後の兵器を起動する。
呼び出したすべてに広がり、迸る雷の激しい放電を見て、龍宮院先生もようやく冷や汗を一滴流した。
「ま、まさか……!」
「そのまさかです……今度は先生が受け止めてくださいね?」
「い、いや! さすがに死んじゃうんじゃないかな!」
「自分の言葉には責任を持ってください先生!」
「ああっ! やっぱり怒ってるよね! いつになく強引すぎないか!?」
「怒ってないですー」
ピラミッドゴーレムに施された魔法文字は僕の指示を忠実に実行して、新たな形にその形態を変化させた。
不安定ながら、空中でブロックが折り重なって出来上がったのは、雷の魔力で黄金色に染まる超巨大な棘の付いた球体だった。
頭上を覆いつくさんばかりの超巨大球体は、まるで凶悪な星のようにまばゆく輝いていた。
「名づけるなら! ゴルディオン・スター・ハンマーってところです!」
「馬鹿!! デカイモーニングスターじゃないか! 殺意高くない!?」
「大丈夫です! 棘付き鉄球をハンマーと呼ぶ文化が! この国にはある!」
「よそじゃ一個も伝わらないからね! それ!」
龍宮院先生……案外余裕あるなぁ。
まぁ、つまりあれはハンマー! すなわち僕のメインウェポンだった。
「うおおおおお! 光になれぇぇぇ!」
「……くっ!」
なんて叫んでいるけれど、もちろんこいつを直撃させるつもりなんてない。
しっかり制御して、寸止めでもすればさすがに先生だって驚くだろう。
内臓爆砕の意趣返しとしては、かわいいくらいのサプライズアタックを喰らうがいい!
僕は十字架を掲げ、いよいよ振り下ろそうとしたのだが―――。
「……え?」
ガクンと、その瞬間急に全身から力が抜ける。
ああ……ヤバイこれ。
倒れ込みながら、僕は咄嗟に飛び散ったシールドで先生を守る。
―――直後、スコンと視界は暗転した。




