第343話探索者は腕試ししたい
「海の中のスタジアムっていうのは面白いもんだろう?」
「呼吸できる水って、L〇L思い出しますよねー。それにしても、めちゃくちゃ広いですね」
「そりゃあそうだろう? 私用のスタジアムだ。広くなくちゃ役に立たない」
「……激しくなりそうですね」
「もちろん。気を引き締めないと油断をしていると一瞬だよ?」
「何それ怖い……」
先生特製のスタジアムは当然のように高レベル者仕様のようで、ちょっと頑丈なんてもんじゃなさそうだ。
「手加減は一切しないでいい。……以前よりはいい線行くってところを見せてあげよう」
「?……それ何の話です?」
「! い、いや? ナンデモナイヨ? ……そうだった。あれは洗脳中だったか」
「?」
なぜか急に焦り出した龍宮院先生だったが、僕とて大焦りもいいところである。
授業の延長ではあるのだろう。だが、先生の雰囲気が明らかに手加減の練習なんていう和やかなもんじゃない。
コイツは由々しき問題だった。
プロの探索者である龍宮院先生のギラついた気迫を受けると、どうにも嫌な汗が背中から噴き出して止まらない。
「まぁ、なんだ……100階のアレを倒した探索者と手合わせしたいと思うのは、同じ探索者としては自然な感情だと思わないかな?」
「……先生がそんな挑戦者みたいなこと言わないでくださいよ」
「間違いなく挑戦者でしょ? だけど先生としても間違っちゃいないと自負しているよ? では、ワタヌキ君……力の制御を学ぶ上で最大のコツを知ってるかい?」
「……なんです?」
もったいつけて言う龍宮院先生に不穏なものは感じたが、僕は聞き返す。
構えを取った龍宮院先生の殺気は、返事と同時に強烈なのが飛んできた。
「自分の最高の力を思いっ切り体験しておくってことだよ……!」
「……っ!」
刹那、言葉を置き去りにして、目の前に黄金の拳が迫っていた。
ひょっとすると光よりも速いんじゃないかと思えるほどの閃光のような拳は、遠慮なしに振り抜かれる。
しかしギンと金属同士がぶつかる音と、ズドンと全身を殴りつけるような衝撃は僕のほんのすぐそばで響いた。
拳の間に素早く割り込んだ盾は、傷一つなく空中で拳を止める事に成功したようだった。
「!」
「……速さに磨きが掛かってません?」
「……防御に磨きが掛かっているじゃないか」
そうでしょう?
うちの自慢の防御網。システムゴルゴンゾーラは伊達ではない。
なにせ神がかり的な堅さと濃厚な呪いがこの機動盾達の持ち味だ。
さて先生も楽しいだろうけど、このさいだから僕も色々試させてもらいますよ?
目の前の先輩探索者に一体僕の力はどこまで通用するのか?
胸を借りるつもりで、チョットだけ付き合ってもらうとしよう。




