第328話ホラーにはありがちだけど
「何……これ?」
見渡す限り不毛の土地だ。
そんな印象を受けるのは全身に感じる寒気もきっと無関係ではない。
そして服にしがみついて震えているインプ君の怯えようを見れば、今いるこの場所が極めて危険なことは嫌でもわかる。
そして肝心の攻略君による状況把握はこうだ。
『ちょっと空間にズレが出ているようだ。性質的にいうと……あの世?』
「死んじゃった!?」
『いや、死んではいないよ……まだ』
「まだ!?」
衝撃の事実に僕は震える。
だが、厳密には死んでいるわけではないと攻略君は改めて答えた。
『言葉にすると難しいが……ただ迷い込んだだけなんだ。あの手のモンスターの魔力が悪さをした感じだね。それに……招待された節があるかな?』
「招待? 誰から?」
『さて……すぐに会えると思うけど』
思わせぶりなことを言う攻略君というのは、特大の危険信号だ。
やばいなと内心焦りつつ、僕はため息をついて本題を切り出した。
「帰る方法は?」
『用事がなければ踏み込めない場所なんだ。つまり用事を済ませれば帰れる』
「……なるほど?」
よくわからないが、帰り方はわかった。
これはものすごく厄介事の香りがするからこそ、僕はいつも以上に注意深く、攻略君の情報に耳を傾けることにした。
『いいかい? ここでの決まりはいくつかあるが、注意すべきは食べ物だ。絶対にここで飲み食いはしないこと。出られなくなるからね』
「……美術館の注意みたいだ」
『似たようなもんだよ。冥界下りのコツは「余計なことをしないこと」だ。つまりやっちゃいけないことを把握しなければならない。そして実はそういうのは私の得意分野なんだね』
「……もちろん期待してるよ。大丈夫、指示通りに動いてみせるとも。僕の得意分野は足を踏み外さないことだって、そろそろ公言してもいいと思ってたんだ」
攻略君の冗談をあははと笑い飛ばした僕は、さっそくトイレから外に出た。
文字通り、棺桶に片足を突っ込んだような寒気はしたが、割といつものことだなと思い直して普通に進む。
死中に活を見出すことにかけては経験がある……と言ってしまうと幸運なのか不幸なのか微妙なところだけど、少なくともこうしてまだ生きていることは伊達ではない。
『思い切りが良すぎて、こっちはドキドキだけどね。特技というよりも特殊能力を見ているようだと言わせてもらいたいかな?』
だが攻略君にはなんだか思わぬ評価をされていて衝撃である。
そりゃあないでしょ攻略君。




