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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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321/471

第321話ほんの少し空気を変えるくらいの精一杯

 花臣はガンガン頭に響く痛みと、妙な温かさを感じながら、意識を取り戻した。


「!」


 そして目の前にとても心配そうな女性の顔が上下逆さまの妙な画角で見える事に気が付いて、ぎょっとする。


「……目が覚めたか! よかった!」


 その女性、八坂生徒会長はとても喜んでいるみたいだが、花臣は現状を正しく認識してそれどころではなくなった。


 どうやら現在、花臣は膝枕の状態らしい。


 しかもがっちりと体を手で押さえられていて、振り払うこともできないようだ。


 どうしようっ……!


 全身から汗が噴き出す。


 思ったよりもめちゃくちゃ照れると言うよりも、罪悪感が先に来る。


 自分は小心者だったのだなという気づきはともかく、生徒会長の方もそんなに甘酸っぱい雰囲気というわけでもないようである。


「すまない……無茶な作戦過ぎた。君には負担をかけすぎてしまって……」


 ただ本当にすまなさそうにションボリしている生徒会長の顔を見て、それどころではないと気が付いた花臣は一旦体の力を抜いた。


「……いや、こちらこそ申し訳なかったでござる。……護衛対象より先に気を失うとは、本当に申し訳ない」


 うまくいったから良かったが、テイムに失敗していたら、それこそ自分が頑張らなければならなかった場面のはずだ。


 それは護衛として間違いなく不甲斐ない部分で、反省しなければならない最重要なところだった。


「他の誰かなら、間違いなく自前で回復できたんでござるよ……。普段行き慣れているからと、気が緩んでいたんでござるね。本当に謝ることしか……」


 だけどそんな花臣の言葉を生徒会長は手でガスマスクの上から花臣の口を押さえつける。


 花臣は驚いて目を見開くと、生徒会長は語り出す。


「やめてくれ……不甲斐ないのは私の方だ」


「そんなことは……」


「いや! そうなんだよ!……恥をさらすようだが、正直に言えば私はそもそもまったく余裕がなかったんだ! ……この学校の生徒会という組織は、思った以上に実力が重視される。だが今の私では、突然現れたエルフ1体にも勝てないだろう」


「……それ拙者達のせいでござるよね?」


「い、いや。そんなことを言いたいわけではなくてだな。どんな手段であれ、生徒の実力が増すのは喜ばしいことなんだ。だから君達に依頼した今回の件は我々の不甲斐なさによるところが多くてだな……えーっと」


 しどろもどろに説明しようとする生徒会長だったが、結局うまく言葉が纏まらなかったようで、肩を落としていた。


「私は君達に頼る事しかできなかったんだ。本来であれば生徒を守る立場でなくてはならないのに……、それでももう少し何かできると思っていたのに、私は本当に立っていることしかできなかった……。こんなに恥ずかしいことはないよ。君は、私に付き合ってよくやってくれた。あいつを倒すだけなら、簡単だったんだろう? わかるよ……」


「……」


 手の力が緩み、更にシュンとしている生徒会長に花臣は大いに焦る。


 さっきまでとは印象が別人のようで、どうしようと言葉に詰まった。


 でも何とか励ましたくて、相手は先輩の、それも生徒会長だというのに花臣は自分を抑えているその手を優しく外して、ついでにマスクも外すと、精一杯笑いかけていた。


「じゃあお互いさまということで。でもこれだけは伝えておくでござる。……ありがとう。感謝します。貴女がいなかったらきっと勝てていなかった」


「そんなことは……」


「いや。そうでござる。ああでも……」


 そしてここから先は自分の意地の話で、つい付け足していた。


「―――次があったら、きっちり守り切るでござるよ」


「……つ! あ、ああ! その時は……期待してる」


 生徒会長はようやく雰囲気に明るさを取り戻してくれて、花臣はホッと胸をなでおろした。


 今はこれくらいが精一杯だ。


 だけど自分は精一杯頑張って、湿っぽい空気を変えられたかどうかという程度だと言うのにきっと彼らなら、一撃で何もかも打破してしまうのだろう。


「……そこの人達。見えてるでござるよ?」


「え?」


 ガスマスクを装着しながら、花臣は部屋の一点を見て呟いた。


 生徒会長も驚いていたが、声を実際に掛けられた当人達は相当に驚いている気配がした。


「「「!」」」


 視線の先の何もない空間はひらりと揺らぎ、複数の人間がそこに現れた。


 透明なマントに隠れ潜んでいた彼らは、バレていると気が付いてすっと透明マントを片付けると、気まずげに視線を逸らした。


「……ゴメン、そんなつもりじゃなかったんだ」


「とてもいい雰囲気でしたね!」


「……お邪魔だった。帰る?」


 何でござるかそれ?


 花臣はため息を吐く。


 だが全身真っ赤で、カタカタ震え出した八坂生徒会長は、ようやく自分の体勢に気が付いたのか、脊髄反射の様にビクリと立ち上がって、花臣を跳ね飛ばす。


「ち、違うんだ!……ああ! ゴメン! そんなつもりじゃないんだ!」


「……大丈夫でござるよ」


 逆さまのままシュコーと長めの息を吐き、花臣はイタズラ好きの友人達に視線を向ける。


「まったく。なにをやっているんでござるか」


 花臣は何を言うか悩んだが、結局、真面目な先輩をからかったりしちゃだめでござるよ?と、彼らをやんわり嗜めておくことにした。

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます∠(`・ω・´) ああ(;´∀`)会長を落とすパーフェクトコミュニケーションだったのに、なんで桃山君は気づいてないんだ(;´Д`)
>ついでにマスクも外すと、精一杯笑いかけていた。 イケメンにのみ許される所行! 無自覚鈍感系主人公始まったな
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