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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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第294話ハットリさんは遭遇する

「あ」


 小さく声を漏らして、服部 マヤは踵を返して一目散に逃げ出した。 


「お前は……待て!」


 ハイ待ちます!


 ……と言いたいところだが、そういうわけにもいかない。


 だが背後で聞こえる会話は気になって仕方がなかった。


「え? どうした?」


「あ! ショウ! え? 何?」


「おい! どうしたんだ!」


「……彼女に聞きたいことがある! 先に行くぞ!」


 マヤはあまりにも当然の成り行きに、憧れを噛みしめる。


 そして心の中で謝りつつ全力疾走で店に飛び込み、カウンターの椅子に座って呼吸を無理やり整えた。


 なんであの人がここに! いや! ……いつかは来るだろうと思っていたけれど、ここまで早いとはさすがハバキリぼっちゃま! 恐るべき才能お見それしました!


 しかしすみません坊ちゃま! 私はあなたの護衛ですが、今は雇われ店員。最低限の義理は果たさねばならないのです!


「ふぅ……」


 ひとまず店長にメッセージを飛ばしたが、だからどうなるのか自分でもよくわかってはいない。


 ぼっちゃまはこのままどこかに行ってくれればよかったのだが……無情にも話し声と人の気配は店に徐々に近づいてきていた。


 ならば覚悟を決めねばならない。


 昔の私ならば全力で気配を消していただろうけれども、今の私は一味違う。


 爆上がりする心拍数を自覚しながらうまくやれると自分に言い聞かせ、ガチャリと店の扉が開きやって来たパーティ一行、いや……よりにもよって先行してやってきたラブリーな男の子をマヤは迎え入れた。


「……ようこそ魔女の薬屋へ。こちらではダンジョン産の珍しい薬を取り扱っています」


「これは……こんなところにも店があるのか……いや、そんなことはどうでもいい。ボクは君に話があるんだ」


「……何でしょうか?」


「……ハットリのことについてボクは君に聞かなくちゃならない」


 マヤは極力感情の起伏を抑えた平坦な声で尋ねるとハバキリぼっちゃまは警戒した様子でこちらを真っすぐ見つめておっしゃった。


 貴方の為なら24時間365日どんな用事だってバッチこいです! ……と言いたいところだけれど、本業の方に差し障る。


 最近できた協力者への義理の方はいったん忘れることにしたけれども、それはしかたのないことだった。


「……私がそうだけど?」


 質問の意図が掴めずに尋ねるとぼっちゃまは容赦なく言った。


「骨格から違うじゃないか」


「それは……いえ、何が言いたいの? ろくに知らないクラスメイトの事なんて、ど、どうでもいいでしょう?」


 ハバキリぼっちゃんにとって、服部 マヤという女子生徒の存在はそんなもののはずであるし、そうでなくてはならない。


 しかし続くぼっちゃんの台詞は、実に衝撃的なものであった。


「知らない? いや、ボクは服部 マヤの事をよく知っている。彼女は私の家の人間だ、知らない訳がないだろう?」


 えー★ 何それ♡! ぼっちゃま私の事ちゃんと覚えてたってこと!? 子供の時にちょっと会っただけなのに!?


 こんなに嬉しいことはないけれど、マヤはしかし義務感に従って、一旦とぼけることにした。


「……もし別人だと言ったらどうするのかしら?」


 だけど好奇心で、ほんの少し(願望を込めて)疑問形である。


 するとハバキリぼっちゃまは言葉に確かな力を込めて言った。


「取り戻すさ。なんにせよ詳しい話を聞かせてもらうぞ」


「!」


 あらやだ。ちょっと興奮してきてしまいましたわ? もちろん性的に。


 しかし私とあなたは使用人と雇い主……いえ、神とミジンコレベルに規格が揃っていないはず。


 そしてなけなしの理性でマヤは言葉を続けた。


「そうね……私は彼女とは別人ね」


「当たり前だ。似せる気があるのか?」


「……でもあんな影の薄い女、いなくなっても誰も気にしないでしょう? あなたが騒ぎ立てなければきっと誰も気にしないわ」


「馬鹿なことを……そんなわけがあるか。少なくともボクは知ってる」


「……なるほど」


 超スキぃ! 勘違いだけど、そこまで愛おしい!


 しかしそろそろ話を切り上げないと、ぼっちゃまを追って来た有象無象が合流してくる頃合いだろう。


 そうするとさらにめんどくさいことになる。


 どう動くかはわからないが、あの目障りな連中がマヤの都合のいいように動いてくれるビジョンが全く見えない。


 だがそこでマヤはふと、とてもいいことを思いついてしまった。


 ハバキリ坊ちゃまのこの勘違い、むしろ好都合じゃない?と。


 するっと閃いた名案にマヤは自分のことを本気で天才だと確信した。


 だからこそ今は思わせぶりに振舞って、やれやれ仕方がないとため息交じりに呟いた。


「私は……ある方の意思で動いているだけ……」


「ある方?」


「それを邪魔するというのなら……私も容赦はしない」


 森を歩いて散歩でもしていたんだろうのろまなパーティメンバーたちがおっとり刀で入って来たのはその直後だった。


 だが会話は聞こえていたらしく彼らの表情が強張っていることを確認して、マヤは自らの魔力で威嚇する。


 それはこの階層で天使と共にレベリングをこなした成果だ。


 あの男は胡散臭いが、その劇薬の様な言葉に嘘はなかった。


 そして手に入れた力はおそらくマヤの中の神をすでに超えている。


 戦闘も視野に入った剣呑な気配にハバキリぼっちゃんと愉快じゃない仲間達は完全に戦闘態勢を取る辺り筋はいいのかもしれない。


 だが所詮はそこ止まり。


 そんな彼らの横を悠々と抜けて、マヤは外に出ると挑発的に手招きした。


「まぁいいでしょう。……聞きたいことがあるのですよね? ならば選択する事です。無理やりにでも聞き出すか、尻尾を巻いて帰るか……もっともどちらにしても泣いて帰ることになるのでしょうけど」


「話さないなら、力ずくでも答えてもらう」


「ちかっ……………ふぅ!」


 興奮してきたので、マヤはとりあえず店の前でショックの魔法をぶっ放し森を粉砕した。


 立て続けに放った魔法は、自分でも驚くほどの威力でこちらが危険な存在だと誰が見ても理解できるだろう。


 ほほう……今のレベルだとここまでやれるのか。


 下準備を整えたマヤは、店の番人である邪悪な魔女に完全になり切っていた。


「ハッハッハッ、この森の魔女に逆らうとは身の程知らずどもめ! ならば少々遊んでやるとしようか!」


 ついこの間までの私であったのなら、こんな手は取れなかったでしょう。


 しかし今であれば、あなたを守るにふさわしい力を持っている。


 当然圧倒する力も。


 天才的な閃きとは、とても単純なことだ。


 今の私がハバキリ坊ちゃんの知るマヤとは別人で、何らかのトラブルに巻き込まれていると思われているのなら、直接介入したって何とか言い逃れ出来るんじゃあないか?


 例えば目障りで仕方なかった貴方のパーティだと名乗る身の程知らずのメスネコ共をわからせるなんてことも可能だし、後はとても不本意……不本意ではあるけれども、ほんのちょっぴり……私を別人と断じた貴方にもお仕置きなんてすることも。


 ゾクゾクッと人生で最高の快感が背筋を刺激する。


 まぁ諸々そのうちバレるだろうけど、それは店長に姿を変えられて洗脳でもされたことにしよう。


 なに、認知されているというのなら、ぼっちゃまは護衛の話を信じてくれるはず。


 ぼっちゃま。きっと痛いと思いますが……これはあなたのためになるんだから仕方のないことですよね?

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― 新着の感想 ―
こいつここで討伐したほうがいいんじゃないですかねw
この邪悪な魔女はここでそのまま討伐した方が世のため人のためになるのかもしれない…
更新ありがとうございます∠(`・ω・´) なんて邪悪な計画(゜A゜;)ゴクリ 元凶としてでっち上げらる前に、通りすがりのファイヤーボールヘッドが助太刀して邪悪な魔女の企みを砕きついでに真実を暴露しよう…
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