第322話その時何が起こったか
何だかとんでもないことになっていたらしい今回の事件の真相は、攻略君が早々に暴いてくれた。
『なるほどね……こいつが悪さをしたようだ』
攻略君が教えてくれた真実は、このオーガが持っていた赤い刃の武器に秘密があるということだった。
「なるほど……。名前はオーガキラー。そのままの意味で、オーガに対して絶大な攻撃力を持ったアイテムだ。こいつをリポップしたオーガが手に入れたのが、発端っぽいね」
「なんでそんなことに? こんな武器知らないでござるよ?」
「この階層にあったんでしょ。テイムしたモンスターはアイテム回収を命じてれば集めるからねぇ。たぶんこのアイテムを持った状態で鍛錬しちゃったんでしょう。ストックを命じてたなら、使わずに負けたとか……」
「ああ! それで何かの拍子にリポップしたこいつが武器を手に入れて……」
「集まったオーガを倒しまくって、レベルを上げたと」
「うわぁ……。どんだけうまくやったんでござる?」
桃山君の使役しているオーガは、熟練度とレベルを下層で上げたとんでもなく強い個体ばかりだった。
だがこの階層を正当に踏破するためのギミックのようなアイテムだけに、オーガに限定すればかなりの不利を覆しうるスペックを秘めている。
特攻アイテムの効果倍率でそんな化け物を最終的に倒せてしまったのが、急激なレベルアップの正体らしい。
「いやいや。そんな謎、どうってことないですよー。マスター」
「……まぁそれはそうかも」
レイナさんの言う通り、レベルの急上昇はこの際棚上げしておこう。
そんなことよりも気になることがある。
僕はコホンと咳払いして、会長の傍らにいるオーガの進化系に物申さねばならなかった。
「あー……何で女体化してるんです?」
「……知らないよ。それは重要か?」
「重要でしょう?」
基本的にこの階に住んでいるオーガはみんな筋骨隆々で男性型だったはずだ。
だが生徒会長にテイムされた鬼は、どういうわけか筋骨隆々の肉体ではあるものの、人間に極めて近い女性型へと驚くべきメタモルフォーゼを成し遂げているんだから、そりゃあ気にならない方が嘘だった。
「モンスターは急激なレベルアップで、体を作り替えることはあり得ますが……何がどうなってこんなことに?」
「……そうでござるな」
「……ああうん。ほんとにな」
「効率のいいレベルアップは、彼……いや彼女に劇的な変化をもたらすこともある、それはそうなんだけど、オーガがこんな風に変化したってことは、そうなる理由があったはずなんだよ。パワーよりも重視する何かが……」
正統に変化したとしたらそれこそ、よりパワフルに、大きく頑丈にとなるはずだ。
そう、だが例えば……オーガだと戦闘で自分が負けた相手なんかは、もろに影響を受けるだろう。
「……女性の方に恐怖を感じた? 桃山君がいたのに?」
ぽつりと呟き、僕は八坂生徒会長に視線を向けた。
え? ときょとんとしている八坂生徒会長だったが、これだけ天と地ほどのレベル差があって、それはどんな戦闘なんだって話だった。
「流石生徒会長……僕らにマネできないことを平然とやってのけますね」
「何か……大いなる誤解を感じるのだが?」
そんなことないない。事実、主人と認めているのがあなただというのなら、このオーガはあなたのものである。
ただ、完全に女性化しているその姿が、青少年には少々刺激が強いのは確かなことだった。
「とりあえず、……生徒会長? これは何か着る物をプレゼントしますね」
「……ああ、頼む」
「ちなみに……鬼の伝統衣装と、和風鎧どっちがいいです?」
「え? その2択だと鎧かな?」
「そうですか……」
ビキニタイプの防具で、電撃が使えるようになる奴とかあるんだけど……残念です。
改めて一押しする勇気は僕にはなかった。
しかし何というか、凄い結果だ。
いや、女体化の話ではなくてね? 今の僕らに対抗しうる個体が偶然にせよ生まれたってことがです。
試行錯誤の事故だったみたいだけど、こんな強力な個体を作り出したというのは偶然が重なったのだとしても素晴らしい。
桃山氏には花丸と、よく思いついたで賞を贈っておくとしよう。
モンスター同士でレベリングをして、強い個体を作り出す。
それは下手すれば事故につながりかねないが、とても可能性のある話であると僕は思った。
「……少し調整すれば何とかなるか?」
「どうしたんでござる?」
「いや? 大したことじゃないんだけど?」
「……なんかおっかないでござるなぁ」
そう? そうかも?
攻略君と慎重に調整すればあるいはうまくいく可能性はある。
ひょっとすると新しい扉を開けるかもしれない話に、僕は一人ときめいていた。




