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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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327/471

第327話集まると良くないことが起こるらしい

「ああ、でもこんなものも用意してます」


 手加減が必要だと少し硬くなった僕らに一応といった様子でレイナさんが出してきたのは拳銃タイプの武器だった。


「……外注した?」


「はい! やっぱりゾンビと言えばこれです! とりあえず人数分。ベレッタ M92FS イノックスです! ああ、もちろん外見だけですが」


 ニッコニコのレイナさんだが、確かにこれはアガる。


 持ってみるとずっしり重く、ついつい構えて見たくなる魅力がこれにはあった。


「威力はこのマンションで十分通用します。ただレベルがこの階層から2つほど上がると弾かれるくらいの魔力量です。基本持ち出し禁止ですね。今地上にこれを持って行ったらやばい兵器になります」


「そんなに厳密に威力調整できたんだ。どうやったの?」


「カンタンです。吸魂石(きゅうこんせき)を採って来て、良い感じのアンデッドを詰めてみました」


 ああなるほど。モンスターならレベルは分かりやすい。


 そしてネクロマンサーのレイナさんなら、難易度がぐっと下がる製造法だ。


 そして銃、というか杖なら、とてもシンプルに威力に反映できるだろう。


「よし……じゃあ改めて」


 僕は銃を構えて、ゾンビに向かってぶっ放した。


 ガンと反動があり、しっかり吹っ飛ぶゾンビを見てジーンとこみ上げたのは反動によるシビレだけじゃなかった。


 それは他の二人も同じようで、恍惚とした表情で銃を眺めていた。


「これはちょっとした映画スター気分だね! 武器だけでこんなに変わるかな!」


「た、確かに……。でもやっぱりちょっとおっかないでござるよ!」


 それはそうだけれども、ある意味手加減には最適だった。


 景気よくゾンビを蹴散らして僕らはフロアを駆け抜けるわけだが、戦ってみるとゾンビたちがそう強くないことが分かる。


 レイナさんのテイムモンスターにしてはとかそういうことではなく、狙って弱い個体を大量に詰め込んでいるという印象だ。


 そしてこっそり少し強めのやつが混じっている。


 (強い奴は積極的には戦闘に参加してない。……むしろ僕ら挑戦者に気を使っている節がある?)


 立ち回りから見ても、おそらく安全に配慮していて、挑戦した探索者が危険になりすぎない配慮と演出の為なのだろう。


「フームなるほど。コンセプトマンションとでもいうんだろうか?」


「どういうことでござる?」


「あれだよ。レイナがやろうとしていることの話でしょ?」


 浦島先輩の言葉に、僕は頷いた。


「実際にお化けの支配しているマンションでスリリングな体験が出来るように工夫されている……感じ?」


 口に出して纏めると、レイナさんはニパッと笑顔で喜びを爆発させ、シェイクハンドである。


「そういうことです! ちなみに部屋はセーフルームにしてるのでちゃんと寝泊りはできますね! 疲れたら部屋にダイブすると中には入ってこれません」


「かなり高度な魔法も取り入れてるなぁ」


 これも権能の効果だろうか? いやしかし全力で趣味に振り切ったものだった。


 そしてただのアトラクションというわけでもなく、ここから続く計算したハプニングはすべて探索者専用で、中々物騒でもある。


「……ワタヌキ氏! あのゾンビめっちゃ走ってくるんでござるけど!?」


「定番だよ!」


「そうなんでござるかぁ!?」


「そだよ?」


 浦島先輩と二人で確信を持って頷いていると、桃山君は嫌そうな顔で言った。


「マジでござるか……ファンタスティックゾンビでござるぅ……」


 めちゃくちゃアクロバティックなゾンビや、アニマルゾンビ。ゾンビシャークなんて変わり種まである。


 そのラインナップはやはりレイナさんのこだわりを色濃く感じた。


「……ゾンビだけ異様に充実しすぎじゃないでござるか?」


「それだけ愛されているってことでは?」


「しかもホラーに寄ってないね。本道ではないかもしれないけれど、正直嫌いじゃない」


 しみじみ頷く浦島先輩と僕にレイナさんは、そうでしょう? とこの古式ゆかしい侘び寂びを噛みしめていた。


「……とても嬉しいです。このB級っぽさが逆に良いと思うんですよね」


「いやいや十分怖いんでござるが!?」


「えぇ? 普通のモンスターの方が怖くないですか?」


「いや……ベクトル違うくないでござる?」


 たしかに少し、ついつい頭が怖がりにいくモードに入ってしまって感覚がおかしくなるが、普段の敵の方が脅威度は上かもしれない。


「まぁそれで侮られても困りますけどね。ちょうどゾンビに混じり始める頃合いです」


 レイナさんはまだまだこんなもんじゃないと胸を張る。


 言葉通り、半透明の身体のゴーストが飛び回り始め、随分優雅にコミカルなゴーストたちが暮らしていた。


 こっちの姿を見つけると襲いかかってくるのにはゾンビと変わりないけど……軽く寒気を感じる程度なので問題ないと言えば問題ない。


 様々なフロアを越え、僕らは適当な部屋に入ると休憩をはさんだ。


 適当に選んだが、高級ホテルの一室のような部屋は、廊下にモンスターがひしめいているとは思えないほど快適そのものだった。


 ソファーに座り、ここまでの意見交換会。


 レイナさん的にはゴーストフロアが気になっているようだった。


「ゴーストは精霊以上に見た目の融通が利きますね。世界観が作りやすくて助かりますが……なんでもできて逆に困ります」


「そうだねぇ。遊びをたくさん入れるならここかもしれない。ゾンビは生だと、どうしても匂いやらの不快指数がねぇ」


「そうなんですよねぇ。映画と違って生だとどうしてもですね。まぁでもちょっとドライ気味にして全員に消臭スプレーでも持たせて対策してみせますよ!」


「ドライフルーツみたいにゾンビを表現しないで欲しいでござる……そのすさまじいゾンビに対する情熱はなんなんでござる?」


「えぇ? そりゃあ。そこに情熱を賭ける価値があるからですよね?」


「まったくだ。その通りだよ」


「ねぇ! やっぱりゾンビは重要ですよね!」


 サメ映画しかりゾンビ映画しかり、そこにかけがえのないロマンが眠っていることは否定しようのない事実である。


 そして、ここから上についてレイナさんは注意喚起した。


「ちなみにここから先はまた少し難易度が上がります。いわゆるデーモン系フロアです。もちろんフロアをめぐって腕試しするのもいいですが、どうしても戦闘は激しめになるので注意です。アンデッドはトリッキーですから戦闘訓練には一押しですね!」


「なるほどなぁ」


 ダンジョンの中だとテーマパーク全振りなんていうのはあまり需要はなさそうだ。


 だがホラー風を楽しみつつ、閉所でのトレーニングをしたいならこれは中々面白い。


 高い階層に意図的にレベルの高いモンスターを配置しているようで、感じ取れる気配も階層が進むにつれてどんどん大きくなっていくのは、面白そうだ。


 全容を把握して僕らは一息つくと、僕は緊張していたらしく、少し催してきた。


「あ、ちょっとトイレ借りていい?」


「はい。大丈夫ですよ。そこの扉の向こうがそうです」


「ありがとう」


 僕は礼を言ってトイレに向かう。


 そしてなぜかついてきたインプ君と共に、ふへぇと溜息をこぼして便器に腰を掛けていた。


 だが一時の休憩中、攻略君には今の状況に懸念があるようで、頭の中で呟いた。


『ふむ。良く出来ているが少し心配だな』


「……そうなの?」


『ああ。アンデッドの放つ魔力の相乗効果で、モンスターが強さを引き上げている。肉体が曖昧なモンスターが大量に揃った時に起こる現象だ』


「そんなのあるのか。じゃあゴーストたちなんかは特にレベル以上の力があったりするのかなぁ」


 だとすると銃の設定はもうちょっと強くないと想定が崩れて危ないかも。


 僕は懸念として後でレイナさんに伝えておくことにした。


 だが攻略君は、他にも何か気になった部分があるらしい。


「……他にも何かあるの?」


 一応聞いてみる。すると攻略君は不確定なことが多いがと前置きして語り始めた。


『懸念程度だが……この手の属性のモンスターが多く集まると妙な現象が起きやすい。ましてその主人がハデスの権能持ちときている。場合によってはね……』


「おいおい不吉なことを言うね! 確かに何かいかにも起こりそうだけど。その時は教えてよ?……」


 ふぅスッキリ。


 用を足し、トイレを無造作に出た僕は、しかし扉の向こうが一面真っ黒な岩肌が広がる場所だと気がついて言葉を失った。


「―――はぁ?」


『起きたよ。……懸念程度のはずだったんだけど、こんな感じだよね』


「……っ!」


 なるほど。こいつは計画されていないトラブルの匂いがする。


 攻略君の懸念とやら、甘く見ていたが今すぐ詳細を聞き出す必要がありそうだった。


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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます∠(`・ω・´) ( ゜д゜)ハッ!これアレだホラー映画やサスペンス映画でよくある単独行動をしたやつから脱落してくやつ(゜A゜;)ゴクリ 最初の犠牲者はワタヌキ君か…………
まだ巻き込まれたのが状況把握の出来るワタヌキ君で良かった。それともみんな巻き込まれたかな
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