第337話そして布教は何とかなりそう
未だに瓦礫が降り注ぐ中、テストは終了である。
僕は倒れた山ゴーレムの上で、フゥーと長めのため息を吐いた。
そして腰を上げて待機地点へ戻ると、みんなが大興奮で駆け寄って来るのが見えた。
「大成功じゃないですか! なんですかあの威力!」
「噴火みたいだったでござるよ! やったでござるなぁ!」
「い、一体なんなんだその武器は! この間より戦い方の非常識さに拍車がかかっているじゃないか!」
口々に絶賛してくれる彼らを僕は手をかざして落ち着かせた。
「まぁまぁ。使ってみてすごいことを成し遂げたんだと確信したよー。でも―――気になることも出てきたね」
そして実験の後は懸念点の洗い出しである。
だが僕の前振りはみんなにはピンと来ていないらしく、口々に何が気に入らないんだと疑問が漏れた。
「な、なんですか? 気になることって? すごい威力だと思ったんですけど?」
「そうでござる。現状でも最強の武器と言える代物でござるよ?」
「あ、ああ。欠点があるようには見えなかったが……」
「うーん。じゃあ……例えば。今度舞闘祭でこいつを使っていいと思う?」
そう尋ねてみると、今まで興奮して紅潮していた顔が一瞬で真っ青になった。
「絶対やめてくださいね!? 絶対ダンジョンオンリーですよ!?」
「そうでござるよ!? 血の跡も残らないでござるって!?」
「流石にやめておくべきだ! 地上に出していい物じゃあない!」
「あれぇ……ビックリするほど信用がないなぁ。やらないからね?」
最大出力が高いのは素晴らしい。
オリハルコンゴーレムやスマウグ君辺りの巨大ドラゴンをソロで討伐するのなら、もっとやってもいいだろう。
しかしメインウエポンにするとして、手加減がほぼできないというのはそれはそれで問題である。
「……そこの所どうしようかな?と、今回倒したモンスターみたいな大型限定の武装だと割り切るべきなんだろうけど」
そう振ってみると、みんな思ったより深刻に悩み始めた。
「うーん。普通にコアからの出力を一時的に落としておけば、凄く丈夫な鈍器ですから、手加減はできるんじゃないですかね? それでも先生の力で殴ったらミンチでしょうけど」
「そこは……手加減できるよ?」
「……ホントですよね? ホントじゃなかったら困るのは先生ですよ?」
「それは本当にそう。でもこれでもちゃんと手加減の技は習っているんだよ?」
龍宮院先生直伝、手加減格闘術をもってすればスイッチのオンオフは自在である。……たぶん。
だからそんな風に心配そうな顔をしなくても、大丈夫だといわせてもらおう。……たぶん。
ただ一連の実験を目の当たりにして、ハバキリ君はここで初めて、レベルが上がって人を超えるという意味を考えてしまったようだった。
「だが……確かにスケールが違いすぎる。そもそも一緒に授業を受けて大丈夫なのか?」
あまりにも隔絶した破壊力はとても危険である。
あまりにも当たり前だが、今までは実感として感じにくかったそれを、目の前でこうして感じれば疑問の一つも湧くだろう。
だけどそれはダンジョンに潜ると決めた時点で早めに割り切るべきポイントだった。
「ダンジョンの奥に進むには必要だったんだ。そこは気にしても仕方がないよ」
「……」
ダンジョンに潜り続ける以上は弱いままではいられない。
それは今まで僕が潜ってきた中で得た数少ない教訓である。
ハバキリ君は苦笑する僕を見て目を丸くする。
そして頭を掻くと、意を決して僕に握手を求めた。
「……決めたよ。立ち止まっている暇はないな。手を貸してくれないだろうか? 是非教えを乞いたい」
「お? そう?」
おお、そういう約束だったね。忘れてた。
あの一撃が刺激になったというのなら、実に喜ばしい。
よし、じゃあ。正式に渡す情報は後でしっかり考えるとして、布教するアニメはアレにしよう。
とある惑星を舞台に不死の男が奮闘するSF冒険活劇は、きっとハバキリ君を魅了しつつ、新ウェポンの魅力を十二分に伝えてくれるはずだった。
まぁ、この件はいい、一件落着である。
しかし新武装、トール・ブレイカーについては、言葉にしてみると一件落着というか、まだ続きがあるのが確定していて、不安はあった。
「……もう一段階パワーアップを残していると思うと、恐ろしいな」
僕は誰にも聞こえないようにぼそりと呟く。
ちょっとぶん殴った手ごたえからして、もういいんじゃないかな? と思わないでもなかったが、そうもいかない。
止まれねぇよな? みんな楽しそうなのだし。




