第339話龍宮院先生ならやってくれる
「え? 龍宮院先生? そういえば最近カフェでも見ないね」
部室にやってきた浦島先輩に聞いてみると、先輩も先生の動きを把握していないらしい。
「言われてみると見てないですね! でも先生の行動パターンはワタシ達と似てますから竜宮城にいるんじゃないですか?」
続いてやって来たレイナさんは実によくわかっている。
僕もたぶんそうだろうと思うんだけど……特に情報を共有することなく淡々と作業を進めている辺りにちょっと不穏なものを感じていた。
「フーム……じゃあちょっと、行ってみようかな? 竜宮城?」
とはいえ遠慮しすぎてもしょうがない。
相談したいこともあるしちょうどいいと、僕はとても軽い気持ちで竜宮城へ向かうことにした。
そして今回面白がってついてくるのは珍しくフルメンバーだった。
「いやぁ。絶対面白いかなって」
「浦島先輩もそう思います? そうなんですよね。天使もいくらか貸し出していますし」
「先生は一番クリエイティブですからね! 期待しちゃいます!」
「確かに絶対改造してるよね? レイナさんも、こう……なんかすごいの作ってくれそうな期待感があるかぁ……」
「竜宮城はただでさえ、すごいでござるからなぁ」
「水の中にある竜宮城だもんね桃山氏。正直あのままでも十分休日を過ごしたいとは思う」
僕がそうであるように、皆随分龍宮院先生の活動に興味があるようだ。
そして……今回、もう一人プラスワンとして連れて行くメンバーがいた。
「なぜメカクシ……」
いいタイミングで捕獲に成功したハバキリ君は今、黒い布で目隠しをされて僕らと一緒に部室にいた。
いやまぁ、どうかと思う絵面ではあるが、パニックにならないように念のためだ。
「ちょっと刺激の強い場所だから。少しだけ我慢してね」
「あ、ああ! 助言を求めたのはボクだ……信じるとも」
ハットリさんが見たら発狂しそうな光景だから絶対秘密にしようと思う。
だがハバキリ君の希望が戦闘能力向上ということもあって、僕は試験的に今まで仲間の内でしか提供しなかった情報を出そうと考えていた。
いわゆるそれは”弱くなる薬”で、上級職を早期に手に入れるには必須と言っていい、サブカルチャー研究部の虎の子情報である。
そのために案内しようと思ったのが、竜宮城の時間の流れが遅い部屋だった。
所謂戦闘能力向上のための修行というあまりにも本筋の使用法に、思わず慎重になってしまったわけだ。
でもだからと言って、この絵面がよくないものだとは思っている。
いや最近やたらと目隠しに縁があるのは本当にいただけない。
他の人に見られるのも最悪なので僕らは急ぎ足で龍宮院先生のいる階層にやってきた……のだが。
「「「「……」」」」
しかし、久々にやってきた竜宮城を前にして、僕らは全員黙り込む。
重低音が鳴り響く海のフィールドに、煌びやかにライトアップされた竜宮城が浮かび上がっていた。
全体的にバージョンアップしている竜宮城は巨大なスタジアムに取り込まれていて全体的に増改築が施されているが―――そんなことより今ここで問題なのは、そこはかとなく感じる、どこかいかがわしい雰囲気だろう。
まさかの目隠しがファインプレーになるとは。
「……な、なんかすごいことになってる」
「どうしたんだ? さっきから変な音が聞こえてくるんだが?」
「う、うーん。僕も戸惑ってる」
ハバキリ君が心配そうな声を出していたけれど、このまま本当に目隠しを外していいのだろうか?
僕は何よりその部分を、本気で悩んでいた。




