第325話栄華の塔
タワーマンション。
それは現代においてはある種のステータスである。
聞いたところによるとその中の施設は非常に充実していて、セキュリティもとても意識が高いらしい。
だがそれがダンジョンの中にあるのは異様でしかなかった。
様々な設備や警備体制までまるっきり同じになっているとは思わないが、少なくとも見た目だけは立派にタワーマンションの高級感を再現した建物に見えた。
「な、なななんでタワーマンション?」
「おぉ……モンスターの本気すごいな。まさかタワマンまで建てられるなんてねぇ……」
「マンション……なんでござるよね?」
「そうっぽいけど……誰だっけ? レイナさんが作業遅れているなんて言った人?」
「突っ走ってるでござるね……マジヤバいでござる」
僕らは全員意見が合致して頷いた。
ともかく事実として、これはすでにタワマンであると思う。
しかし普通に考えれば、この階層にわざわざ建てられたタワーがただのマンションであるわけがないだろう。
僕らは、しばし外観を遠目で眺め、意を決して入り口から中に入った。
「あ、凄い。もう自動ドア動いてる……電気が来てる?」
「めちゃくちゃロビー広いなぁ。なんか……ちょっと肌寒い? 冷房効いてる?」
「高級感半端ないでござるね……シャンデリアとかあるでござるなぁ……今、勝手に明かりが灯ったでござるよね?」
僕らが中に入ると、そこにはお客を待ち構えていたコンシェルジュが一人立っていて、こちらに向かって優雅に頭を下げていた。
ただそんなコンシェルジュの顔に見覚えがあって、僕は声を上げた。
「……レイナさん?」
「ようこそいらっしゃいました皆さん。心から歓迎いたします……ナンチャッテ!」
おおっ! コンシェルジュ衣装のレイナさんは大変カッコイイ。
桃山君も「ほほう」と職人モードに入ってしまうほど、この日のために準備をしていたらしい衣装は、外観の高級感に見劣りしないものだった。
そしてレイナさんが袖を通せば、恐ろしく見栄えのするモデル顔負けのクオリティとなる。
「……クラスメイトに見せたら喜んで倒れそうだ」
「生徒会も余裕で釣れるね」
招待すれば爆釣間違いなしの商機をこの絵に感じるが、僕らはまだ入り口に到達しただけに過ぎない。
「では、ご案内いたしましょう。ようこそヘルズマンションへ。この世とあの世の境―――おっと失礼。当マンションのアクティビティ、心行くまでご堪能くださいね!」
レイナさんは不敵に笑い、マンションの中に僕らを誘う。




