第272話敵意の視線
「いやいやビックリしたね……」
また誘われてしまうとは、そしてまた断ってしまうとは……悪いことをしてしまった。
だがあの即席パーティで……クランに参加はちょっとできないかなぁとは思う。
あまりにも場当たり的なパーティすぎて、申し訳なさすぎる。
いざという時誰も集まらない光景が簡単に想像できてしまえるのが、お断りする決め手だった。
まぁ僕個人もクラスより部活優先だから仕方がない、切り替えよう。
僕は今日も自然と足がダンジョンに向かい、受付のお姉さんと世間話に興じていた。
「今日も頑張るね。調子はどう?」
「ビックリするくらい好調ですよ?」
「そう? でも無理しないようにね。最近ダンジョンの様子がおかしいって話も良く聞くから。生徒会の子達は大丈夫だっていうけど……心配でねぇ」
「そ、そうですね……ダンジョンの中は何が起こるかわかりませんからね」
「そうなの。順調な時ほど気を付けないとダメだよ?」
「は、はい。ありがとうございます」
受付さんから、毎度のごとく心配されるが―――きっとその異変の元凶はワタクシです、本当に心配おかけしております。
心の中で謝りつつ、僕はダンジョンに入場する。
本日、1階層がそれなりに賑わっているのは、休み明けの影響だろう。
低い階層から勘を慎重に取り戻していくのはセオリーだが、またしばらくすれば人がいなくなるので、珍しい光景と言えば珍しい光景だった。
僕からしてみたらこんな便利な階層もないから、もったいないなんて思うんだけれども、僕の常識は非常識である。
さて今日は在庫を確認して、最近大量消費したポーションでも狩りに行くかーなんて考えていると、不意に声をかけられた。
うん。たまによくある。
僕は振り返ると、そこには馴染みのある面子が勢ぞろいしていた。
「ワタヌキ君! 待ってくれ!」
「草薙……君?」
大急ぎでやって来た、美形のクラスメイトは同じクラスの草薙君その人だった。
「ああ。来るだろうと思って待ってたんだ。ちょっといいかな?」
「そりゃあ構わないけど……どうしたの?」
さっきクラン入りを断っちゃったから正直気まずいのだけれども、そんな僕に掛けられる言葉としては、続く提案は意外だった。
「いや、せっかくだからこれから一緒にダンジョンに潜らないか?」
「……随分急だね?」
「そうかな? 急じゃないさ。最初の頃も誘っただろう?」
そう言われるとそんなこともあったかもしれない。
もはや懐かしさすら感じてしまうけど、まぁ一学期の最初の方は昔か。
どうしようかと思ったが……正直今となっては断る理由もあまりなかった。
それにパーティ内には、月読さんと。
「こんにちは」
ハバキリ君。
「……久しぶりだね」
この二人には少し面識もあるし、ダンジョンだって一緒に潜ったこともある。
OKしようと思ったのだが、背筋がゾクリとする気配を辿るとすさまじい敵意の視線が僕に向けられていた。
「……なにそれ? 私、聞いてないんですけど?」
強気そうな目はよりつり上がり、活発そうな美少女というには彼女、天音真紀さんの表情は嫌悪感丸出しだった。




