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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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第271話選択肢は多い方がいい気がする

「パーティを組んだ方がいい、というようなことを先輩方から言われたんだけど」


 珍しくクラスの教室でお弁当を食べながら、僕が話しているのは松林君だった。


 ただ切り出した話題に対して、焼きそばパンを頬張りながら松林君は複雑な表情を浮かべていた。


「あー……まーそうだろうなぁ。だけど今からは無理でしょ? パーティ組んでる奴は連携固まってるし、組んでない奴はそもそもやる気がない。オレだって学校イベントに参加できないからってなんなの? って思わないでもないし」


「そうだよねぇ……まぁ参加したからどう? ってことでもないもんねぇ」


 この学校のイベントごとと言うと、やはりそれはダンジョンがらみの運動会みたいなものが多いらしい。


 言ってしまえば参加したところで、ガチ勢には勝てないだろう。


 ペナルティがあるわけでもないし、頑張ったところでメリットがあるわけでもない。


 順当にレベルが高い探索者を見極めるためのイベントに価値を見い出せない生徒も多かった。


 最初の頃は僕もそうだった。


 だが今は……別の意味でちょっと考えないと大変なことになる予感はあった。


「やたら盛り上がりはするんだけどなぁ」


「まぁそうだろうねぇ」


 普通に黙って見ていればいいだけの話なのだし、大したことではない。


 ただパーティを組まずにやる気がないと判断されることがプラスに働くってこともないので、そこは悩みどころと言えば悩みどころである。


「まぁそもそもパーティの当てがねぇ……」


「そこが一番の問題だな! どこかにパーティを組んでなくて、ほどほどに気の抜けた気の合うクラスメイトでもいれば……」


「「ん?」」


 いるな。


 目の前に。


 気が合うって程でもないが、なんだかんだほどほどに口を利くクラスメイトである。


「ちなみに……ワタヌキ君はその後パーティは組んでいるのかね?」


「知っての通り。部活でだけだね。そういう松林君はどうだろう?」


「知っての通り弱くて門前払いさ……でも今なら行けんじゃね?」


「……」


 いけるどころか。今ならガチ勢を相手にしたところで赤子の手をひねる様に圧勝してしまえるに違いない。


「でもパーティっていっても二人か……二人じゃなぁ」


「もう一人くらいいれば何とか体裁は整うかも?」


「固いなぁ。もうちょい学校の連中は気軽に物事を決めてもいいと思うんだけどなぁ」


「そうもいかないんでしょう? 命掛かってるし、適当にやって、やられちゃったらしんどいし」


「まぁなぁ……」


 まぁざっくりいうと際どいが3人いればパーティだ。4人が推奨って程度である。


 本格的に参戦するかはともかく、状況によって選択肢があるのはいいことだと思う。


 そしてもう一人、僕にはここしばらくの成果として、パーティを組んでいなさそうな人間に心当たりがあった。


 自然と視線が動く。


 そこにはすでに人だかりができていて、机に美女が腰掛け、悩まし気に男たちの勧誘を受けていた。


「是非うちのパーティに入ってくれないか!」


「いや! うちの方がいい条件を出せる!」


「好きです! 付き合ってください!」


「……やれやれ。困りましたね」


 途中でパーティが組めないとか何だったんだろうね? あまりにも馬鹿馬鹿しくなってくる。


 ふぅと自信に満ち溢れた悩まし気なため息が妙に色っぽいハットリさんは困り顔だがとても気分がよさそうだ。


 しかしなぜだろう? 僕は若干イラッとしてしまうわけだが、僕以上に男ってやつは……という極寒の視線がクラス内に吹き荒れているのをひしひしと感じた。


 そしてその渦中にいる美女……ハットリさんとバチッと目が合う。


 ハットリさんは周囲に群がる男子勧誘員を華麗にスルーするとサラリと言った。


「ごめんなさい? 私、彼らとパーティを組む約束をしているんです」


 ギョッとする男子生徒の中には僕と松林君も含まれていた。


 あまりに寝耳に水で僕は固まってしまう。


 松林君もそうだろうと思っていたが、顔を見たらものすごくうれしそうだった。


「……いきなりどういう風の吹き回しで?」


 しかし僕が小声で尋ねるとハットリさんもまた小声で僕に囁いた。


「先ほどの間抜けなやり取りが聞こえたもので……めんどくさいので話を合わせてください。全く……美人は辛いですね」


「……魔法なのに?」


「何か言いましたか? 魔法での変身は単なるバフだと判断しています。戦争ですか?」


「……すみません。その通りだと思います」


「よろしい」


 アサシン的な殺気にヒヤリとしたが、事なきを得たようだ。


 そして声が跳ねまくっている松林君はすでにハットリさんの術中だった。


「ハットリさんオレ達のパーティに入ってくれんの!」


「……」


 しかしこの男、今俺達のパーティと言ったか?


 さっきまでどうでもよさそうだったのに秒でパーティを組んだってことか。


 掌スピンの速度が尋常ではないけど、話はすんなり決まってしまいそうだった。


「ええ。よろしくお願いしますね。事情は少し知っています。だからあなたも売店の店員なんてやっているんでしょう?」


「いやぁ。まぁね! まぁマブダチの頼みじゃ仕方ねぇかなって!」


「なるほど……マブダチですか」


 いやー……まぁ否定はしないけれどもさぁ?


 あまりにも台詞が軽すぎて、ため息の一つも出てしまいそうだ。


 渋面の僕に首をかしげる服部さんは、割とどうでもよさそうに最後に囁いた。


「こちらもあまり慣れ合う気はありませんけど、取れる選択肢が多いのは確かに利点だと、そこは同感なので」


「……なるほど」


 僕は納得する。


 ハットリさんはまぁこういう人である。


 しかしパーティか……。


 いざクラスメイトと組むとなるとちょっと照れている自分に驚いてしまった。


 最初を逃したせいか今更気恥ずかしい。そんな思いが心の中にあったのかもしれない。


 しかし組むとなったら、少しくらい何かするべきだろうか?


 そんなことが頭をよぎった僕は、ちょっとした提案をした。


「じゃあ、放課後にでも一回くらいダンジョンアタックを……」


「あ。そういうのはいいです。店で薬の調合がしたいので」


「あ。オレ店あるから。ハットリさん来ないならいいや」


「……そうね」


 うーん。こういうのもマッチポンプって言うのかな? 用事が全部僕の提案だ。


 パーティが秒で空中分解した気分だ。


 おそらくこの先も、このパーティがまともに機能することは残念ながらなさそうである。


「ワタヌキ君。パーティ組むのか?」


「ん?」


 だが突然声を掛けられて僕は振り向く。


 するとそこには爽やかさがまぶしくて目が潰れそうなイケメンが立っていた。


 何だかお久しぶりの草薙君は随分ご機嫌でニコニコ笑いながら僕を見ていた。


 そして彼は少しだけ興奮した風にいきなり僕の手を取った。


「それなら―――俺達のパーティとクランを組まないか!」


「あ、申し訳ない。さっき事実上空中分解しちゃって……」


「……エェ?」


 しまった、思わず即答してしまった。しかし事実である。


 利益で集まったパーティは―――とても儚い。


 いつの日かイベントでもあれば復活すると信じて、僕は強く生きていくつもりだった。

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― 新着の感想 ―
 なんてこった、秒で追放(仮)されてしまった。超Sランク(ただし実質一人)パーティーを組んだけど秒で追放された件について。
せめてパーティ名くらい付けさせてあげろください…w
更新ありがとうございます∠(`・ω・´) (ノ∀`)アチャーハットリさんしっかりパーティーメンバーですって感じにしてれば草薙くんと普通にお話しても不自然じゃないポジにつけたのに、 護衛として影にお守り…
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