第287話お城を紹介しよう
「な、なァ、ナ……ナンデスココ!?」
僕らは、部室から直通ドアを通って100階層にやって来た。
さすが東雲さん。期待通りのリアクションの大きさだ。
そして、きっと彼女なら僕以上にこの城の設備を使いこなすことができるという確信が、すでに僕の中で育っていた。
「ね、凄いでしょ? じゃあ案内するから」
僕は少なくとも外見上はさらっとリアクションを流して、まっすぐ武器工房へ向かおうとしたんだけれど……突然ポンと肩を掴まれた。
「ん?」
足を止めて相手を確認したら、僕の肩に手をかけていたのは黒髪の青年、刀の精の彼が困惑した表情を僕に向けていた。
「待ってください。この場所はあまりにも危険だ。彼女の安全は保障されているのですか?」
「た、たまキュン……♡」
「……たま?」
つい反応してしまうと、東雲さんから素のリアクションが返って来た。
「あ、彼の名前ですね。タマって言うんです。玉鋼から命名しました」
「な、なるほど? えっとたまひゅん?」
「たまキュン! 変な下ネタと絡めないでもらえませんか……」
ちょっとガチトーンで怒られた。
でも悪いの僕かな? と思わなくもないが、すぐさま頭は下げておいた。
「ゴメンナサイ……ええっとじゃあ、タマでいいのかな? ここでの安全は保障するよ。何なら護衛を付けてもいいけどどうする?」
脳は混乱していたが、タマの懸念は理解できる。
エンジェルズの誰かでも護衛代わりに召喚しようかと考えていると、タマはきっぱりと断って来た。
「……いえ。それは無用です。ランは私が守りますから」
「たまキュン! もちろん信頼してる!」
……楽しんでいるなぁ。そしてこの精霊男前である。
そんな君達を僕は応援しよう。
しかし案内した工房へやってくると、東雲さんのテンションはいよいよ壊れて、お楽しみムーブが崩壊してしまった。
「ナンナンデスココ!?」
「ラン……落ち着いてください」
「アホか! これが落ち着いていられるか!」
……うん。なんかゴメンネ?
しかし絶対興味を持ってくれると確信していたから、狙い通りになったのはちょっと嬉しい。
お察しの通り、ダンジョンアプローチの技術体系の極だ。
アイテムについて理解を深めるなら、おそらく現状ここ以上の場所は存在しないだろう。
「ここは武器工房だよ? 錬金工房も併設しているから自由に使ってもらっていいから」
「メチャメチャ気になります先生! ほ、本当に使っていいんですか!? というか使い方がわかんないものが多すぎるんですけど!」
一方で、初見の器具も多すぎると看破したらしい東雲さんだが、今の僕ならその辺りのサポートも完ぺきである。
今この城は僕が主となることで、特殊な状況に変化していた。
それは確実に攻略君という権能の影響を受けている。
今まで以上に知識的な部分で大活躍しそうな神様の図書館は、様々な使い道が存在した。
「おおっと……そうだった。じゃあこれを―――」
僕は手始めに適当な本棚に歩み寄って本を数冊手に取ると、それを東雲さんに手渡した。
「はいこれ。武器工房使用マニュアル。こっちは錬金工房使用マニュアルね。必要になるスキルもあると思うから、その時は声をかけて? 自分一人で行くとすごく危ないから」
「先生! さすがに至れり尽くせり過ぎませんか!? 底が知れませんね先生!」
「まぁちょっと仕掛けがあるんだよ」
未知の英知が詰め合わせされた書を手にした東雲さんは驚きすぎて、百面相が止まらない。
そんな東雲さんの反応を見ていると、どうやら僕は先生呼びの期待には応えられたようだ。
それに、うん。さっそく図書館化したことに意味が出て来たね。
誰でも使えるマニュアルは、実に素晴らしい。困った時にそこにある本なんて有効活用し放題だ。
そして……タマが嫉妬の籠った視線を送って来るんだけど、精霊の方も中々仕上がっているらしい。
「……よかったですねラン。私も精一杯サポートしますから」
「うん! 私、頑張るよ! たまキュン!」
僕としてはある意味、東雲さんの腕の確かさを証明しているから、非常に複雑な気分になった。




