第277話先輩は発見する
うーむ。
まさかこんなことになるとは……。
僕は部室のパソコンのディスプレイを眺めながら唸っていた。
「どうしたのワタヌキ君? パソコン見て困り顔で?」
声を掛けられ振り返ると、浦島先輩がこちらを覗き込んでいる。
ちょうどいいや。
先輩なら何かいい助言をくれそうだと僕は相談してみることにした。
「それがですね? コスプレ趣味の友人に、天使の写真を送ったら、発狂したコメントが送られてきた」
「あー。それは無理もない。まさしく天使のようにかわいいもんねぇ。刺さる人には刺さるよ」
「……わからないでもない。うーむでは返信には、よく撮れた写真をもういくつか送ってあげましょう」
そう言うと、浦島先輩はあきれ顔で僕の記念写真の数々を見て呟いた。
「ずいぶん撮ってるね……君も相当天使に甘々じゃないの」
「そうですか? まぁ写真を撮っていて楽しい子達ではあります」
ただでさえ、部活内でコスプレが流行っているのだ。
動画であれ、写真であれ撮影技術を上げておいて損はない。
カメラ君には負けないぞなんて考えながら、特訓した成果である。
「まぁほどほどにね。でもそう! 写真で思い出した! ねぇねぇねぇねぇ! ワタヌキ後輩! 見て見て! 大発見!」
すると浦島先輩が興奮して見せたスマートフォン。
ついに完成した魔法技術の結晶、空間歪曲ステッカーのおかげで完全ダンジョン対応になったスマートフォンには荒い画像が映し出されている。
僕は何だろうと、少し乱れた画像を凝視すると映し出された何かの正体を察した。
「人?……いや、この耳は!」
「そうだよ……いるだろうとは思ってはいたけどついに発見してしまったのだよ! エルフを!」
「エルフですか……」
僕はむむっと表情を強張らせると、浦島先輩は不思議そうな表情を浮かべていた。
「何だい。不満そうだね?」
エルフの話をしてその表情はおかしい? それはそう思う。
しかし様々なモンスターと出会い、交流してきた僕には一つ気になることがあったのだ。
「いや……不満っていうか、人型のモンスターって扱いに困りません?」
「……今更過ぎない? だとしたら、もう困りすぎて首が回らないよ?」
「うーん、確かに」
まさしく愚問だったか。
開き直ったと思ったが、僕はまだまだらしい。
ならば僕とて、エルフと聞いてときめく心を素直に出していくことにした。
「エルフですか……ダンジョンというかファンタジーの華ですよね!」
レイナさんの変身だけでもテンションが上がったというのに、ついに僕らの生活圏内に取り入れてきますか。
古から続くロマンの形を、僕とて嫌いなわけがなかった。
その幻想の存在は、しかし広大なダンジョンに確かに存在した。
浦島先輩はうっとりとした表情でその姿を想像してホゥっと熱っぽいため息を吐いていた。
「だよねぇ。探してみる価値はある……いや、探さねばならないのだよ! 管理者を目指す者としては!」
「そうですねぇ」
「バッチリ写真も撮りたいし……エルフは森の民。森林の多い階層の管理には彼らの協力が必要不可欠、そうは思わんかね? ワタヌキ後輩」
「……そう、ですね」
浦島先輩は何やら管理者の自覚に目覚めつつあるようだった。
ただムフフと微笑む浦島先輩のモチベーションの元はそう真面目な物ではなさそうだったが。
しかしエルフはモンスターに含まれるのだろうか?
その辺り話し始めたら朝まで語れそうだけど、そこにいるならまずは会う。
これ大事なことである。




