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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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第268話生徒会長がお疲れです

 かねてより一番力を入れていた売店が動き出すと、僕としてもほっとしたところはあった。


 ただし、それは僕の事情だ。


 僕らの事情に関わらず、ダンジョン内で動いている人はもうすでに沢山いた。







「ねぇねぇワタヌキ君? ちょっといい?」


「はい、なんですせんぱ―――」


 振り返ると、そこにはドドンといつの間にか肉付きがずいぶんよくなった浦島先輩がいた。


「いや、一気に体格変わりすぎじゃないですか!? さすがに体に悪いですよ!?」


 完全に不意を突かれてしまった。


 思わずツッコミを入れると、いやぁビックリだよと浦島先輩は笑っていた。


「攻略終わってからすっごくお腹空いてさぁ。おいしいって言ってたからドラゴンの階層でドラゴン一匹狩って食べてみたら……爆発したよね。あいつらカロリー爆弾だよ」


「僕らもドラゴンステーキは食べましたけど、そこまでではなかったですよ? ……ん? 一匹丸ごと?」


「そうなんだ。やっぱ太りやすい体質なのかなぁ……気を付けないと」


 やれやれ困ったもんだと気楽に言う浦島先輩だが、さすがにちょっと心配になってしまいましたよ?


「まぁまぁ、それよりもちょっと来てほしいんだけど?」


 ただ、それとは別にちょっと困り顔で微笑む浦島先輩に僕は嫌な予感を覚えて身構えた。


「……何か?」


「怖くないよ? 大丈夫だから。なんか生徒会長が会いたいって言うんだけど?」


「生徒会長がですか?」


「そう。そろそろ意見が聞きたいんじゃない? 彼女、休みの間頑張ってたしね」


 そう言われれば確かに。


 最初の方こそ顔を出したが、後は浦島先輩とモンスター達に任せてばかりだったか。


「ああ、そうですね。結構放っておいちゃってましたもんね」


「悪いけど付き合ってもらっていい?」


 浦島先輩は一応確認して、僕は頷く。


 すると浦島先輩は拝むように手を合わせていた。


「助かる! じゃあ行こうか!」


「え? 今すぐ?」


「そうだね。もう部室にいるはずだから」


 段取りがいいなぁ。


 なんだろう? と疑問に思いつつ、割と気軽に部室にやって来た僕だったのだが……。


 部室の扉を開けると、そこに渦巻く魔力にさっそく帰りたくなった。






「……久しぶりだなワタヌキ君」


 僕らに気が付いた八坂生徒会長は、妙に目がギラギラしていたが機嫌が悪いという風でもないことに気が付いた。


 どちらかと言えばたぶん寝不足だ。


 そして疲れが溜まっているのが、原因みたいである。


 僕は頭を下げて対面の席に着くと、浦島先輩は生徒会長の隣に腰かけていた。


「ど、どうも……ええっと生徒会長? 何かお疲れですね」


「……おかげさまでな。どうかな? そちらの調子は?」


「いい感じだと思います」


 どうかと聞かれたら、絶好調と答えねばならないだろう。


 ダンジョンを攻略し、かねてより改良を加え続けていたお店も今のところは問題ない。


 せっかくなので僕は八坂生徒会長に現在開店中のお店、50階までのおすすめアイテムチラシを手渡しておいた。


「……」


「ちなみにそちらは……?」


 そして聞き返してみると、八坂生徒会長は困った顔でううーんと悩ましげに唸る。


「……そこそこといったところだ。モンスターの手助けは助かるが人間の方が怯えてしまってね」


「そんなにですか?」


 そのうち慣れるだろうと楽観していたがすぐには無理か。


 やはり自分より圧倒的にレベルの高いモンスターとの共同作業は、探索者の中では結構なストレスになっているみたいだった。


「情けないとは言わないでくれ。まぁダンジョンの中だからな。深くなればなるほど危険なことに変わりないという前提もある」


「それはそうですね……わかります」


「だが成果は出ていると思っている。セーフルームの中が変動しないのは特にすごい発見だ。スキルを使った家具のみというのは中々ハードルが高いが……研究のしがいがありそうだよ」


 ダンジョンで溶けない家具の作り方の習得は順調のようだ。


 サポートジョブという概念の発見と研究はこれからあっという間に広がっていくと思う。


 キッチンの出来も新築みたいだったし、僕自身もすでに体験させてもらった。


「ああ、もう見ましたよ! あれ凄かったですね! ピカピカで使い勝手もよかったです。まさかダンジョンで天ぷらが食べられるとは……」


「ん? 天ぷら? ……ああうん。喜んでもらえたのならよかった。なにか不具合はなかったかな?」


「ええ、完璧でした」


「そうか……。いや慣れない感覚なのでね。今日は余裕がある時でいいから確認してもらいたいというお願いだったんだよ」


「ああ! そういう事でしたか。バッチリ使えたので大丈夫だと思いますよ。せっかくだからモンスターのでかいエビをエビ天にしてやりましたよ。やっぱり火力の調整ができると料理の幅が広がっていいですね」


 火加減は料理の命。そして出来るのと出来ないのとでは雲泥の差があるだろう。


 ただ生徒会長はキッチンを作っておいて、まだモンスターを食べる事には消極的な様子だった。


「でかいエビ……たぶんそのエビ水流で人間の胴体に風穴を開けたりできるやつだと思うんだが?」


「捌いたら皆、食材ですよ。好き嫌いはいけません。ちなみに売店でモンスターの毒抜き処理済み素材を販売中ですので是非」


 ついでにセールストークも忘れない。


 やっぱり宣伝って大事だなとここ最近わかってきたところなんだ。


 販売している食材一覧なんかをすかさず差し出してみると生徒会長は僕の顔をマジマジと見て言った。


「ふーむ……なぁ、やっぱり君、生徒会に入らないか?」


「ちょっとちょっとうちの部員を勧誘しないでよ?」


「僕も、あまり忙しいのはちょっと……」


 だが浦島先輩と僕の両方から止められて、八坂生徒会長は苦笑いしてため息をついた。


「そうか……まぁ気が変わったらいつでも声をかけてくれ、うちには君のファンもいるみたいだからね」


「……ファンですか?」


「ああ。正確にはファイアーボールヘッドのだが」


「あー。でもそれは気にしない方向で……」


「そうか? 私もファンといえばファンだからな。しかし2学期にもなると君達もそれなりに忙しくなるか……まぁ無理はしないように頑張りなさい」


「そうなんですか?」


 それは学校生活のアドバイスだと気が付いて、驚きつつも質問すると八坂生徒会長は頷く。


「ああ。だいぶダンジョンにも慣れた頃……と君に言うのもおかしい気もするな。このくらいからイベントも多くなるし、生徒間でもクランを組んだりと忙しくなるはずだ」


「じゃあ暇かもです。クラスじゃパーティとか組んでいないので」


 そういうのならダメっぽいと即答すると、生徒会長は大層微妙な表情を見せていた。


「不思議でしょうがないんだが……なんでそんな状況になるんだ? 私なら無理やりでも引っ張り込むぞ?」


「不思議ですよね。……でもまぁおかげで授業時間に好き勝手出来ているので助かっていると言えば助かってますが」


「そうなのか? だがそうだな……普通とは違う活動に忙しいのは耳にしている。最近精霊や攻略法を駆使して、早い段階で深い階層に到達するパーティが増えているんだ。君のクラスを中心にしているのは明らかだ」


「だと嬉しいんですけどね」


 これでもクラスには貢献していると自負している。


 モンスターやアイテムの利用法なんかの、危険な試みは間接的にではあるが、確実に生徒の中に浸透してきているのは、僕というよりも、松林君や月読さんの活躍の賜物であると思えた。


「……隠しているわけではないんだな」


 ジト目で言われるが、まぁ隠すと言ってもあまりにも雑なもんだった。


「いつバレてもいいくらいの隠し方しかしてないんですけどね。でも最近は話す人も増えて来たんですよ?」


 だが冗談混じりにそういうと、八坂生徒会長はちょっとだけ意地悪な顔になって、もう一つアドバイスをくれた。


「そうか。なら、4人に満たなくてもいいからその友人に声をかけておくことをお勧めしておこう」


「なんでです?」


「この学校のイベントは基本的にパーティ単位だから。なにもすることがない無為な時間を過ごしたくなければ、その時だけでも組む当てを付けておくといいよ」


「ああ。毎年いるよね手持無沙汰な人」


「仕方がない。イベントの時は特に安全に配慮しないといけないからな……」


 先輩方がとっても不吉な、未来の話で盛り上がっておられる。


 そしてそれは自分自身に高確率でやってくる近い未来の話だった。


「ど、どこまでもボッチに厳しい学校だなぁ」


 何と言うか世知辛い……。


 だが、ここ最近の努力が実るかもしれないというささやかな希望はあるにはあるか。


 僕としては心中複雑ではあったが、なる様にしかならない話だった。

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― 新着の感想 ―
ドラゴン一匹丸ごと食べるのはヤバ過ぎ
無理して合わない人に合わせるのはコミュニケーションコストが嵩むんだよなぁ…学生の頃は常にある程度波長の合う友達や仲間を最低限確保してたから問題なかったけど、社会人になるとそれも中々。でも高校の友人は今…
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