第323話レイナさんを手伝おう
「うんうん。いいですね。青春です。恋愛モノは大変好ましいですね!」
「恋愛モノどころか、けっこうな大苦戦だったらしいよ?」
レイナさんは今回の事件の感想を妙な方向でまとめそうだったので、僕は注意喚起として少しばかり補足を入れておいた。
「オゥ……それはやばいですね。今のモモヤマがですか?」
するとレイナさんにしても桃山君が手こずったという事実は警戒するに値するエピソードだったようである。
「そうなんだよ。しかもテイムしてるオーガがほぼ全滅だって。そういう意味じゃ桃山君の戦力は大暴落だね」
「それ……けっこうショック受けてたんじゃないですか?」
「受けてたねぇ……」
可愛がっているからこそ鍛え上げていたわけだし、ションボリしていた桃山君の背中はとても小さかった。
しかしその結果がとんでもないことになったとしても、今後の糧になったと割り切るしかないだろう。
「でも桃山君のモンスター鍛錬法は面白くはあったと思うんだよ。試行錯誤は随分やりやすくなっているんだから、これにめげずに色々試してくれるといいなって思う」
浦島先輩も桃山君も、ずいぶん面白いことを試している。
ダンジョンで試行錯誤しているという意味では。僕以上なのは間違いない。
だがそう言うとレイナさんは思うところがあるのか眉間に皺を寄せて、唸り声を上げていた。
「やっぱりちょっとワタシは遅れてますね……」
「いや、遅れるとかそういうことはないから。気がすむまでやりたいことがあるなら突き詰めてもいいんじゃない?」
「そうですか?」
むしろ、今までいろんなペースが早すぎたのだ。
しかしここから先に制限などない。
どうぞ思うままにやって欲しい。それでこそ本当に面白くなるっていうもんだろう。
「まぁ急ぎたいっていうなら手を貸すけどね」
とはいえサポート手段の試行錯誤は継続中である。
そう振ってみると、レイナさんはテヘリと舌を出し、手伝いを当てにしていたみたいだった。
「そうですね! …………是非ともお願いしたいです! 安心してください! もうほぼ完成しているみたいなものですから!」
「おおう? そんなに進んでるんだ!」
ずいぶん苦労しているようだったからリアルが忙しすぎて、全然手が付けられていない、なんて状態も想像していただけに、完成間近というまでに進んでいるとは驚きである。
そういうことならと快く手伝いを引き受けたわけだが……レイナさんはなぜか怪しく低めの声で自信作の紹介をし始めた。
「……じつは仕上げはお願いしたいと思ってました。刮目してください、ワタシの幽霊マンションを」
「幽霊……マンションっ……!」
レイナさんの目は輝いていたが、僕としてはなんだか嫌な予感も覚えていた。




