第326話ホラーって言うよりもB級アクション
「では当マンションの案内をしていきたいと思います。このマンション実は少し面白い構造をしていまして、内部のお部屋が螺旋構造になっております。つまり廊下を真っすぐに進むことで最上階へと向かうことができるわけです」
「へー。ちなみにマンションっていうくらいだから、住めるの?」
レイナさんのロールに合わせて、お客さんとして振舞うとレイナさんは非常に楽し気な微笑みが一瞬垣間見えたが、努めてコンシェルジュとして案内を再開した。
「もちろん居住スペースはバッチリ完備しています。そちらの扉が居住スペースに通じる通路に繋がっていますから、開けてみてください」
「ここを開ければいいでござるか?」
勧められた桃山君が居住スペースに繋がるという扉を開けようとすると、レイナさんはにっこり笑って頷いた。
「そうです。この先には住人の方がいらっしゃいますが、ご注意を……」
「住人でござるか?」
「はい! まぁ―――」
ガチャリと桃山君は扉を開ける。
その瞬間、桃山君は腐った顔と正面から鉢合わせした。
「え?」
「住んでいるのが人間とは限りませんけどね!」
「ぎゃあああ!」
いきなりゾンビのドアップを突き付けられた桃山君はのけぞる。
僕らはひっくり返った桃山君を華麗に回避した。
「だと思った!」
「いきなりだねぇ!」
「えぇ! みんなわかってたんでござる!?」
慌てて体勢を立て直す桃山君は分かっていなかったようだけど、そりゃそうだろう?
森の中にたたずむアンデッド階層のマンションならこれくらいはやってくると思いましたよ。
扉が開いたのを合図に、ガチャリと一斉にどこかの鍵が開いた音がする。
更に鳴り響くのは、重低音の音楽だった。
ドンドンと空気を叩くミュージックに合わせ、ゾンビたちも動き出す。
「え? なに?」
「何って? BGMですよ? うちのゾンビは踊るのです!」
「踊るゾンビ……!」
レイナさんが自慢する通り、一糸乱れぬ動きでゾンビがキレのある動きを披露するその姿はシュールすぎて頭が追いつかない。
だがいきなりインパクトでぶん殴られた気分ではあった。
「廊下の照明がミラーボールだ……ははん? 真っ当なホラーではないな?」
「まるでアクション映画? というより……B級ホラーゾンビって感じ?」
「アッハッハッ! だいたいそんな感じです! もう気が付いていると思いますけどこのマンションは、ホラーなモンスターを各種取り揃えてエキサイティングな体験ができる! そんな場所なのです!」
「何なんでござるかそれぇ!」
「アンデッドなので思う存分ぶっ殺してくださいね! まぁ死なないですが!」
GO!とエールを送るレイナさんは、なんとも罪深い施設を作ったものだ。
ぞろぞろと次から次に出てくるゾンビはウーアーと唸りながらジリジリ迫ってくる。
しかしミラーボールゾーンでは妙にキレのあるダンスを披露する謎の仕様はちょっと面白い。
「まぁでも……そういう事なら、一気に踏破するでござるよ……」
マスクの下から聞こえてくる声がちょっと涙声なのは、桃山君が結構参っている証だった。
桃山君がそう言うのなら、少し急ごうか。
「まぁ倒していいっていうなら」
「そうだね。やってしまおうか……」
「あ! でも本気はまだダメです! 建てたばかりなので、強度増加は相談したいんですよね!」
「あ、そういう感じね?」
「……マジでござるか?」
「いろいろと方法は考えてるんですが、そっちの意見も欲しいです!」
つまるところ僕らはテストプレイヤーってことか。
これから弱い部分を洗い出して、戦っても建物が無事なようにほどほどに暴れて感想が欲しいと。
言わんとすることを理解して僕は頷く。
いつの間にか背中にくっついているインプ君は僕の防御力に期待しているあたり中々したたかだった。
トールハンマーが壊れていてちょうどよかったかもなと僕はメインウェポンのスレッジハンマーを握り締め、迫りくるダンスゾンビ目掛けてハンマーを振りかぶる。
僕はハンマーは空振りも華だと思っているが、今日は極力控える方向で頑張ることにした。




